株式会社IHI の会社詳細
株式会社IHI
IHI
2026年3月期 第3四半期

IHI・2026年3月期Q3、純利益10.7%増の850億円——航空エンジン需要拡大と事業売却益が寄与、通期受注予想を上方修正

IHI
7013
航空機エンジン
防衛事業
増益
株式分割
事業ポートフォリオ改革
上方修正
受注拡大
構造改革
第3四半期累計期初から9ヶ月間の累計値(前年同期比)

売上高

1.1兆円

-1.8%

通期予想

1.6兆円

進捗率69%

営業利益

1,025億円

-0.9%

通期予想

1,600億円

進捗率64%

純利益

850億円

+10.7%

通期予想

1,250億円

進捗率68%

営業利益率

9.1%

株式会社IHIが2026年2月10日に発表した2026年3月期第3四半期(2025年4月〜12月)決算は、親会社の所有者に帰属する四半期利益が前年同期比 10.7%増850億1,400万円 となりました。主力の航空機エンジン事業におけるスペアパーツ需要の拡大に加え、事業ポートフォリオ改革 に伴う運搬機械事業などの売却益が利益を押し上げました。一方で、一部航空機エンジンの追加検査費用の発生や、資源・エネルギー事業での海外案件の採算悪化が重なり、営業利益は 1,025億3,600万円(前年同期比 0.9%減)と微減での着地となりました。

業績のポイント

当第3四半期累計期間の売上収益は、前年同期比 1.8%減1兆1,293億3,900万円 となりました。防衛事業の拡大や車両過給機(ターボチャージャー)の需要増があったものの、中核事業における相次ぐ事業譲渡や、前期に計上された大型工事の進捗による反動が減収要因となりました。しかし、受注面では防衛関連や航空機エンジンの力強い需要を背景に、受注高は前年同期比 12.4%増1兆3,648億円 と大きく伸長しています。

損益面では、営業利益が 1,025億3,600万円(前年比 0.9%減)となりました。民間向け航空エンジン「PW1100G-JM」の追加検査に伴う整備費用の増加や、研究開発費の積み増しが重荷となりましたが、産業システム事業における 事業譲渡益の計上 や車両過給機の構造改革効果がこれを下支えしました。税引前四半期利益については、持分法投資利益の増加により前年同期比 3.8%増1,189億7,400万円 を確保しており、最終的な四半期利益も増益を維持しています。

指標2025年3月期Q3実績2026年3月期Q3実績前年同期比
売上収益1兆1,499億円1兆1,293億円△1.8%
営業利益1,034億円1,025億円△0.9%
税引前利益1,146億円1,189億円+3.8%
四半期利益767億円850億円+10.7%

業績推移(通期)

売上高営業利益|当期累計通期予想残

セグメント別動向

各セグメントの動きを見ると、主力である「航空・宇宙・防衛」が売上の牽引役となる一方で、利益面では「産業システム・汎用機械」の躍進が目立ちました。航空・宇宙・防衛セグメントは、売上収益が 4,238億円(前年同期比 12.3%増)と伸長しました。航空機需要の回復によるスペアパーツの販売拡大が寄与したものの、PW1100G-JMエンジンの追加検査プログラムに伴う費用発生や、次世代技術へのR&D投資拡大により、営業利益は 706億円(前年同期比 25.3%減)に留まりました。

一方、産業システム・汎用機械セグメントは、営業利益が前年同期の29億円から 287億円(前年同期比 872.1%増)へと劇的に改善しました。これは 運搬機械事業の株式譲渡に伴う利益計上 に加え、車両過給機事業において実施してきた構造改革や価格転嫁の効果が発現したためです。資源・エネルギー・環境セグメントについては、一部海外事業の採算悪化により、営業利益は 26億円(前年同期比 76.3%減)と苦戦を強いられました。

セグメント売上収益(億円)営業利益(億円)利益前年比
資源・エネルギー2,57026△76.3%
社会基盤970△7
産業システム3,299287+872.1%
航空・宇宙・防衛4,238706△25.3%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
資源・エネルギー・環境2,570億円23%26億円1.0%
社会基盤970億円9%-719百万円-0.7%
産業システム・汎用機械3,299億円29%287億円8.7%
航空・宇宙・防衛4,238億円38%707億円16.7%

財務状況と資本政策

財務状態については、総資産が前連結会計年度末比で 2,139億円増2兆4,543億円 となりました。受注拡大に伴う棚卸資産の積み増し(1,098億円増)や営業債権の増加が主な要因です。一方、負債も有利子負債を中心に 1,313億円増加 していますが、親会社所有者帰属持分比率は前期末の21.5%から 23.0% へと上昇しており、財務の健全性は着実に向上しています。

資本政策においては、2025年10月1日付で実施した 1株につき7株の株式分割 が注目されます。これに伴い、期末配当予想は1株当たり 10円 となっていますが、分割を考慮しないベースでは年間 140円(前期実績120円)の実質増配となる計算です。成長投資と株主還元のバランスを維持しつつ、資産効率を意識した経営へとシフトしている姿勢が鮮明になっています。

キャッシュフロー面では、営業活動によるキャッシュ・フローが 732億円の支出超過 となりました。これは将来の売上につながる棚卸資産の増加や法人税の支払いが先行したためであり、投資活動による支出(477億円)と合わせ、財務活動による資金調達(814億円)で対応しています。

通期見通し

2026年3月期の通期業績予想について、売上収益や各利益指標の数値は前回公表値を据え置きました。ただし、受注高については足元の堅調な需要を反映し、前回予想から 900億円上方修正 して 1兆9,400億円 としました。特に防衛関連や民間航空機エンジンのアフターマーケットにおける引き合いが強く、将来の収益基盤となるバックログの積み上がりが期待されます。

項目前回予想今回修正前期実績
受注高1.85兆円1.94兆円1.88兆円
売上収益1.64兆円1.64兆円1.62兆円
営業利益1,600億円1,600億円1,434億円
親会社所有者利益1,250億円1,250億円1,127億円

※通期の想定為替レートは1米ドル=140円としています。

リスクと課題

当面の最優先課題は、航空機エンジン「PW1100G-JM」の 追加検査プログラムへの対応 です。整備能力の増強を進め、航空各社の地上駐機数を低減させることで信頼回復を急いでいます。為替変動の影響も注視が必要で、第3四半期累計では検査プログラム関連で 36億円 のマイナス影響を計上しました。

また、以下の外部環境リスクについても言及されています:

  • 米国の通商政策や政権交代による国際情勢の不透明感
  • 資源・エネルギー分野における海外案件の採算管理体制の強化
  • 原材料価格やエネルギーコストのボラティリティ抑制
  • グローバルなサプライチェーンの混乱による部品調達遅延のリスク
AIアナリストの視点

IHIの今決算で最も注目すべきは、かつての「総合重工」から、高収益な 航空・防衛ライフサイクルビジネス を核とした企業体へと、なりふり構わず脱皮を図っている点です。

当期に断行された「運搬機械」や「建材工業」などの相次ぐ事業売却は、単なる資金捻出ではなく、低収益・低成長事業を切り離す ポートフォリオの徹底的な選別 を示唆しています。特に産業システム分野での大幅な増益は、不採算事業の整理と価格転嫁が功を奏した形であり、経営の規律が高まっている印象を受けます。

懸念点は引き続き、PW1100G-JMエンジンの追加検査費用です。為替が円高に振れた際のコスト増リスクや、整備リソースの確保によるコスト増は通期でも重石となります。しかし、それ以上に防衛予算の拡大に伴う受注増が強力で、受注高の上方修正は、将来的な成長の確度が高まっていることを裏付けています。就活生にとっても、伝統的な重工メーカーから「航空・宇宙・防衛のテクノロジー企業」へ変革するダイナミズムを感じ取れる内容といえます。