電源開発・2026年3月期Q3、純利益5.4%増の840億円——国内発電事業は苦戦も、米国資産の売却益が業績を下支え
売上高
8,646億円
-9.8%
通期予想
1.2兆円
営業利益
883億円
-22.8%
通期予想
920億円
純利益
840億円
+5.4%
通期予想
890億円
営業利益率
10.2%
電源開発(J-POWER)が30日に発表した2026年3月期第3四半期決算は、売上高が前年同期比 9.8%減 の 8,645億円 、営業利益が同 22.8%減 の 882億円 と大幅な減収減益となりました。国内での火力発電所の休廃止や市場価格の下落が響いた一方、親会社株主に帰属する四半期純利益は同 5.4%増 の 840億円 を確保しました。米国での火力発電事業の持分譲渡に伴う投資利益が寄与し、本業の落ち込みを補う 資産リサイクル戦略 が鮮明となる結果となりました。
業績のポイント
当第3四半期の累計業績は、売上高が 8,645億円 (前年同期比 9.8%減 )、営業利益が 882億円 (同 22.8%減 )となりました。減収減益の主因は、脱炭素化の流れを受けた松島火力発電所の休廃止や、電力需給の緩和に伴う容量市場価格の下落です。また、発電設備の修繕費増加や、豪州の子会社における石炭販売価格の下落も利益を圧迫しました。
一方で、経常利益は 1,314億円 (同 5.1%増 )、四半期純利益は 840億円 (同 5.4%増 )と増益を達成しました。これは、米国での火力発電事業の持分譲渡により 持分法による投資利益 が前年同期の 94億円 から 565億円 へと急増したことが大きく貢献しています。本業の収益性が低下する中で、海外資産の戦略的な入れ替えが最終利益の底上げに寄与した形です。
| 項目 | 前年同期(2025.3 Q3) | 当期(2026.3 Q3) | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 9,589億円 | 8,645億円 | △9.8% |
| 営業利益 | 1,142億円 | 882億円 | △22.8% |
| 経常利益 | 1,250億円 | 1,314億円 | +5.1% |
| 四半期純利益 | 797億円 | 840億円 | +5.4% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
主軸の発電事業は、売上高が 6,265億円 (同 9.5%減 )、セグメント利益が 398億円 (同 37.3%減 )と苦戦しました。火力の販売電力量は発電所利用率の上昇により 5.0%増 の 303億kWh となりましたが、松島火力発電所の休廃止に伴う影響や、容量市場価格の下落、修繕費の増加が利益を大きく削りました。再生可能エネルギーについても、水力出水率が前年の 92% から 90% に低下したことで、販売電力量が減少しました。
海外事業は、売上高が 1,678億円 (同 9.8%減 )となったものの、セグメント利益は 746億円 (同 131.9%増 )と激増しました。タイでの販売電力量減少により売上は落ち込みましたが、前述の米国火力発電事業の持分譲渡に伴う利益計上がセグメント利益を強力に押し上げました。一方、電力周辺関連事業は豪州炭鉱権益における石炭価格の下落が響き、利益は 96億円 (同 54.8%減 )に留まりました。
| セグメント | 売上高 | 前年同期比 | セグメント利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 発電事業 | 6,265億円 | △9.5% | 398億円 | △37.3% |
| 海外事業 | 1,678億円 | △9.8% | 746億円 | +131.9% |
| 電力周辺関連 | 545億円 | △15.6% | 96億円 | △54.8% |
| 送変電事業 | 371億円 | △1.8% | 66億円 | △16.8% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 発電事業 | 6,266億円 | 73% | 398億円 | 6.4% |
| 海外事業 | 1,678億円 | 19% | 747億円 | 44.5% |
| 電力周辺関連事業 | 545億円 | 6% | 96億円 | 17.6% |
| 送変電事業 | 372億円 | 4% | 67億円 | 18.0% |
財務状況と資本政策
2025年12月末時点の総資産は、前連結会計年度末から 145億円 増加し、 3兆6,832億円 となりました。円高による外貨建て資産の減少要因はありましたが、国内での送電幹線増強工事や海外での太陽光発電所建設といった成長投資の進捗が資産残高を押し上げました。負債は繰延税金負債の減少などにより 2兆1,811億円 へと縮小しています。
自己資本比率は、利益の積み上げにより前年度末の 36.4% から 37.5% へと改善しました。同社は 資本効率の向上と株主還元の拡充 を目的として、2025年5月に最大 200億円 の自己株買いを決定しており、12月末までに約 156億円 分(546万株)を取得済みです。配当については、年間 100円 (中間50円・期末50円予想)の維持を予定しており、安定的な還元姿勢を継続しています。
通期見通し
2026年3月期の通期連結業績予想については、2025年5月の公表値を据え置きました。第3四半期までの進捗率は、売上高で 71.3% 、純利益で 94.4% に達しており、利益面では通期目標の 890億円 に対して極めて高い水準で推移しています。ただし、エネルギー価格の変動や為替動向、さらには今後の設備修繕スケジュールの不確実性を考慮し、現時点での修正は見送られています。
| 項目 | 前回予想(5/9公表) | 今回予想 | 前期実績(2025.3) |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆2,120億円 | 1,212,000百万円 | 1兆3,167億円 |
| 営業利益 | 920億円 | 92,000百万円 | 1,384億円 |
| 純利益 | 890億円 | 89,000百万円 | 925億円 |
リスクと課題
同社が直面する主な経営課題とリスクは以下の通りです。
- 脱炭素化への対応: 石炭火力の比率が高い同社にとって、松島火力に続く既存設備の低炭素化・休廃止の判断が今後の固定資産評価に影響を与える可能性があります。
- 燃料・電力市場の変動: 資源価格や卸電力市場、容量市場の価格変動は、国内発電事業の収益安定性を揺るがす要因となります。
- 海外事業のボラティリティ: 米国やタイを中心とした海外事業は利益への貢献度が高まっている反面、現地の制度変更や為替変動、資産売却のタイミングに業績が左右されやすい構造になっています。
- 修繕費の増大: 設備の経年化に伴うメンテナンス費用の増加が、営業利益を押し下げる要因として定着しつつあります。
今回の決算は、J-POWERの「稼ぐ力」の転換点を示唆しています。国内の石炭火力事業が環境規制や市場環境の変化で減益を余儀なくされる中、米国資産の売却といった「投資回収」で最終的な帳尻を合わせた形です。
注目すべきは、第3四半期時点で通期純利益予想の9割以上を稼ぎ出している点です。据え置きとはしているものの、期末に向けて大きな下方要因がなければ上方修正の余地もあります。
就活生の視点では、単なる「電力会社」ではなく、海外での投資開発や資産運用を行う「エネルギーアセットマネジャー」としての側面が強まっていることに注目すると、同社の戦略理解が深まるでしょう。一方で、本業である国内発電事業の営業利益率改善が、中長期的な株価・評価の焦点となります。
