JT・2025年12月期通期、営業利益176%増の8,670億円——カナダ訴訟引当金の剥落で大幅増益、医薬事業は譲渡完了

日本たばこ産業(JT)が発表した2025年12月期の連結決算は、売上収益が前年同期比 13.4%増 の 3兆4,677億円、営業利益が同 175.9%増 の 8,670億円 と記録的な増益となりました。前年度に計上したカナダでのたばこ訴訟関連の引当金(約3,756億円)が剥落したことに加え、主力のたばこ事業における価格改定と販売数量の堅調な推移が業績を大きく押し上げました。同社は医薬事業の譲渡を完了させており、経営資源を主力のたばこ事業へ集中させる構造改革を一段と進めています。

決算の数字通期
1年間の確定値(前年比)
| 項目 | 実績 | 前年比 | 今期予想 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 3.5兆円 | +13.4% | 3.7兆円 |
| 営業利益 | 8,670億円 | +175.9% | 9,210億円 |
| 純利益 | 5,102億円 | +184.6% | 5,700億円 |
| 営業利益率 | 25.0% | ||
業績のポイント
2025年12月期の業績は、売上収益が 3兆4,677億円(前年比 +13.4%)、営業利益が 8,670億円(前年比 +175.9%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は 5,102億円(前年比 +184.6%)と、主要な全ての指標で大幅な伸びを記録しました。この驚異的な増益率の背景には、2024年12月期にカナダ子会社等の包括的和解に関連して計上した多額の訴訟損失引当金の影響がなくなったという会計上の要因があります。しかし、この一過性要因を除いたベースで見ても、たばこ事業および加工食品事業における増収増益が継続しており、実態としての収益力は強化されています。
特に、全社利益目標として同社が掲げる「為替一定ベースの調整後営業利益」は前年比 24.9%増 の 9,275億円 となりました。これは、新興国通貨の対円での減価といったネガティブな為替影響を、たばこ製品の価格改定や効率的なコスト管理で十分に補ったことを示しています。また、当期利益率も前年の 4.7% から 13.0% へと劇的に改善しており、財務基盤の堅牢さが改めて浮き彫りとなりました。
セグメント別動向
JTの収益の大半を占める「たばこ事業」は、売上収益が 3兆3,054億円、調整後営業利益が 9,522億円 と、グループ全体の成長を力強く牽引しました。地域別では、EMA(アフリカ、中近東、東欧、ロシア等)および西欧地域での価格改定が奏功し、販売単価の上昇が利益に大きく貢献しています。アジア地域においても、日本を含む主要市場で安定したシェアを維持しており、グローバルな事業ポートフォリオが効果的に機能しました。
「加工食品事業」については、冷凍・常温加工食品および調味料等の販売が好調で、売上収益は 1,595億円(前年比 +1.5%)、調整後営業利益は 86億円(前年比 +6.4%)の増収増益となりました。原材料費の高騰という逆風があるものの、製品価格への転嫁と製造プロセスの効率化によって利益水準を確保しています。
| セグメント | 売上収益 | 調整後営業利益 | 営業利益率(調整後) |
|---|---|---|---|
| たばこ事業 | 3兆3,054億円 | 9,522億円 | 28.8% |
| 加工食品事業 | 1,595億円 | 86億円 | 5.4% |
| その他・共通 | 28億円 | ▲586億円 | - |
なお、同社は医薬事業を非継続事業に分類し、2025年12月1日付で塩野義製薬への事業承継および鳥居薬品の株式譲渡を完了させています。これにより、今後は「たばこ」と「加工食品」を主軸とした事業体制へのスリム化が図られます。
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| たばこ事業 | 3.3兆円 | 95% | 9,522億円 | 28.8% |
| 加工食品事業 | 1,595億円 | 5% | 86億円 | 5.4% |
財務状況と資本政策
2025年12月末時点の総資産は 8兆4,192億円 と、前年末比で 485億円 増加しました。カナダ訴訟の和解に伴う引当金の支払いが進んだことで負債は減少傾向にありますが、円安に伴う在外営業活動体の換算差額の増加などが資本の積み増しに寄与しました。自己資本比率(親会社所有者帰属持分比率)は 48.5% と、前年末の 45.0% から向上しており、極めて健全な財務状態を維持しています。
株主還元については、JTの象徴とも言える積極的な姿勢を維持しています。2025年12月期の年間配当は、カナダ訴訟の和解やスーダン子会社の清算に伴う一過性の損益を調整したベースの当期利益に対し、配当性向85.0%を適用して算定されました。その結果、1株当たり年間配当金は前年の 194円 から大幅に増額された 234円 となりました。さらに、2026年12月期の配当予想は、さらに 8円 増配の 242円 を予定しており、投資家からの期待に応える内容となっています。
リスクと課題
業績は好調ですが、同社は複数のリスク要因を注視しています。まず、ロシア・ウクライナ情勢の長期化です。ロシア市場での事業運営は継続しているものの、将来的な分離を含めた選択肢の検討を継続しており、不確実性が残っています。また、為替変動リスクも依然として大きく、特に新興国通貨の急激な下落は、現地での増益を円建て換算時に相殺してしまうリスクがあります。
事業面では、世界的に強まる健康規制の強化が長期的な課題です。たばこ製品に対する増税や、広告・包装に対する規制、喫煙環境の制限などは、販売数量の減少要因となります。これに対し、加熱式たばこ等の次世代製品(RRP)への投資を加速させ、既存の紙巻きたばこに依存しない収益構造への転換を急いでいます。また、カナダでの訴訟についても和解プロセスは進行中ですが、最終的な支払いスケジュールの進捗には注視が必要です。
通期見通し
2026年12月期の連結業績予想について、同社は増収増益を見込んでいます。売上収益は前年比 6.6%増 の 3兆6,970億円、営業利益は同 6.2%増 の 9,210億円 を計画しています。医薬事業の離脱による減収分を、主力のたばこ事業のオーガニックな成長で十分にカバーする想定です。
| 項目 | 2025年12月期実績 | 2026年12月期予想 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 3兆4,677億円 | 3兆6,970億円 | +6.6% |
| 営業利益 | 8,670億円 | 9,210億円 | +6.2% |
| 調整後営業利益 | 9,022億円 | 9,550億円 | +7.9% |
| 当期利益 | 5,102億円 | 5,700億円 | +11.7% |
決算発表前後の株価推移
決算発表当日の終値(2026/2/12)
6,140円
最新終値(2026/10/23)
7,539円+22.8%
※ 日次終値ベースの参考チャートです。リアルタイムの株価ではありません(株式分割調整済み、1年以上前は週次の終値)。2026/10/25更新
タグ#日本たばこ産業#JT#増収増益#高配当株#構造改革#医薬事業譲渡#カナダ訴訟#たばこ規制#為替影響#決算レポート
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コメント
今回の決算で最も注目すべきは、JTが「医薬事業からの撤退」という大きな経営判断を完了させ、たばこ事業を中心とした「専業メーカー」に近い姿へと回帰した点です。かつて多角化の象徴だった医薬事業を手放したことは、就職活動中の学生にとっても同社の事業ドメインが明確になったという意味で重要なニュースです。
財務面では、カナダ訴訟という長年の懸案事項に一定の区切り(和解)がついたことで、巨額の引当金リスクが後退したことが利益の劇的な回復につながりました。配当についても、一過性要因を除いた「実力値の利益」をベースに配当性向を算定しており、242円という高い予想配当額は、株主重視の姿勢が揺るぎないことを示しています。
一方で、ロシア市場への依存度や健康規制の強化といった外部環境のリスクは消えておらず、今後は加熱式たばこ市場で海外競合他社に対してどれだけシェアを奪えるかが、中長期的な株価と成長の焦点となるでしょう。収益性が極めて高いビジネスモデルであるため、キャッシュ創出能力には依然として盤石の強みを感じます。
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