加賀電子・2026年3月期Q3、純利益91%増の243億円——協栄産業の連結化と負ののれん計上で大幅増益、通期予想を上方修正
売上高
4,455億円
+12.4%
通期予想
6,200億円
営業利益
194億円
+7.7%
通期予想
270億円
純利益
243億円
+91.2%
通期予想
285億円
営業利益率
4.4%
独立系エレクトロニクス商社大手の加賀電子は2月12日、2026年3月期第3四半期の連結決算を発表しました。売上高は前年同期比 12.4%増 の 4,454億75百万円 、親会社株主に帰属する四半期純利益は同 91.2%増 の 243億8百万円 となりました。協栄産業株式会社の連結子会社化 に伴う売上の上乗せに加え、負ののれん発生益 75億94百万円 を特別利益に計上したことが利益を大きく押し上げました。好調な業績を背景に、通期予想の上方修正と増配も発表しています。
業績のポイント
当第3四半期累計期間は、売上高から各段階利益まで全てにおいて前年同期を上回る増収増益を達成しました。主力の電子部品事業においてサプライチェーンの在庫調整が解消に向かったことに加え、M&Aによる規模拡大が寄与しています。特に純利益が 91.2%増 と急増した要因は、2025年7月に実施した協栄産業へのTOB(株式公開買付け)に伴い、負ののれん発生益 75億94百万円 を特別利益として計上したためです。
営業利益についても 194億49百万円 (前年比 +7.7% )を確保しました。人件費や物流費、企業買収に伴う固定費の増加はあったものの、増収による利益の積み上げと、採算性の高いEMS(電子機器の受託製造サービス)ビジネスの伸長が寄与し、コスト増を吸収しました。為替相場が前年同期の152円台から148円台へと円高方向に振れたものの、実需ベースの好調さが勝る結果となっています。
| 指標 | 当第3四半期実績 | 前年同期実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 445,475百万円 | 396,243百万円 | +12.4% |
| 営業利益 | 19,449百万円 | 18,056百万円 | +7.7% |
| 経常利益 | 20,766百万円 | 18,379百万円 | +13.0% |
| 四半期純利益 | 24,308百万円 | 12,714百万円 | +91.2% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
全セグメントで増収を確保し、特に情報機器事業が利益面で大きく成長しました。中核の 電子部品事業 は、売上高 3,838億92百万円 (前年比 +10.9% )、セグメント利益 137億68百万円 (同 +1.5% )となりました。海外生産拠点を中心としたEMSビジネスが医療機器や空調機器向けに好調だったほか、新たに連結化した協栄産業の業績が加わりました。一部の車載向け半導体や汎用メモリで需給が逼迫する場面もありましたが、総じて堅調に推移しています。
情報機器事業 は、売上高 336億52百万円 (前年比 +24.9% )、セグメント利益 24億99百万円 (同 +28.0% )と大幅な伸びを見せました。文部科学省の「GIGAスクール構想」第2期による端末更新需要が教育機関向けに発生したほか、AI搭載PCの新製品投入やWindows10のサポート終了に伴う買い替え需要が追い風となりました。また、セキュリティソフトの販売も単価上昇により収益に貢献しています。
ソフトウェア事業 および その他事業 も堅調です。ソフトウェア事業ではゲームやアミューズメント向けCG映像制作の大型案件を受注し、売上高は 22.0%増 となりました。利益面では第1四半期の苦戦が響き前年比マイナスですが、直近では黒字化が定着しています。その他事業では、PCのリサイクルビジネスが引き続き好調を維持しています。
| セグメント | 売上高 | 前年比 | セグメント利益 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 電子部品 | 383,892百万円 | +10.9% | 13,768百万円 | +1.5% |
| 情報機器 | 33,652百万円 | +24.9% | 2,499百万円 | +28.0% |
| ソフトウェア | 2,525百万円 | +22.0% | 233百万円 | △24.2% |
| その他 | 25,404百万円 | +20.9% | 2,747百万円 | +31.0% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 電子部品事業 | 3,839億円 | 86% | 138億円 | 3.6% |
| 情報機器事業 | 337億円 | 8% | 25億円 | 7.4% |
| ソフトウェア事業 | 25億円 | 1% | 2億円 | 9.2% |
| その他事業 | 254億円 | 6% | 27億円 | 10.8% |
財務状況と資本政策
当第3四半期末の総資産は、前連結会計年度末比で 374億99百万円 増加し、 3,431億71百万円 となりました。協栄産業の連結化により、商品及び製品が 195億75百万円 増加したほか、有形固定資産も 26億36百万円 増加しています。M&Aに伴う資産規模の拡大が明確に表れています。
自己資本比率は 50.9% と、前年度末の54.4%から低下しました。これは企業買収に関連した短期借入金の増加( 146億92百万円増 )などが要因ですが、依然として50%台を維持しており、財務の健全性は保たれています。
株主還元については、積極的な姿勢を強めています。2025年8月に実施した 144億円 の自己株買いに加え、本日、通期の年間配当予想を前回予想の120円から 130円 (普通配当110円、特別配当20円)へ増額修正しました。DOE(自己資本配当率)4.0% を目標とする方針に基づき、好調な業績を株主へ還元する経営判断を下しています。
通期見通し
加賀電子は、好調な進捗とM&Aの効果を踏まえ、通期の業績予想を上方修正しました。売上高は前回予想から 250億円 引き上げ、営業利益も 15億円 上積みしています。通期の純利益予想は 285億円 となり、前期実績から 66.8%増 と大幅な成長を見込んでいます。
| 項目 | 前回発表予想 | 今回修正予想 | 前期実績 (25/3) | 修正率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 595,000 | 620,000 | 547,779 | +4.2% |
| 営業利益 | 25,500 | 27,000 | 23,601 | +5.9% |
| 経常利益 | 25,500 | 28,000 | 22,593 | +9.8% |
| 当期純利益 | 26,000 | 28,500 | 17,083 | +9.6% |
※単位:百万円
リスクと課題
順調な拡大が続く一方で、以下のリスク要因が挙げられます。
- 需給バランスの変動: 車載向け半導体や汎用メモリの一部で見られる需給逼迫が、部品調達コストの上昇や納期の長期化を招くリスクがあります。
- 景気後退に伴う需要減退: 世界的な景気動向によっては、EMSビジネスの主要顧客である製造業の設備投資が抑制される懸念があります。
- M&Aの統合プロセス: 協栄産業などの買収企業のPMI(経営統合)が計画通りに進まない場合、期待したシナジーが得られないリスクがあります。
- 為替変動: 海外売上比率が高いため、急激な円高は円換算後の利益を押し下げる要因となります。
今回の決算で特筆すべきは、戦略的なM&Aが数字として鮮やかに表れた点です。協栄産業の買収により「負ののれん」という形で一過性の利益が出ただけでなく、売上高の規模も確実に一段階上がりました。同社が掲げる「売上高1兆円」という長期目標に向けた意志の強さが感じられます。
- 資本効率と還元の両立: 自己株買い144億円を実施しながらも、増額修正した配当予想でDOE4%を維持しており、株主還元に対する規律が高い点は投資家から評価されやすいでしょう。
- 事業環境の追い風: 情報機器事業におけるGIGAスクール特需やAI PCへのシフトは、今後1〜2年の短期的な成長を支える強力なエンジンになりそうです。
- 懸念点: 利益成長の多くが特別利益に依存している側面があるため、来期以降に協栄産業とのシナジーをどれだけ「本業の営業利益」として刈り取れるかが真の評価の分かれ目となります。
