東京エレクトロン デバイス・2026年3月期Q3、純利益9.8%減の50億円——AI需要でシステム事業は好調も、産業用半導体が停滞
売上高
1,467億円
-9.5%
通期予想
2,000億円
営業利益
63億円
-28.8%
純利益
50億円
-9.8%
通期予想
72億円
営業利益率
4.3%
半導体商社大手の東京エレクトロン デバイスが2日発表した2026年3月期第3四半期(4〜12月)の連結決算は、売上高が前年同期比 9.5%減 の 1,467億円、純利益が同 9.8%減 の 50億円 となりました。AI活用やクラウド進展を背景としたIT投資が追い風となりコンピュータシステム事業は大幅な増収増益を記録した一方、主力の半導体事業で産業機器向けの需要回復が遅れたことが響きました。なお、持分法適用会社の株式売却による特別利益の計上が、営業段階での減益幅を最終利益ベースで圧縮する形となっています。
業績のポイント
当第3四半期累計期間の業績は、売上高が 1,467億1,600万円(前年同期比 9.5%減)、営業利益は 63億600万円(同 28.8%減)と、本業の儲けを示す段階では厳しい結果となりました。国内経済は設備投資の持ち直しが見られたものの、米国の関税政策や地政学リスクによる先行き不透明感から、製造業を中心とした顧客企業の投資判断に足踏みが見られました。
利益面では、営業利益が大幅な減益となった一方で、親会社株主に帰属する四半期純利益は 50億3,000万円(同 9.8%減)にとどまりました。これは、持分法適用関連会社であったFidus Systems Inc.の全保有株式を譲渡したことに伴い、10億6,600万円 の投資有価証券売却益を特別利益として計上したためです。本業の苦戦を資産整理による利益で一定程度補った格好と言えます。
| 項目 | 2025年3月期 Q3 | 2026年3月期 Q3 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,620億円 | 1,467億円 | △9.5% |
| 営業利益 | 88億円 | 63億円 | △28.8% |
| 経常利益 | 79億円 | 60億円 | △24.0% |
| 四半期純利益 | 55億円 | 50億円 | △9.8% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力である「半導体及び電子デバイス事業」は、売上高が 1,173億400万円(前年同期比 13.7%減)、セグメント利益が 18億5,200万円(同 61.0%減)と、大幅な減収減益に沈みました。車載向け半導体は商権拡大により堅調を維持したものの、産業機器向けの大幅な減少が重石となりました。また、自社ブランド(PB)製品も、ウェーハ市場の調整長期化を受けて低調に推移し、利益率を押し下げる要因となりました。
対照的に「コンピュータシステム関連事業」は、売上高 294億1,100万円(同 12.5%増)、セグメント利益 41億7,500万円(同 31.1%増)と非常に力強い伸びを見せました。企業のAI活用やIT基盤のクラウド移行が加速する中、ストレージ関連製品やセキュリティ製品の販売が好調でした。特に、導入後の保守・監視サービスといったストック型ビジネスも堅調に推移しており、事業全体の収益性を高めています。
| セグメント名 | 売上高(前年比) | セグメント利益(前年比) | 利益率 |
|---|---|---|---|
| 半導体及び電子デバイス | 1,173億円 (△13.7%) | 18億円 (△61.0%) | 1.6% |
| コンピュータシステム | 294億円 (+12.5%) | 41億円 (+31.1%) | 14.2% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 半導体及び電子デバイス事業 | 1,173億円 | 80% | 19億円 | 1.6% |
| コンピュータシステム関連事業 | 294億円 | 20% | 42億円 | 14.2% |
財務状況と資本政策
当第3四半期末の総資産は、前連結会計年度末から 14億8,900万円 増加し 1,583億3,100万円 となりました。売上債権が増加した一方で、在庫適正化の進展により棚卸資産が減少しており、資産の効率化に向けた動きが見て取れます。自己資本比率は、前連結会計年度末の 30.5% から 31.1% へと 0.5ポイント向上 し、安定した財務基盤を維持しています。
株主還元については、当初の年間配当予想(合計99円)を据え置いています。前期の 119円 からは減配となる見通しですが、これは業績連動方針に基づくものです。企業側は安定的なキャッシュ・フローの創出を重視しており、成長投資と株主還元のバランスを考慮した経営判断を継続しています。期末配当は 64円 を予定しており、投資家への還元姿勢に揺らぎはありません。
通期見通しとリスク課題
2026年3月期の通期業績予想については、前回公表(2025年10月29日)の数値を据え置いています。足元の業績は概ね計画通りに推移しており、第4四半期に向けて産業機器向けの在庫調整完了と需要の回復を見込んでいます。売上高は通期で 2,000億円(前期比 7.6%減)を計画しており、コンピュータシステム事業の成長が半導体事業の落ち込みをどこまでカバーできるかが焦点となります。
今後の懸念事項として、米国の関税政策に伴うサプライチェーンへの影響や、中東情勢などの地政学リスクが挙げられています。また、半導体市場特有のシリコンサイクルによる需要変動リスクも依然として残ります。同社はAI関連やセキュリティといった高成長分野へのシフトを加速させることで、外部環境の変化に強い事業構造への転換を急ぐ方針です。
| 項目 | 前回予想 | 今回修正 | 前期実績(参考) |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,000億円 | 2,000億円 | 2,165億円 |
| 経常利益 | 91億円 | 91億円 | 114億円 |
| 親会社株主純利益 | 72億円 | 72億円 | 88億円 |
今回の決算で特筆すべきは、同社の「2つの顔」の明暗がはっきりと分かれた点です。
- 強み: コンピュータシステム事業の収益性が極めて高い(利益率14.2%)ことです。単なる「箱売り」ではなく、AIやセキュリティといった旬の技術に保守サービスを組み合わせたソリューション展開が実を結んでいます。
- 懸念点: 利益の柱であった半導体事業の利益率が1.6%まで低下している点です。産業機器向けの在庫調整が想定より長引いており、PB製品の苦戦も加わり、利益構造が一時的に脆弱になっています。
- 今後の焦点: 特別利益を除いた「実力値としての利益」をどれだけ早期に回復させられるか。特に、AI特需を取り込んでいるシステム事業の成長が、半導体サイクルの波を吸収できるレベルまで拡大できるかが、中長期的な株価評価の分かれ道になるでしょう。
