協和キリン・2025年12月期、コア営業利益8%増の1,031億円——北米で主力薬が伸長、海外売上比率は74%に上昇
売上高
4,968億円
+0.2%
通期予想
5,200億円
営業利益
1,031億円
+8.1%
通期予想
1,000億円
純利益
670億円
+12.0%
通期予想
750億円
営業利益率
20.7%
協和キリンが発表した2025年12月期決算は、海外での主力製品の成長が牽引し、本業の儲けを示すコア営業利益が前年比 8%増 の 1,031億円 となった。主力薬「クリースビータ」が北米市場で好調を維持したほか、欧米での新製品の立ち上がりが収益に寄与した。同社は株主還元を重視し、年間配当を前期から 4円増配 の 62円 とすることを決定した。グローバル戦略の進展により、海外売上比率は過去最高の 74% に達している。

業績のポイント
2025年12月期の連結業績は、売上収益が前年比 0%増 の 4,968億円 と微増ながらも、利益面では着実な成長を見せた。コア営業利益は前期の 954億円 から 1,031億円 (前年比 +8%)に増加し、親会社株主に帰属する当期利益も前年比 12%増 の 670億円 を確保した。売上収益が横ばいとなったのは、国内での後発品浸透や薬価改定の影響、および一部提携終了に伴う製品売上の減少が要因だが、これを利益率の高い海外主力品の伸びが補った形だ。
利益成長の最大の原動力は、海外における主力フランチャイズの拡大である。特に主力製品である「クリースビータ」の売上高が 2,164億円 (前年比 +10%)と順調に成長したほか、皮膚T細胞リンパ腫治療薬「ポテリジオ」も北米を中心に 457億円 (前年比 +15%)と大きく伸長した。これにより、売上収益に対するコア営業利益率は前年の 19.3% から 20.7% へと 1.4ポイント向上 し、収益体質が一段と強化されている。
| 項目 | 前期実績 | 当期実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 4,956億円 | 4,968億円 | +0% |
| コア営業利益 | 954億円 | 1,031億円 | +8% |
| 税引前利益 | 835億円 | 872億円 | +5% |
| 当期利益 | 599億円 | 670億円 | +12% |
業績推移(通期)
セグメント・地域別動向
地域別の売上収益をみると、北米市場の躍進と日本市場の苦戦という鮮明なコントラストが浮き彫りとなった。北米市場の売上収益は 1,925億円 (前年比 +10%)と大幅に伸長し、地域別の売上構成比でトップを独走している。北米では「クリースビータ」の患者数が着実に増加していることに加え、メトセキラレン製剤「ポテリジオ」の浸透が継続しており、グローバル成長を力強く牽引している。
一方、日本市場の売上収益は 1,225億円 (前年比 -9%)と減少した。国内では主力だった持続型赤血球造血刺激因子製剤「ネスプ」の後発品(バイオシミラー)への切り替えが加速したほか、薬価改定による引き下げが響いた。また、LEO Pharma社との提携終了に伴い「ドボベット」の売上がなくなったことも減収要因となった。しかし、国内でも次世代主力薬と位置づける「クリースビータ」の売上は 136億円 (前年比 +16%)と拡大しており、世代交代が進んでいる。
EMEA(欧州・中東・アフリカ)地域では、売上収益が 837億円 (前年比 -1%)とほぼ横ばいで推移した。これは、異染性白質ジストロフィー治療薬「Libmeldy」の売上が 64億円 (前年比 +94%)と倍増した一方で、為替変動や一部ライセンス契約の影響を受けたためだ。全体として、日本での減収を北米を中心とした海外成長でカバーする 「海外シフト」 が一段と進展した決算といえる。
| 主要製品売上 | 2024年実績 | 2025年実績 | 増減額 |
|---|---|---|---|
| クリースビータ | 1,966億円 | 2,164億円 | +198億円 |
| ポテリジオ | 399億円 | 457億円 | +58億円 |
| ポテリジオ(北米) | 297億円 | 339億円 | +42億円 |
| ネスプ(日本) | 26億円 | 14億円 | (13億円) |
通期見通しと成長投資
2026年12月期の業績予想については、売上収益が前期比 5%増 の 5,200億円 と増収を計画する一方、コア営業利益は 1,000億円 (同 -9%)と減益を見込む。これは、将来の成長に向けた 研究開発費の大幅な積み増し を計画しているためだ。2026年度の研究開発費は前期比200億円増の 1,220億円 (売上比率 23.5%)を予定しており、複数の後期開発パイプラインの進展に資金を集中投下する方針だ。
特に注力するのは、アトピー性皮膚炎治療薬「ロカチンリマブ(AMG 451)」や、米国で承認を取得したメニン阻害薬「ziftomenib(KOMZIFTI)」の最大化である。同社は2026年1月に、Amgen社からロカチンリマブの全権利を再取得することを発表しており、自社によるグローバル開発・商業化を加速させる。一時的な利益の足踏みは、将来の大型製品を育成するための 「攻めの投資」 と位置づけている。
| 項目 | 2025年実績 | 2026年予想 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 4,968億円 | 5,200億円 | +4.7% |
| コア営業利益 | 1,098億円* | 1,000億円 | (9.1)% |
| 当期利益 | 670億円 | 750億円 | +12.0% |
*2026年予想から適用される「新定義コア営業利益」ベースでの比較
財務状況と資本政策
財務面では、強固なバランスシートを維持しつつ、株主還元の拡充を継続している。2025年12月期の年間配当は、コアEPS(1株当たりコア利益)に対する配当性向 40% という方針に基づき、前期の58円から 62円 へと引き上げた。これにより、DOE(自己資本配当率)は 3.8% となり、中期経営計画で掲げる目標値 4.0%以上 の達成に向けた進展を見せている。
キャッシュフローの状況をみると、営業活動によるキャッシュフローは 1,000億円 (前期比 +321億円)と大幅に増加した。これは棚卸資産の圧縮や利益成長が貢献したものである。一方で、投資活動では 926億円 の支出を行っており、主に北米での新拠点整備や無形資産への投資に充てられた。「ROE(自己資本利益率)7%以上」 の目標に対し、当期は 8.2% と目標を上回って推移しており、資本効率の改善も着実に進んでいる。
リスクと課題
今後の経営課題として、同社は以下のリスク要因を挙げている。
- 特許切れに伴う減収リスク: 国内での「ネスプ」に続き、将来的には海外での主力薬「クリースビータ」も独占期間の終了を見据える必要があり、次世代製品の早期育成が急務となっている。
- 研究開発の不確実性: 2026年に過去最高水準の研究開発費を投じるが、新薬開発には臨床試験の失敗や当局の承認遅延といった不確実性が伴う。特に権利を再取得した「ロカチンリマブ」の成否は中長期の成長性を左右する。
- 薬価抑制策の強化: 日本国内のみならず、北米市場においても薬価引き下げ圧力(米国の薬価交渉制度など)が強まっており、利益率への影響が懸念される。
- 地政学・為替変動リスク: 海外売上比率が7割を超える中、為替の変動は円換算後の業績に直接的な影響を与える。2026年予想では1ドル=150円を前提としているが、急激な円高は減益要因となる。
協和キリンの決算は、文字通り「日本企業からグローバルファーマへ」の脱皮が完了しつつあることを示しています。特筆すべきは営業利益率の高さで、コア営業利益率20%超えは国内他社と比較しても高水準です。
注目ポイントは、2026年の「減益覚悟の投資」です。ロカチンリマブの権利再取得により、自社で利益を独占できる体制を整えたことはポジティブですが、同時に開発コストと商業化リスクを全て背負うことになります。クリースビータへの一本足打法からの脱却が成功するか、2026年以降の開発パイプラインの進捗が最大の焦点となるでしょう。
就活生にとっては、海外比率が極めて高く、利益の大部分を海外で稼ぐ同社の構造は、グローバルな環境で挑戦したい学生にとって非常に魅力的なフェーズにあると言えます。一方で、国内事業は縮小傾向にあるため、自身のキャリアをどのフィールドに置くかを明確にする必要があります。
