ネクソン・2026年12月期Q1、純利益117%増の572億円——『ARC Raiders』大ヒット、300億円の自社株買いも発表
売上高
1,522億円
+33.6%
通期予想
2,719億円
営業利益
582億円
+39.8%
通期予想
835億円
純利益
572億円
+117.8%
通期予想
804億円
営業利益率
38.2%
オンラインゲーム大手のネクソンが14日に発表した2026年12月期第1四半期(1〜3月)の連結決算は、売上収益が前年同期比 33.6%増 の 1,522億円 、親会社の所有者に帰属する四半期利益が同 117.8%増 の 572億円 と、過去最高の業績を達成しました。新作『ARC Raiders』のグローバルでの歴史的大ヒットに加え、主力IP『メイプルストーリー』がアジア地域で力強く成長したことが大幅な増収増益に寄与しました。また、好調な業績を背景に、年間配当の増額と300億円を上限とする自社株買いを同時に打ち出し、積極的な株主還元姿勢を鮮明にしています。
業績のポイント
当第1四半期は、ネクソンにとって「記録的な3ヶ月間」となりました。売上収益は 1,522億3,400万円 (前年比 +33.6% )、営業利益は 581億6,300万円 (同 +39.8% )に達し、売上・利益ともに四半期としての過去最高を更新しました。この躍進の主因は、IP(知的財産)成長戦略に基づく既存タイトルの活性化と、新規タイトルの創出が完璧に噛み合ったことにあります。
利益面では、売上高の増加に伴う利益の押し上げに加え、為替相場の変動による 145億円 の為替差益を金融収益として認識したことが、純利益を大きく底上げしました。親会社株主に帰属する四半期利益は 572億2,500万円 (同 +117.8% )と、前年同期の 2.2倍 を超える水準まで拡大しています。既存タイトルの運営で培った「ライブ運用能力」をベースに、グローバル市場への水平展開が着実に実を結んでいる形です。
| 項目 | 2025年12月期Q1 | 2026年12月期Q1 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1,139億円 | 1,522億円 | +33.6% |
| 営業利益 | 416億円 | 582億円 | +39.8% |
| 税引前四半期利益 | 387億円 | 752億円 | +94.4% |
| 親会社所有者帰属利益 | 263億円 | 572億円 | +117.8% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
地域別では、新作の寄与があった「その他(欧州・アジア諸国)」および「北米」が爆発的な伸びを見せた一方、成熟市場である韓国は前年の高水準なハードルに直面する結果となりました。特に「その他」セグメントは、売上収益が前年同期の 14億円 から 409億円 へと、実に 28倍以上 に急拡大しています。これは2025年10月にリリースされた新作アクション・サバイバルシューター『ARC Raiders』が、当四半期中に累計販売本数 1,550万本 を突破し、世界的なヒットを維持したためです。
韓国セグメントは売上収益 1,017億6,900万円 (前年同期比 3.2%減 )となりました。主力の『アラド戦記』において中国向けPC版は好調を維持しましたが、韓国国内でのモバイル版の落ち込みや、前年同期に過去最高売上を記録した反動が響きました。しかし、同じく主力IPである『メイプルストーリー』は、アジア地域(中国・日本除く)への展開を広げた『MapleStory Worlds』などの貢献により、フランチャイズ全体で前年比 42%増 と驚異的な成長を見せています。
中国セグメントは、売上収益 7億円 (前年同期比 59.9%増 )、セグメント利益 3億円 (同 2,298.2%増 )と小規模ながら急成長しました。これは『アラド戦記』PC版の大規模アップデートがユーザーに支持され、ライセンス収入が大幅に増加したことが背景にあります。一方で日本市場は売上高 14億円 (同 11.4%減 )、セグメント損失 2億円 となり、既存タイトルの減衰を補う新機軸の投入が待たれる状況です。
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 日本 | 14億円 | 1% | -216百万円 | — |
| 韓国 | 1,018億円 | 67% | 386億円 | 37.9% |
| 中国 | 7億円 | 1% | 3億円 | 46.8% |
| 北米 | 75億円 | 5% | 12億円 | 15.5% |
| その他(欧州・アジア諸国) | 409億円 | 27% | 191億円 | 46.6% |
財務状況と資本政策
ネクソンは強固な財務基盤を背景に、極めて積極的な株主還元策を打ち出しました。まず配当については、2026年12月期の年間配当予想を前回の45円から 60円 (前期実績45円)へと大幅に引き上げました。これに加え、会社側はさらなる資本効率の向上を目指し、最大 300億円 (上限 1,400万株 )の自己株式取得を実施することを決議しました。これは発行済株式総数の約 1.8% に相当し、投資家への利益還元を重視する経営判断が明確に示されています。
2026年3月末時点の連結財政状態を見ると、総資産は 1兆3,850億円 と前期末から約251億円減少したものの、依然として 4,542億円 の現金及び現金同等物を保有しており、潤沢なキャッシュを維持しています。親会社所有者帰属持分比率は 76.6% と、前期末の75.0%からさらに向上しました。この自己資本の厚みは、次なる成長のためのM&Aや大規模な新規ゲーム開発投資に対する大きなバッファとなっています。
キャッシュ・フロー面では、営業活動から 530億円 のキャッシュを創出しており、本業による現金獲得能力は極めて高い水準を維持しています。一方で、投資活動では定期預金の預け入れなどにより 641億円 の支出を計上しましたが、これは将来の投資余力を確保するための資金管理の一環と言えます。
業績予想と成長戦略
今後の見通しとして、ネクソンは2026年12月期第2四半期(累計)の業績予想を公表しました。売上収益は前年同期比 11.3%〜16.8%増 の 2,591億円〜2,719億円 を見込んでいます。引き続き『メイプルストーリー』のグローバル展開や、『ARC Raiders』の安定した寄与に期待を寄せる内容です。ただし、利益面では新作へのマーケティング投資や人員増に伴う人件費の増加を見込んでおり、営業利益の予想レンジは前年同期比で 6.4%減〜5.3%増 と、横ばいから微減の可能性も示唆しています。
同社は現在、「垂直方向の成長(既存IPの深化)」と「水平方向の成長(新IPの創出)」の二本柱からなるIP成長戦略を推進しています。特に『アラド戦記』や『メイプルストーリー』といった長寿IPを、ハイパー・ローカライゼーション(各地域の好みに合わせたカスタマイズ)によって新市場へ投入する手法が奏功しています。また、開発中の新作群を通じて、特定の地域に依存しない収益ポートフォリオの構築を急いでいます。
| 項目 | 第2四半期予想(累計) | 前年同期実績 | 前年同期比(レンジ) |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 2,591〜2,719億円 | 2,328億円 | +11.3%〜+16.8% |
| 営業利益 | 742〜835億円 | 793億円 | △6.4%〜+5.3% |
| 中間利益 | 715〜786億円 | 422億円 | +69.5%〜+86.4% |
※通期の合理的な業績予想の算定が困難であるため、中間期までの予想のみを開示しています。
リスクと課題
同社が直面する主なリスクとしては、以下の点が挙げられます。
- コンテンツの不確実性: オンラインゲーム市場はユーザーの嗜好の変化が激しく、期待された新作がヒットしなかった場合や、既存タイトルの人気が急激に減衰するリスクがあります。
- 為替変動リスク: 連結決算において外貨建て資産を多く保有しているため、急激な円高が進行した場合、今回のような為替差益が反転し、純利益を押し下げる要因となります。
- 競争環境の激化: グローバル市場において有力な競合他社が次々と新作を投入しており、ユーザーの獲得コスト(広告宣伝費等)が上昇傾向にあります。
- プラットフォーム依存: スマートフォン向けタイトルにおいて、AppleやGoogleなどのプラットフォーム手数料の動向や規約変更が収益性に直接影響を与える可能性があります。
ネクソンの今回の決算は、まさに「攻守ともに盤石」と言える内容です。特に注目すべきは、これまでアジア圏に強みを持っていた同社が、『ARC Raiders』を通じて欧米を含むグローバル市場での存在感を一気に高めた点にあります。
懸念点としては、第2四半期の営業利益予想がレンジの下限で減益となっていることですが、これは将来のヒットを生むための先行投資(広告費・人件費)を惜しまない姿勢の表れとも取れます。単なるゲーム運営会社から、世界的なIPプロデュース企業へと脱皮しようとする経営の意志が感じられます。
また、300億円もの自社株買いと大幅増配を同時に発表したことは、日本の資本市場における「資本コストや株価を意識した経営」の模範的な動きとして、市場から高く評価されるでしょう。就活生の視点では、単一タイトルに依存しない強固なIPポートフォリオと、グローバルで勝てる開発体制が最大の魅力と言えます。
