ネクソン・2025年12月期通期、売上高は過去最高の4,751億円——主力IP好調も為替差損で純利益31.7%減
売上高
4,751億円
+6.5%
営業利益
1,240億円
-0.1%
純利益
921億円
-31.7%
営業利益率
26.1%
オンラインゲーム大手のネクソンが12日に発表した2025年12月期連結決算は、売上収益が前期比 6.5%増 の 4,751億200万円 となり、過去最高を更新した。主力IPである『アラド戦記』や『メイプルストーリー』が堅調に推移したほか、北米・欧州での新作ヒットが増収に寄与した。一方で、利益面では前期に計上した為替差益の反落や新作の広告宣伝費増が響き、純利益は 31.7%減 の 920億5,200万円 と大幅な減益となった。

業績のポイント
2025年12月期の業績は、主力タイトルの「垂直・水平展開」を掲げたIP成長戦略が実を結び、売上高は過去最高の 4,751億200万円(前期比 +6.5%)を達成した。営業利益については、新作開発に伴う人件費や広告宣伝費の増加、さらに『メイプルストーリー』関連のロイヤリティ費用増などが重荷となり、1,240億1,200万円(同 -0.1%)とほぼ横ばいで着地した。
特筆すべきは純利益の大きな変動で、親会社株主に帰属する当期利益は 920億5,200万円(同 -31.7%)へと沈んだ。これは前期に発生した多額の為替差益が、当期は円高局面の影響により為替差損へ転じたことが主因である。実態としての事業収益力は維持されているものの、外貨建て資産を多く保有する同社特有の財務構造が、最終利益の振れ幅を大きくする形となった。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 4,462億円 | 4,751億円 | +6.5% |
| 営業利益 | 1,241億円 | 1,240億円 | -0.1% |
| 税引前利益 | 1,959億円 | 1,404億円 | -28.3% |
| 当期利益 | 1,348億円 | 920億円 | -31.7% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
地域別の業績では、主要市場である韓国と、急成長を見せる北米・欧州のコントラストが鮮明となった。韓国セグメントは売上収益 4,006億5,700万円(前期比 3.0%減)となり、微減となった。これは『アラド戦記モバイル』の減収が影響したものの、PC版『メイプルストーリー』の大規模アップデート成功により、屋台骨としての安定感は維持している。
一方、北米セグメントは売上収益 281億2,500万円(同 59.7%増)、その他地域(欧州・アジア等)は 390億3,700万円(同 477.1%増)と爆発的な伸びを記録した。10月にグローバルリリースした新作『ARC Raiders』が、発売2ヶ月足らずで累計販売本数1,000万本を突破する大ヒットとなったことが最大の要因だ。これにより、長年の課題であった韓国・中国依存の収益構造からの脱却に一歩踏み出した形となる。
| 地域 | 売上収益 | 前期比 | セグメント利益/損失 |
|---|---|---|---|
| 韓国 | 4,006億円 | △3.0% | 1,329億円 |
| 北米 | 281億円 | +59.7% | 7億円(前年赤字) |
| 中国 | 17億円 | △32.3% | △1億円 |
| 日本 | 55億円 | △10.0% | △40億円 |
| その他 | 390億円 | +477.1% | △94億円 |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 韓国 | 4,007億円 | 84% | 1,329億円 | 33.2% |
| 北米 | 281億円 | 6% | 7億円 | 2.5% |
| その他 | 390億円 | 8% | -9,463百万円 | -24.2% |
財務状況と資本政策
資産合計は前期末比 1,534億円増 の 1兆4,101億8,800万円 となり、自己資本比率は 75.0%(前期末 81.1%)と依然として極めて高い財務健全性を保持している。現金及び現金同等物は、営業活動によるキャッシュ・フローが 1,718億円(前期比 +70.2%)と好調だったことを背景に、期末残高で 4,988億6,800万円 まで積み上がった。
株主還元については、積極的な姿勢を一段と強めている。2025年12月期の年間配当は、前期の22.5円から倍増となる 45円 とした。さらに、2026年2月12日の取締役会において、発行済株式総数の約4.4%に相当する 3,648万7,500株の自己株式消却 を決定した。資本効率の向上と機動的な株主還元を通じて、ROE(自己資本利益率)の改善を目指す方針を明確にしている。
通期見通しと戦略トピック
2026年12月期の通期予想については、ゲーム市場の不確実性を考慮し公表を控えたが、第1四半期(1-3月期)の予想については、売上収益で最大 44.0%増 の 1,640億円、営業利益で最大 46.9%増 の 611億円 と、極めて強気なレンジを開示した。
戦略面では「垂直・水平展開」をさらに加速させる。特に、既存の人気IPを異なるプラットフォームや地域へ展開する「ハイパー・ローカライゼーション」戦略に注力する。2026年には中国での『アラド戦記モバイル』の再活性化や、複数の大型新作投入を予定しており、グローバルパブリッシャーとしての地位を盤石にする構えだ。
| 2026年12月期Q1予想 | レンジ下限 | レンジ上限 | 前年同期比(上限) |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1,504億円 | 1,640億円 | +44.0% |
| 営業利益 | 511億円 | 611億円 | +46.9% |
| 純利益 | 409億円 | 484億円 | +84.4% |
リスクと課題
同社が直面する主なリスクは以下の通りである。
- 為替変動リスク: 収益の大部分を外貨で計上しており、急速な円高は円建ての業績を押し下げる要因となる。
- 新作開発の不確実性: 大規模な開発投資を行っているが、ユーザーの嗜好変化により期待通りの収益が得られないリスクがある。
- 地政学・規制リスク: 中国市場におけるゲームライセンス(版号)発行状況や、各国のプラットフォーム規制の変化が事業に影響を及ぼす可能性がある。
ネクソンの2025年12月期決算は、表面上の純利益こそ大幅減益ですが、中身は非常に「攻め」の姿勢が感じられる内容です。特に、長年の課題であった「韓国・中国への収益依存」に対し、北米・欧州での新作ヒットという明確な解を出した点は高く評価できます。
- 強み: 主力IP(メイプル、アラド)の長寿命化に成功しており、キャッシュ創出力が極めて高い。その資金を還元と新作開発へ大胆に振り向けている。
- 注目: 次期Q1の増収増益予想が非常に強気であり、市場予想を上回る成長への自信が伺える。
- 懸念: 営業利益率がわずかに低下(27.8%→26.1%)しており、新作ヒットの裏でマーケティングコストやプラットフォーム手数料の負担が増加傾向にある点は注視が必要です。
投資家にとっては、利益の振れ幅(為替影響)を許容できるのであれば、資本政策(増配・消却)と成長性の両面で魅力的な決算と言えそうです。
