りそなHD・2026年3月期Q3、純利益31%増の2,221億円——国内金利上昇で貸出利回り改善、通期目標を上方修正
売上高
9,656億円
+19.3%
金融費用控除後
5,977億円
+15.9%
営業利益
3,125億円
+31.6%
純利益
2,221億円
+31.3%
通期予想
2,500億円
営業利益率
32.4%
りそなホールディングスが発表した2026年3月期第3四半期決算は、本業の儲けを示す経常利益が前年同期比 31.6%増 の 3,125億円 と大幅な増益を記録しました。日本銀行の政策変更に伴う国内金利の上昇を受け、貸出金利回りと預金金利の差である「利ざや」が拡大したことが収益を強力に押し上げています。好調な進捗を踏まえ、同社は通期の最終利益目標を従来の2,400億円から 2,500億円 へと上方修正し、配当予想も増額するなど、株主還元への積極姿勢を鮮明にしています。
業績のポイント
2026年3月期第3四半期の連結業績は、経常収益が前年同期比 19.3%増 の 9,655億円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同 31.3%増 の 2,221億円 となりました。この大幅増益の主因は、国内の金利環境の変化を背景とした「資金利益」の急増にあります。具体的には、貸出金利息などの運用収益が 5,891億円(前年同期比+34.1%)と大きく伸び、預金利息などの調達コスト上昇を十分に吸収しました。
銀行の本業の収益力を示す連結業務粗利益は 5,976億円 となり、前年同期から 823億円 の上積みを果たしています。特に国内預貸金利益が 2,996億円(前年同期比+421億円)と、リテール(個人・中小企業)に強みを持つ同社のビジネスモデルが金利上昇局面で真価を発揮した形です。また、人件費や物件費を含む経費は 3,434億円(前年同期比+4.4%)と増加傾向にあるものの、収益の伸びがこれを大きく上回ったため、実質業務純益は 2,543億円(同+35.8%)と過去最高水準のペースで推移しています。
投資家にとって注目すべき指標である株主資本ROE(自己資本利益率)は 12.25% に達し、前年同期から 2.34ポイント 向上しました。これは中期経営計画で掲げる目標水準を大きく上回る推移であり、資本効率の劇的な改善が進んでいることを示唆しています。良好な資金利益の拡大に加え、株式売却損益などの臨時損益もプラスに寄与し、盤石な決算内容となりました。
業績推移(通期)
セグメント別動向
りそなグループのセグメント別業績では、個人部門と法人部門の両輪が力強く成長しました。特に個人部門は、住宅ローンや投資信託などの預り資産ビジネスが堅調に推移し、与信費用控除後の業務純益は 1,242億円(前年同期比+26.9%)と大幅な伸びを見せています。これは、金利上昇に伴う利ざや改善に加え、新NISA制度の浸透による投資信託等の販売手数料が下支えした結果です。
法人部門においても、中小企業向けの貸出金残高が着実に増加し、実質業務純益は 1,873億円(同+7.4%)と増益を確保しました。資金需要の回復に加え、企業のDX支援や事業承継といったソリューションビジネスの拡大が、役務取引等利益(手数料収入)の安定に寄与しています。一方で、市場部門は米国金利の高止まりや国内金利の乱高下により、有価証券運用において 559億円 の粗損失を計上したものの、前年同期の 744億円 の赤字からは改善しており、全体への影響を限定的なものにとどめています。
| 報告セグメント | 業務粗利益 | 実質業務純益 | 前年同期比(利益) |
|---|---|---|---|
| 個人部門 | 3,045億円 | 1,274億円 | +31.0% |
| 法人部門 | 3,516億円 | 1,873億円 | +7.4% |
| 市場部門 | △559億円 | △599億円 | (赤字縮小) |
| 合計 | 5,999億円 | 2,566億円 | +36.7% |
※「合計」はその他部門・調整額を含む数値。
| セグメント | 収益(控除後) | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 個人部門 | 3,046億円 | 51% | 1,275億円 | 41.8% |
| 法人部門 | 3,517億円 | 59% | 1,873億円 | 53.2% |
| 市場部門 | -55,904百万円 | -9% | -59,911百万円 | — |
※ セグメント収益は金融費用控除後ベース(収益合計のグロス値とは異なります)
財務状況と資本政策
連結総資産は、前年度末比で約2,000億円増加し、77兆5,781億円 となりました。資産の中核をなす貸出金は、住宅ローンや中小企業向け貸出が伸び、46兆1,021億円(前年度末比+3.5%)と着実に積み上がっています。一方で預金残高は 62兆6,749億円 となり、前年度末の 63兆4,184億円 からは微減しましたが、低コストな個人預金が中心である構造に変化はなく、金利上昇局面における調達優位性を維持しています。
資本政策においては、株主への還元強化を明確に打ち出しています。今回の決算発表に合わせ、2026年3月期の年間配当予想を前回予想から維持し、前期実績の 25円 から 4円 増配となる 29.00円 を計画しています。純資産は 2兆9,357億円 に増加し、自己資本比率は 3.8%(前期末比+0.3ポイント)に改善しました。「金利のある世界」への回帰 を好機と捉え、増益分をしっかりと配当や資本の厚みに反映させる経営判断が示されています。
通期見通しの上方修正
第3四半期までの利益進捗率が通期目標に対して非常に高い水準となったことから、同社は通期の連結業績目標を上方修正しました。親会社株主に帰属する当期純利益の目標を、期初予想から100億円引き上げ、2,500億円(前期比+17.2%)としています。
| 項目 | 前回予想 | 今回修正目標 | 前期実績 |
|---|---|---|---|
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 2,400億円 | 2,500億円 | 2,133億円 |
| 1株当たり当期純利益 | --- | 109.93円 | 92.26円 |
この修正は、主に 貸出金利回りの上昇が想定を上回るペースで進んでいること を反映したものです。また、厳格な与信管理により、与信費用(貸倒れに備える費用)が低位で安定していることも利益の上振れに寄与する見通しです。
リスクと課題
業績は極めて好調ですが、会社側は外部環境の不確実性について注視を続けています。主なリスク要因として以下の項目が挙げられます。
- 金利ボラティリティの拡大: 国内外の金融政策の変更に伴う金利の急激な変動は、国債などの有価証券ポートフォリオに評価損をもたらすリスクがあります。
- 景気後退による与信費用の増加: インフレや円安、エネルギー価格の上昇が中小企業の経営を圧迫した場合、現在は低水準にある与信費用が増大する懸念があります。
- コスト構造の硬直化: 銀行業界全体で加速するDX投資やシステム費用の増加、さらにインフレに伴う人件費の上昇が、中長期的な利益率を押し下げる要因となります。
これらのリスクに対し、同社はリテール基盤のさらなる強化と、非金利収益(手数料収入)の多様化を進めることで、耐性の強い収益構造の構築を目指す方針です。
今回の決算は、まさに「金利上昇の恩恵を最も受ける銀行」としての姿を象徴しています。特に国内預貸金利回差(利ざや)が 0.95%(前年同期比+0.14ポイント)まで拡大したことは、預金構造が強固なりそなにとって強力な追い風となっています。
注目すべきは、純利益の通期目標に対する進捗率が 88.8%(2,221億円 / 2,500億円)に達している点です。上方修正後の目標値も保守的と言えるほど進捗が早く、第4四半期での更なる上振れや、来期に向けた一段の増配期待を投資家に抱かせる内容です。
就職活動中の学生にとっても、同社が「DXや共創」を掲げる一方で、伝統的な商業銀行業務の収益性が劇的に改善している点は、今後の成長投資の余力(「攻め」の原資)として理解しておくべき重要なポイントでしょう。地銀再編やデジタルバンクの台頭といった競争環境の中で、圧倒的な国内顧客基盤を持つ強みが、今の経済環境に完璧に合致しています。
