ローツェ・2026年2月期Q3、売上高5.9%増の944億円——台湾向け需要が倍増、M&A関連費用響き営業益は8%減
売上高
945億円
+5.9%
通期予想
1,282億円
営業利益
235億円
-8.1%
通期予想
303億円
純利益
175億円
-11.4%
通期予想
235億円
営業利益率
24.9%
半導体搬送装置大手のローツェが発表した2026年2月期第3四半期決算は、売上高が前年同期比 5.9%増 の 944億8,300万円 と増収を確保した一方で、営業利益は 8.1%減 の 235億3,200万円 となった。生成AI向け先端デバイスの投資を背景に 台湾の主要顧客(TSMC)向け販売が急増 したものの、前期に実施した海外子会社の連結化に伴うのれん償却費の増加などが利益を押し下げる要因となった。本業の受注環境は堅調を維持しており、通期予想は据え置いている。
業績のポイント
当第3四半期累計期間の業績は、売上高が 944億8,300万円(前年同期比 5.9%増)と伸長した。世界的な生成AIの普及を背景に、データセンター向け高性能デバイスへの投資が高水準で推移し、同社の主力である半導体搬送装置の需要を牽引した。特に地域別では 台湾向けの売上比率が前年同期の8.8%から17.6%へと倍増 しており、最先端プロセスへの投資意欲が旺盛な主要顧客との取引が拡大したことが収益の柱となった。
一方で、利益面では 営業利益が235億3,200万円(同8.1%減)、純利益が 174億6,500万円(同 11.4%減)と減益を余儀なくされた。この主な要因は、2024年6月に連結化した米Nanoverse Technologies社などの影響による販管費の増加である。特に のれん償却額 が 23億1,500万円(前年同期は9億円)と大幅に増加したことに加え、為替相場の変動による営業外での為替差損の計上(約 9億5,300万円)も経常利益を押し下げる結果となった。ただし、これは成長に向けたM&Aに伴う会計上の処理や外部要因が主であり、事業の競争力が低下したものではないと分析される。
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力である「半導体・FPD関連装置事業」は、売上高 940億1,400万円(前年同期比 6.0%増)、セグメント利益 243億6,600万円(同 7.7%減)となった。生成AI向けの先端ロジックやメモリ、アドバンスドパッケージ向けの設備投資が追い風となった。一方で、スマートフォンやPCなど民生機器向けの需要回復は遅れており、市場全体では分野ごとに明暗が分かれる状況が続いている。特に顧客別の販売実績では、世界最大のファウンドリである TSMC(台湾積体電路製造)向けが165億8,800万円 に達し、前年同期の 78億2,000万円 から大幅な伸びを見せた。
「ライフサイエンス事業」は、売上高 4億6,900万円(前年同期比 7.3%減)、セグメント損失 2億2,400万円(前年同期は5,300万円の損失)となった。創薬支援や細胞培養関連の装置を展開しているが、先行投資段階にあり、当期も子会社化したジェノスタッフ社の影響などで損失が拡大した。会社全体に占める売上比率は 0.5% と限定的だが、次なる成長の柱として育成を続けている。
| セグメント名 | 売上高 | 前年同期比 | 営業利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 半導体・FPD関連 | 94,014 | +6.0% | 24,366 | △7.7% |
| ライフサイエンス | 469 | △7.3% | △224 | — |
| 調整額(全社等) | — | — | △609 | — |
| 連結合計 | 94,483 | +5.9% | 23,532 | △8.1% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 半導体・FPD関連装置事業 | 940億円 | 100% | 244億円 | 25.9% |
| ライフサイエンス事業 | 5億円 | 1% | -224百万円 | -47.8% |
財務状況と資本政策
2025年11月末時点の総資産は、前期末比 50億4,200万円 減の 1,826億9,500万円 となった。棚卸資産の圧縮( 41億2,700万円 減)が進んだほか、M&Aに伴うのれんの償却も資産減少の要因となった。負債面では、借入金の返済( 65億1,400万円 減)を進めたことで、自己資本比率は前期末の 62.8% から 68.2% へと向上し、財務基盤の健全性は一段と高まっている。
資本政策においては、機動的な株主還元と資本効率の向上を目的に、累計で 49億9,900万円 の 自己株式取得を実施 した。また、2024年9月1日付で実施した 1株につき10株の株式分割 により、投資家層の拡大を図っている。期末配当予想については、分割後の基準で 17.00円 を据え置いており、通年での安定的な還元姿勢を維持する方針だ。
通期見通し
2026年2月期の通期連結業績予想については、期初からの計画を据え置いた。売上高は前期比 3.0%増、純利益は同 0.6%減 とほぼ横ばいの着地を見込む。第3四半期時点での売上高進捗率は約 73.7%、営業利益進捗率は約 77.5% と、概ね計画通りに推移している。足元の 受注残高は482億6,200万円 と高水準を維持しており、第4四半期以降も先端半導体向けの出荷が堅調に推移する見通しだ。
| 項目 | 前回予想 | 今回予想(修正なし) | 前期実績 | 対前期増減率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 128,190 | 128,190 | 124,402 | +3.0% |
| 営業利益 | 30,345 | 30,345 | 32,013 | △5.2% |
| 経常利益 | 30,618 | 30,618 | 35,422 | △13.6% |
| 当期純利益 | 23,499 | 23,499 | 23,639 | △0.6% |
リスクと課題
今後の経営環境における主な不透明要因として、以下の点が挙げられる。
- 為替変動リスク: 海外売上高比率が高いため、円高進行は円建ての収益を押し下げる要因となる。今期も為替差損が発生しており、注視が必要である。
- 中国市場の動向: 地域別売上高で最大(34,541百万円)を占める中国経済の回復の兆しが見えないことが懸念材料となっている。
- 民生機器の需要低迷: スマートフォンやPC向けの需要回復が遅れており、AI以外の半導体市場の停滞が長期化するリスクがある。
- 米国の通商政策: 半導体製造装置に対する輸出規制など、地政学リスクがサプライチェーンや顧客の投資判断に影響を与える可能性がある。
ローツェの今回の決算は、見かけ上の「減益」以上に本業の強さが際立つ内容です。
- TSMC向け売上の急拡大: 台湾向けの売上が前年同期比で倍増している点は、同社が最先端の「AI半導体」エコシステムに深く食い込んでいる証左です。TSMCの先端プロセス投資の恩恵を直接受けている点は、投資家にとって大きな安心材料でしょう。
- 利益減少の質: 営業利益の減少は、主にM&Aに伴うのれん償却費という「キャッシュアウトを伴わない費用」の増加や為替の影響です。本業の収益力を示す売上総利益率は改善傾向にあり、受注残も厚いことから、ネガティブに捉える必要は少ないと感じます。
- 自己株買いのスピード感: 49億円規模の自己株買いを速やかに実施しており、資本効率を重視する経営姿勢が明確です。株式分割後の流動性向上も相まって、株主還元への意識は高いと言えます。
注目すべきは、次の通期計画で「のれん償却が一巡した後の利益成長」をどう描くかでしょう。現在の積極的なR&DとM&Aが実を結べば、来期以降の利益跳ね上がりが期待できる局面です。
