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株式会社SUBARU の会社詳細
株式会社SUBARU
SUBARU
2026年3月期 通期

SUBARU・2026年3月期通期、営業利益9割減の401億円——BEV投資と環境規制対応が重荷も1,500億円の自社株買い発表

SUBARU
自動車業界
BEV投資
大幅減益
自社株買い
株主還元
環境規制
フォレスター
V字回復
通期1年間の確定値(前年比)

売上高

4.8兆円

+2.1%

通期予想

5.2兆円

進捗率92%

営業利益

401億円

-90.1%

通期予想

1,500億円

進捗率27%

純利益

908億円

-73.1%

通期予想

1,300億円

進捗率70%

営業利益率

0.8%

SUBARUが15日に発表した2026年3月期連結決算(IFRS)は、売上収益が前期比 2.1%増4兆7,849億円 となった一方、営業利益は同 90.1%減401億円 と大幅な減益を記録した。国内工場におけるBEV(電気自動車)生産ラインの整備に伴う一時的な稼働停止や、米国の追加関税、さらには環境規制クレジット関連費用の計上が利益を大きく押し下げた。厳しい決算内容となったが、同社はあわせて発行済株式の11.2%にあたる総額1,500億円の自社株買いを発表し、資本効率の向上と株主還元を重視する姿勢を鮮明にしている。

業績のポイント

2026年3月期は、売上高こそ微増を確保したものの、利益面で極めて厳しい局面を迎えた一年となった。売上収益は 4兆7,849億円(前年比 +2.1%)と、販売台数の減少や円高の影響を価格構成の改善で補い、過去最高水準を維持した。しかし、営業利益は 401億円(同 △90.1%)と、前期の 4,053億円 から激減した。この大幅な利益圧縮の背景には、外部環境の変化と将来に向けた先行投資という二つの側面がある。

具体的には、米国での追加関税影響に加え、次世代の成長の柱となるBEV自社生産に向けた国内工場のライン改修に伴う生産台数の減少(前年比7.7万台減)が響いた。さらに、環境規制への対応コストとして「環境規制クレジット」関連費用やBEV関連の先行費用を計上したことも、利益を大きく削る要因となった。親会社の所有者に帰属する当期利益も 908億円(同 △73.1%)に留まったが、これは税金費用の減少などが下支えした結果であり、本業の収益性回復が急務となっている。

指標(連結)2025年3月期実績2026年3月期実績前年同期比
売上収益4兆6,857億円4兆7,849億円+2.1%
営業利益4,053億円401億円△90.1%
税引前利益4,485億円1,074億円△76.0%
当期利益3,380億円908億円△73.1%

業績推移(通期)

売上高営業利益

セグメント別動向

主力である自動車事業は、売上収益が 4兆6,383億円(前年比 +1.5%)と底堅く推移した一方、セグメント利益は 320億円(同 △92.4%)と深刻な減益に見舞われた。主力の「フォレスター」などの販売は堅調だったが、国内工場のBEV生産ライン立ち上げに向けた一時停止が響き、世界販売台数は 89.6万台(同 4.3%減)に減少した。利益面では、これに加えて為替の円高影響や、BEV関連費用、米国での追加関税が重なり、収益構造が一時的に悪化した格好だ。

一方で、航空宇宙事業は回復基調が鮮明となっている。売上収益は 1,416億円(前年比 +27.0%)と大幅に伸長し、セグメント利益は 35億円(前期は 196億円の損失)と黒字転換を果たした。民間機事業において、ボーイング機向けなどの「中央翼」の納入数が増加したことが寄与しており、自動車事業が苦戦する中で全社の業績を下支えする形となった。その他の事業についても、売上・利益ともに堅実な推移を見せている。

セグメント売上収益前年比セグメント利益前年比
自動車4兆6,383億円+1.5%320億円△92.4%
航空宇宙1,416億円+27.0%35億円黒字転換
その他49億円△3.7%36億円△1.9%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
自動車4.6兆円97%321億円0.7%
航空宇宙1,417億円3%35億円2.5%
その他50億円0%36億円73.0%

財務状況と資本政策

期末時点の総資産は、設備投資の進展に伴う有形固定資産の増加や、新車在庫の積み増しを反映した棚卸資産の増加により、前期末比 4,041億円増5兆4,923億円 となった。キャッシュフロー面では、営業活動によるキャッシュフローが 3,582億円の収入 を確保したものの、税引前利益の減少に伴い前期比では 1,339億円の減少 となった。投資活動には 1,146億円 を投じており、主にBEV関連の設備投資を継続している。

特筆すべきは、株主還元の強化である。2026年3月期の年間配当は 115.5円(前期比0.5円増)を維持した上で、新たに総額1,500億円を上限とする自社株買い(発行済株式の11.2%)の実施を決定した。これは、BEVシフトに伴う利益の一時的な落ち込みに対し、強固な財務基盤(親会社所有者持分比率 50.6%)を背景に資本効率を改善し、投資家の期待に応える経営判断を下したものといえる。取得した自己株式は全数消却する予定であり、1株当たり価値の向上を図る方針だ。

通期見通し

2027年3月期の通期業績予想について、同社は売上収益 5兆2,000億円(前期比 +8.7%)、営業利益 1,500億円(同 +273.9%)と、V字回復を見込んでいる。生産ラインの工事が一段落し、北米を中心とした主力車種の供給が正常化することに加え、為替前提を1ドル= 155円(前期実績150円)と円安方向に設定したことが収益を押し上げる計画だ。

ただし、外部環境には不透明感が残る。米国市場における金利の高止まりやインフレによる需要減退リスク、他社との販売競争の激化、さらには原材料価格や物流費の高騰が懸念材料として挙げられている。同社は「SUBARU 2025方針」に基づき、ICE(内燃機関)車の磨き上げとBEVの展開加速を並行して進めることで、持続的な成長を目指す考えだ。

項目2026年3月期実績2027年3月期予想増減率
売上収益4兆7,849億円5兆2,000億円+8.7%
営業利益401億円1,500億円+273.9%
税引前利益1,074億円1,800億円+67.5%
親会社株主純利益908億円1,300億円+43.1%

リスクと課題

今後の経営課題として、以下の3点が重視されている。

  • 電動化シフトへの対応: 国内工場のBEV専用ラインの立ち上げを計画通り進め、投資コストをいかに早期に回収できるかが焦点となる。
  • 環境規制クレジットへの依存低減: 欧米での厳格な燃費・排出ガス規制への対応コストが利益を圧迫しており、自社製BEVの早期投入による規制対応力の強化が不可欠である。
  • 地政学・貿易リスクへの対応: 米国市場への依存度が高い同社にとって、追加関税措置や通商政策の変化は収益を大きく左右する不確定要素であり、機動的な生産・販売体制の構築が求められている。
AIアナリストの視点

今回の決算で最も注目すべきは、営業利益が9割減少するという衝撃的な数字の裏にある、経営陣の「攻め」の姿勢です。

利益激減の主因がBEV(電気自動車)生産に向けた「工場の一時停止」と「規制クレジット費用」という将来への必要経費であるため、経営サイドはこれを「一時的な後退」と位置づけています。その証左が、利益が激減している中で発表された1,500億円という大規模な自社株買いです。

発行済株式の11%を超える取得枠は異例の規模であり、株価の下支えだけでなく、「2027年3月期以降の利益回復に強い自信がある」というメッセージと受け取れます。投資家にとっては、今期の低迷を「BEVシフトへの産みの苦しみ」として許容できるか、あるいは来期のV字回復予想の実現性をどう評価するかが判断の分かれ目となるでしょう。

就活生の視点では、同社がいよいよICE(内燃機関)からBEVへと本格的に舵を切った歴史的な転換点に立ち会っていると言えます。航空宇宙事業の黒字化も、事業ポートフォリオの安定化に寄与しており、同社の技術力の幅広さを示すポジティブな材料です。