SUBARU・2026年3月期Q3、営業利益82%減の662億円——米国関税の影響拡大で通期予想を下方修正
売上高
3.5兆円
-0.5%
通期予想
4.8兆円
営業利益
663億円
-82.0%
通期予想
1,300億円
純利益
831億円
-73.8%
通期予想
1,250億円
営業利益率
1.9%
株式会社SUBARUが6日に発表した2026年3月期第3四半期(2025年4月〜12月)の連結決算は、本業の儲けを示す営業利益が前年同期比 82.0%減 の 662億円 と大幅な減益を記録しました。米国市場における追加関税の影響拡大や諸費用の増加が利益を大きく圧迫し、売上高も販売台数の減少により 3兆5,189億円 (同 0.5%減 )と微減にとどまりました。これを受け、同社は通期の営業利益予想を従来比 700億円 引き下げ、厳しい経営環境を反映した形となっています。
業績のポイント
当第3四半期の業績は、主力市場である北米での逆風が鮮明となる結果となりました。売上収益は 3兆5,189億円 (前年同期比 0.5%減 )とほぼ横ばいでしたが、利益面では営業利益が 662億円 (同 82.0%減 )、親会社の所有者に帰属する四半期利益が 830億円 (同 73.8%減 )と急縮小しました。特に第3四半期(10-12月)の3ヶ月間においては、最終損益が赤字に転落するなど、足元の環境悪化が深刻化しています。
大幅減益の最大の要因は、米国の追加関税によるコスト増が当初の想定を超えて拡大したことです。これに加え、将来の電動化に向けた研究開発費の増加や、国内でのEV自社生産に向けた工場改修に伴う生産台数の減少も響きました。為替レートが前年同期の 152円/$ から 148円/$ へと円高方向に振れたことも、輸出比率の高い同社にとっては約 173億円 の減収要因として作用しました。
| 項目 | 2025年3月期 Q3 (累計) | 2026年3月期 Q3 (累計) | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 3兆5,363億円 | 3兆5,189億円 | △0.5% |
| 営業利益 | 3,691億円 | 662億円 | △82.0% |
| 税引前利益 | 4,260億円 | 1,189億円 | △72.1% |
| 四半期利益 | 3,174億円 | 830億円 | △73.8% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
自動車事業は、売上収益 3兆4,192億円 (前年同期比 1.1%減 )、セグメント利益 580億円 (同 84.3%減 )と苦戦を強いられました。世界販売台数は合計 67.6万台 (同 4.5%減 )となり、特に米国市場では「フォレスター」の新型投入効果で販売自体は底堅かったものの、生産台数の減少が供給の制約となりました。利益面では前述の関税影響の拡大に加え、インフレに伴う諸経費の増大が利益率を押し下げる要因となっています。
一方で、航空宇宙事業は明るい兆しを見せています。売上収益は 959億円 (前年同期比 26.0%増 )と大幅に伸長し、セグメント利益も前年の赤字から 32億円 の黒字へと転換しました。ボーイング社向けの中央翼納入数が増加したことが寄与しており、民間機需要の回復が業績を下支えしています。その他の事業についても不動産賃貸などが安定的に推移し、 44億円 の利益を確保しました。
| セグメント | 売上収益 | 前年比 | セグメント利益 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 自動車 | 3兆4,192億円 | △1.1% | 580億円 | △84.3% |
| 航空宇宙 | 959億円 | +26.0% | 32億円 | 黒字転換 |
| その他 | 37億円 | △2.8% | 44億円 | △3.9% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 自動車 | 3.4兆円 | 97% | 581億円 | 1.7% |
| 航空宇宙 | 960億円 | 3% | 32億円 | 3.4% |
通期見通しの下方修正
同社は今回の決算発表に合わせ、2026年3月期の通期業績予想を下方修正しました。売上高こそ車両価格の改定などで従来予想から 2,200億円 引き上げましたが、利益面では営業利益を 1,300億円 (前回発表比 35.0%減 )へと大幅に減額しました。これは、米国での追加関税影響が通期でさらに重くのしかかることを見越した保守的な経営判断によるものです。
通期の想定為替レートは、足元の実勢を反映して 1ドル=150円 (前回公表145円)に見直されています。円安方向への修正は利益の押し上げ要因となりますが、それを打ち消すほどの関税コストと、将来成長に向けた投資継続が利益を圧迫する見通しです。就職活動中の学生にとっても、同社が「現在の稼ぎ」を削ってでも「将来のEV生産体制」への投資を優先している姿勢は、長期的な戦略を読み解く上で重要なポイントと言えるでしょう。
| 項目 | 前回発表予想 | 今回修正予想 | 前期実績 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 4兆5,800億円 | 4兆8,000億円 | 4兆6,857億円 |
| 営業利益 | 2,000億円 | 1,300億円 | 4,053億円 |
| 当期利益 | 1,600億円 | 1,250億円 | 3,380億円 |
財務状況と資本政策
総資産は、前連結会計年度末に比べ 1,520億円 増加し 5兆2,402億円 となりました。有形固定資産が 921億円 増加しており、EV化に向けた設備投資が着実に進んでいることを示しています。キャッシュフロー面では、営業活動により 2,022億円 の資金を創出しましたが、設備投資や自己株式の取得などに資金を充当した結果、現金及び現金同等物は期末時点で 8,578億円 となっています。
株主還元については、厳しい利益環境ながらも配当方針を維持し、年間配当は前期と同額の 115円 を予定しています。また、資本効率の向上を目指し、第3四半期までに約 500億円 の自己株式取得を実施しました。2026年1月には、取得した自己株式のうち 1,572万株 (発行済株式総数の2.1%)を消却しており、株主価値の希薄化防止とROEの改善に向けた強い意志が窺えます。
リスクと課題
今後の経営において最も注視すべきは、外部環境の不確実性です。特に以下の要因が継続的なリスクとして挙げられています。
- 米国通商政策の動向: 追加関税の影響が想定以上に拡大しており、利益構造へのインパクトが非常に大きい点。
- EV移行への投資負担: 国内工場のEV対応工事に伴う一時的な生産停止や、多額の研究開発費が短中期的にはキャッシュを圧迫するリスク。
- 為替変動リスク: 輸出比率が高いため、米ドル/円相場の急激な変動が業績に直結しやすい構造。
- 原材料・物流費: 世界的なインフレに伴う諸経費の上昇が、自動車事業の採算性を損なう懸念。
今回の決算で最も注目すべきは、売上の維持に対して営業利益が 8割以上も吹き飛んだ 衝撃的な減益幅です。その背景にある「米国の追加関税」は、SUBARUのように米国への輸出依存度が高い企業にとって致命的な外部リスクであることを改めて浮き彫りにしました。
一方で、航空宇宙セグメントが黒字化したことは好材料ですが、全体への寄与度はまだ限定的です。投資家視点では、現在の株価にこの減益がどこまで織り込まれているか、また配当維持と自社株消却という「株主への誠実さ」を市場がどう評価するかが焦点となります。
就活生の皆さんにとっては、目先の赤字や減益に惑わされず、同社が国内生産拠点(群馬など)をEV専用ラインへ作り替えている「産みの苦しみ」の最中にあるという文脈を理解することが重要です。この投資が完了した後の競争力が、次世代のSUBARUを決定付けることになるでしょう。
