自動車大手7社・2026年3月期決算、米国関税とEV見直しで減益相次ぐもスズキが利益率首位
2026年3月期の自動車大手7社決算は、売上高でトヨタ自動車が初の50兆円を突破するなど堅調さを見せたものの、利益面では極めて激しい明暗が分かれました。米国追加関税の影響や新興国の伸び、EV戦略見直しに伴う1.4兆円超の巨額損失計上など、各社の地域構造やポートフォリオが業績の差を決定づけています。
今期の総括
米国関税とEV見直しで大減益、地域と事業の分散が明暗分かつ
業界全体の動き
2026年3月期の自動車大手7社は、売上高が堅調に推移した一方で、利益面では全体として大幅な減益傾向に陥りました。
| 会社 | 売上高 前年比 | 営業利益 前年比 | 主な要因 |
|---|---|---|---|
| トヨタ自動車 | +5.5% | -21.5% | 米国関税と未来投資の増加 |
| 本田技研工業 | +0.5% | 赤字転落 | EV戦略見直しで巨額損失 |
| 日産自動車 | -4.9% | -16.9% | 販売減少と資産の減損損失 |
| スズキ | +8.0% | -3.1% | インド市場の需要増加 |
| マツダ | -2.0% | -72.3% | 米国関税の直接的影響 |
| SUBARU | +2.1% | -90.1% | 工場稼働停止と関税負担 |
| 三菱自動車工業 | +3.9% | -45.6% | コスト高と地政学リスク |
売上高は7社中5社が増収を確保し、トヨタ自動車が連結売上高50兆6,850億円(前年比+5.5%)と過去最高を更新しました。しかし、利益面ではスズキを除く全社が大幅な営業減益または赤字に追い込まれました。
利益圧迫の主因は、米国における1.3兆円超の関税影響や、北米・中国でのEV需要変化に伴う評価損です。さらに為替追い風の沈静化や研究開発費の増加が重なり、業界全体の平均営業利益率は2.9%まで低下しました。
売上高ランキング
売上高 前年同期比
勝者と敗者
営業利益率9.9%を叩き出したスズキが好業績を収めた一方、本田技研工業(ホンダ)は巨額のEV関連損失により4,143億円の営業赤字に沈み明暗が最も鮮明な期となりました。
- スズキ: 営業利益6,229億円(前年比-3.1%)。売上高6兆2,930億円(前年比+8%)で利益率は業界首位の9.9%。
- トヨタ自動車: 営業利益3兆7,662億円(前年比-21.5%)。米関税1.38兆円や未来投資2.03兆円が響くも利益額で圧倒。
- 本田技研工業: 営業利益-4,143億円(前年は1兆2,134億円の黒字)。EV計画見直しで1兆4,536億円の減損等を計上。
スズキの強さは、主力のインド市場における圧倒的なシェアと高収益性にあります。米国市場への依存度が低いため関税政策の痛手を回避でき、高い収益性を維持しました。
対照的にホンダは、北米や中国での環境変化を受けてEV関連投資の減損を一括処理しました。四輪事業が14兆1,669億円の売上で営業利益率-10%と大きく足を引っ張る結果となりました。
- 好調
- スズキ
- 苦戦
- 本田技研工業


営業利益ランキング
営業利益率ランキング
注目の動き・戦略比較
各社は足元の減益を甘受しつつも、将来の生き残りをかけた先行投資と構造改革に舵を切っています。
- トヨタ自動車: 諸経費を2兆300億円増やし、人財や次世代モビリティ開発への投資を大幅に加速。
- 本田技研工業: 過去のEV投資計画を劇的に見直しつつ、営業利益率18.2%を稼ぐ二輪事業で全社を支える構造。
- SUBARU: 国内工場でのBEV生産ライン整備に伴う稼働停止を受け入れ、中長期の電動化へ先行投資。
- 日産自動車: 自動車事業が2,400億円規模の営業赤字も、利益率22.6%の販売金融事業が黒字を後押し。
業績が冷え込む局面においても、各社は投資の手を緩めていません。SUBARUは営業利益が90.1%減となりながらも大規模な投資方針を崩さず、一時的な後退と位置づけています。
また、本業の四輪事業が苦戦する中で、ホンダの二輪事業や日産自動車の販売金融事業など、事業の分散効果が倒木を防ぐ要として機能しています。
純利益 前年同期比
業界共通のリスク
自動車業界が直面するリスクは、単なる需要変動を超えて通商政策への脆弱性と技術移行期の過渡期リスクに集約されます。
- 米国通商政策・追加関税: マツダ(マイナス1,549億円)やトヨタ自動車(マイナス1.38兆円)の利益を直接的に圧迫。
- EV市場の変調と規制緩和: 北米での補助金見直しによりホンダが1.4兆円超、日産自動車がリース車両減損を計上。
- 新興勢力との競争激化: 中国メーカーの台頭により、三菱自動車工業などアジア・新興国主力のメーカーも収益低下。
輸出比率が高く北米依存度が高いメーカーほど、保護主義的な関税政策の打撃を直撃する構造が浮き彫りになりました。
また、過度なEVシフトの修正を余儀なくされたことで、マルチパフォーマンストレイン(ハイブリッドや二輪含む)を持つ企業の優位性が再評価されています。
就活生・転職希望者へ
採用・キャリアの観点では、企業の表面上の知名度だけでなく四輪以外の稼ぐ力や事業ポートフォリオの柔軟性を見極めることが欠かせません。
- ポートフォリオの分散度: 四輪だけでなく、高収益な二輪を持つスズキやホンダ、金融事業が強い日産自動車は不況耐性がある。
- 現在の減益の質: SUBARUやトヨタ自動車の減益は将来投資によるものであり、中長期的な成長の種まきと解釈できる。
- 得意な地域の見極め: 北米依存が高い企業と、インドや東南アジアに強い企業(スズキ、三菱自動車工業)でリスクの質が異なる。
自動車業界は今まさに100年に1度の変革期にあり、単に車を造って売るだけのモデルからモビリティソリューションへの移行期です。
就職や転職を検討する際は、短期的な赤字や減益に惑わされず、その原因が「将来に向けた積極的な投資や膿出し」であるかを見極める視点が極めて重要になります。
タグ#自動車#決算比較#トヨタ自動車#本田技研工業#日産自動車#スズキ#マツダ#SUBARU#三菱自動車工業#EV投資#米国関税
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