乗用車メーカー7社・2026年3月期通期——売上50兆円のトヨタも減益、北米関税とEV投資が利益を削る
今期の総括
米国関税とEV投資が利益を削る「変革の踊り場」
自動車業界は今、激変の嵐の中にあります。トヨタが売上50兆円を突破する歴史的快挙を成し遂げた一方、7社中5社が大幅な減益となりました。主な要因は、1兆円を超える米国関税の直撃と、EVシフトに伴う巨額の先行投資です。生き残りをかけた「攻めの赤字」と「守りの減益」が交錯した決算となりました。
業界全体の動き
この一年、業界を揺らした共通テーマは4点です。
- 米国関税の直撃: トヨタで1.3兆円、マツダで1,500億円超の利益を削りました。
- EV戦略の痛みを伴う転換: ホンダがEV関連で1.4兆円の損失を出し、戦略を練り直しています。
- インド市場の独り勝ち: 中国が苦戦する中、インドに強いスズキが売上を伸ばしました。
- 未来への先行投資: 各社とも人件費や次世代開発に巨額を投じ、一時的に利益を圧迫しています。
売上高ランキング
トヨタが前人未到の50兆円を突破。規模の経済を活かすトヨタと、地域特化のスズキが売上を伸ばしています。
売上高 前年同期比
全体的に増収基調ですが、中国で苦戦する日産や北米依存のマツダは売上高が減少に転じています。
純利益 前年同期比
スズキを除く全社が大幅な最終減益。特にホンダの赤字転落は、EV戦略の大きな軌道修正を物語っています。
勝者と敗者
今回の「勝者」は、驚異的な稼ぐ力を見せたスズキです。
- スズキ: 営業利益率は業界トップの9.9%。インド市場を武器に、唯一純利益で前年超えを果たしました。
対する「敗者」は、巨額赤字に沈んだ本田技研工業(ホンダ)です。
- 本田技研工業: 営業損益は4,143億円の赤字。EV計画の中止に伴う「膿出し」が響きました。
トヨタも売上は50兆円を超えましたが、関税影響で営業利益は21.5%減と苦しんでいます。
勝者
スズキ
苦戦
本田技研工業
営業利益ランキング
多くの企業が関税や投資で利益を減らす中、スズキが効率的な経営でトヨタに次ぐ2位に食い込みました。
営業利益率ランキング
スズキの9.9%が際立ちます。大手でも7%台が限界の中、インド特化の収益モデルが光る結果となりました。
注目の動き・戦略比較
各社、生き残りに向けて特徴的な動きを見せています。
- 日産自動車: 本業の赤字を、ローンの利息などの販売金融が支える綱渡りの経営です。
- SUBARU: 利益が9割減る中でも1,500億円の自社株買いを決定。株主を重視しています。
- 三菱自動車: 新型車「デスティネーター」が好調。得意の東南アジア以外での種まきを急ぎます。
- マツダ: 米国関税で利益が7割減るも、次期は新型車で利益3倍を目指す強気の姿勢です。
業界共通のリスク
- 地政学リスク: 米国の政策一つで、数千億円単位の利益が吹き飛ぶ脆さがあります。
- 中国勢の台頭: 安価な中国製EVとの競争で、日産の中国販売は5.8%減と苦戦中です。
- ソフトウェア開発: 車の価値がソフトに移る中、開発費の膨張が止まりません。
就活生・転職希望者へ
今は「利益の数字」だけで会社を選んではいけません。ホンダやSUBARUの減益は、未来の工場を作るための前向きな足踏みです。一方、スズキのような特定の国で圧倒的シェアを持つ強みは、不況下で最大の武器になります。自分が「変革の苦しみ」を支えたいか、「安定した稼ぎ」を広げたいかで選ぶべきです。
