自動車大手7社・2026年3月期 第3四半期――米関税の直撃とEV戦略の転換。スズキが利益率首位、日産・マツダは赤字転落の明暗
今期の総括
米関税とEV失速が直撃し、地域・事業構造の差が利益の明暗を分けた
2026年3月期第3四半期は、米国の関税政策が各社の利益を直撃しました。トヨタやSUBARUが巨額のコスト増に苦しむ一方、インド市場に強いスズキが営業利益率9.5%で首位に立つなど、地域戦略の差が鮮明です。日産やマツダが赤字に転落し、業界全体で「稼ぐ力の再編」が加速する極めて厳しい局面を迎えています。
業界全体の動き
この期間、日本の自動車業界を揺るがした共通テーマは以下の4点です。
- 米国の追加関税による巨額減益: 米国の関税政策により、トヨタが1.2兆円、マツダが1,192億円のマイナス影響を受けました。
- EV戦略の劇的な見直し: ホンダは北米の補助金廃止を受け、EV販売目標を下方修正。2,793億円の「膿出し」損失を出しました。
- インド市場の圧倒的な存在感: 世界的な減速感の中で、インド市場に強いスズキだけが過去最高水準の売上高を記録し、独歩高を見せています。
- 為替と原材料高のダブルパンチ: 円安メリットを打ち消すほどの原材料価格高騰が、各社の利益を押し下げる要因となりました。
売上高ランキング
トヨタが38兆円超えで圧倒的首位を独走し、2位ホンダに大差をつけています。上位勢と下位勢の規模格差がさらに拡大する傾向にあります。
売上高 前年同期比
トヨタとスズキだけがプラス成長を維持。他の5社は前年割れとなっており、市場シェアの二極化が鮮明になっています。
純利益 前年同期比
全社がマイナス成長という異例の事態です。特にSUBARUやホンダの落ち込みは、関税や戦略転換に伴う一時的な損失の大きさを物語っています。
勝者と敗者:スズキの驚異的な「稼ぐ力」と日産の苦境
今期の「勝者」は間違いなくスズキです。営業利益率は9.5%に達し、巨頭トヨタの8.4%を上回りました。インドでの税制改正を商機に変え、売上高を前年比5.4%増の4兆5,166億円まで伸ばした経営判断が光ります。
対照的な「敗者」は日産自動車です。営業利益は101億円の赤字に転落しました。販売台数が前年比5.8%減と落ち込み、販売金融の利益で辛うじて支える構造です。フリーキャッシュフローも約6,900億円のマイナスとなっており、資金繰りを含めた抜本的な立て直しが急務です。
勝者
スズキ
苦戦
日産自動車
営業利益ランキング
トヨタの巨額利益が際立つ一方、日産とマツダが赤字に転落。北米依存度や販売不振の差が、営業利益の数字に容赦なく表れています。
営業利益率ランキング
スズキが9.5%で首位に立ち、効率的な経営を証明。日産・マツダのマイナス圏転落は、本業の収益構造に深刻な課題があることを示唆します。
注目の動き・戦略比較
各社は生き残りをかけ、異なるアプローチを見せています。
- トヨタ自動車: 巨額減益ながら年間配当を95円に増額。本業のキャッシュ創出力への自信を投資家にアピールしました。
- 本田技研工業: 四輪の不振を、過去最高益の二輪事業がカバー。不採算のEV開発を早期に中止する、迅速な損切りを断行しました。
- SUBARU: 米国市場への依存が裏目に出ましたが、航空宇宙事業が黒字化。多角化によるリスク分散の兆しが見え始めています。
- 三菱自動車: 中国勢との価格競争で利益は激減しましたが、新型車投入で「底打ち」を強調。ASEAN市場での再起を狙います。
業界共通のリスク
全社が警戒すべき共通リスクは以下の通りです。
- 地政学リスクの常態化: 米国の関税や補助金政策は、自社の努力で制御不能な最大のリスクです。
- 中国メーカーの台頭: アジア市場を中心に、安価で高性能な中国製EVとの価格競争がさらに激化しています。
- EVシフトの停滞と投資負担: 普及の遅れにより、巨額の設備投資を回収できない「投資の空振り」リスクが高まっています。
就活生・転職希望者へ:安定のトヨタ・スズキ、変革のホンダ
現在の自動車業界は、これまでの「完成車を作れば売れる」時代が終わりました。
- 安定と還元を求めるなら: 圧倒的な資金力のトヨタ、インドで最強の牙城を持つスズキが有力です。
- 変化の最前線で働くなら: 痛みを伴う構造改革を断行したホンダや、工場改修を進めるSUBARUは、変革期の面白さがあるでしょう。
- 注視すべき点: 日産やマツダは厳しい収益環境にあり、コスト削減が続く可能性が高いです。自身のキャリアに求める「安定」と「挑戦」を慎重に見極める必要があります。
