本田技研工業株式会社 の会社詳細
本田技研工業株式会社
本田技研工業
2026年3月期 第3四半期

ホンダ・2026年3月期Q3、営業利益48%減の5,915億円——四輪が赤字転落、EV戦略見直しで巨額損失計上

本田技研工業
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大幅減益
四輪赤字
二輪好調
EV戦略見直し
自社株消却
下方修正
構造改革
トランプ関税リスク
第3四半期累計期初から9ヶ月間の累計値(前年同期比)

売上高

16.0兆円

-2.2%

通期予想

21.1兆円

進捗率76%

営業利益

5,915億円

-48.1%

通期予想

5,500億円

進捗率108%

純利益

4,654億円

-42.2%

通期予想

3,000億円

進捗率155%

営業利益率

3.7%

本田技研工業(ホンダ)が10日に発表した2026年3月期第3四半期決算は、売上収益が前年同期比 2.2%減15兆9,756億円、営業利益が同 48.1%減5,915億円 と大幅な減益となった。世界的な EV市場の減速 や米国での政策転換を見据え、特定のEVモデル開発中止などの 「戦略的撤退」に伴う損失 を一括計上したことが利益を大きく押し下げた。好調な二輪事業が収益を支える一方で、四輪事業が四半期ベースで赤字に転落するなど、電動化戦略の転換を象徴する決算となっている。

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本田技研工業 2026年3月期 第3四半期決算

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本田技研工業 2026年3月期 第3四半期決算

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業績のポイント

ホンダの当第3四半期累計期間は、主力である四輪事業の苦戦が鮮明となり、利益面で極めて厳しい結果となった。売上収益は 15兆9,756億円(前年同期比 2.2%減)と微減にとどまったものの、営業利益は 5,915億円(同 48.1%減)とほぼ半減した。税引前利益も 7,717億円(同 37.0%減)、親会社株主に帰属する四半期利益は 4,654億円(同 42.2%減)に沈んでいる。

大幅減益の主因は、北米や欧州でのEV販売の伸び悩みを受け、将来の収益性が見込めない特定のEV開発計画を中止・変更したことにある。これにより 3,000億円規模の関連損失(開発中止に伴う除却損や減損損失など)を四輪事業に計上した。一方で二輪事業はアジアや南米を中心に堅調な需要を維持し、過去最高水準の利益率を確保してグループ全体の底支えを担ったが、四輪の巨額損失を補うには至らなかった。

項目2025年3月期 Q3実績2026年3月期 Q3実績前年同期比
売上収益16兆3,287億円15兆9,756億円△2.2%
営業利益1兆1,399億円5,915億円△48.1%
税引前利益1兆2,255億円7,717億円△37.0%
四半期利益8,052億円4,654億円△42.2%

業績推移(通期)

売上高営業利益|当期累計通期予想残

セグメント別動向

セグメント別では、二輪事業と四輪事業の明暗が極端に分かれる形となった。二輪事業 は売上収益が 2兆9,336億円(前年同期比 8.4%増)、営業利益が 5,465億円(同 8.9%増)と、営業利益率 18.6% を叩き出す極めて高い収益性を維持している。インドやブラジルといった新興国市場での堅調な需要に加え、適正な価格転嫁が功を奏し、グループの「稼ぎ頭」としての存在感を強めている。

対照的に 四輪事業 は、売上収益が 10兆4,348億円(前年同期比 4.3%減)に対し、営業利益は 1,664億円の赤字(前年同期は4,026億円の黒字)へと転落した。北米市場でのEV市場環境の変化や、中国における現地メーカーとの競争激化が販売台数を押し下げた。さらに、後述するEV戦略の見直しに関連して、売上原価や研究開発費、固定資産の減損などとして巨額の損失を計上したことが赤字転落の直接的な要因となった。

金融サービス事業 は売上収益 2兆5,578億円(同 3.9%減)、営業利益 2,180億円(同 11.0%減)となった。リース車両の残価下落リスクや、金利上昇に伴う資金調達コストの増加が利益を圧迫している。パワープロダクツ事業他も営業損失を計上しており、二輪事業一本でグループの赤字を辛うじて防いでいる状況が浮き彫りとなっている。

セグメント売上収益前年同期比営業利益前年同期比
二輪事業2兆9,336億円+8.4%5,465億円+8.9%
四輪事業10兆4,348億円△4.3%▲1,664億円赤字転落
金融サービス2兆5,578億円△3.9%2,180億円△11.0%
その他2,906億円△3.5%▲65億円継続赤字
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
二輪事業2.9兆円18%5,466億円18.6%
四輪事業10.4兆円65%-166,481百万円-1.6%
金融サービス事業2.6兆円16%2,180億円8.5%

戦略トピック:EV戦略の現実路線への転換

今回の決算で最も注目すべきは、ホンダが掲げてきた 「2040年までの脱エンジン車」目標の軌道修正 を示唆する経営判断を下した点だ。北米や欧州でのEV普及ペース鈍化に加え、米国におけるトランプ次期政権(発表時点)による税制優遇の見直しや排出規制の緩和を見越し、従来の商品投入計画を抜本的に見直した。具体的には、2030年時点のEV販売比率目標を従来の30%から 20%へと下方修正 した。

この戦略修正に伴い、開発途上であった一部のEVモデルの開発中止や、他社とのアライアンスに基づく共同開発モデルの製造終了を決定。これらに関わる 引当金計上や資産の除却・減損 として、今期中に莫大な費用を処理した。これは短期的な利益を犠牲にしてでも、将来の負の遺産を早期に整理し、ハイブリッド車(HEV)へのリソース再配分など 「現実的な成長路線」 へ舵を切る経営の意志表明といえる。

財務状況と資本政策

財務状態については、総資産が前連結会計年度末から約2兆円増加し、32兆8,495億円 となった。オペレーティング・リース資産の増加や、為替換算による資産の膨らみが寄与している。一方で親会社所有者帰属持分比率は 37.9% と、前期末の40.1%から低下した。これは積極的な株主還元やEV戦略見直しに伴う利益の押し下げが影響している。

株主還元策としては、業績の急減速にもかかわらず 「増配維持」と「大規模な自社株消却」 を断行する。配当は年間 70円(前期実績68円)の予想を据え置いた。また、2026年2月27日付で発行済株式総数の 14.1% に相当する 7億4,700万株の自己株式を消却 することを決定した。キャッシュフロー計算書上では、営業活動によるキャッシュ・フローが 6,777億円(前年同期は1,533億円)と大幅に改善しており、投資活動を抑制しつつ資本効率の改善に注力する姿勢を鮮明にしている。

通期見通し

ホンダは、当第3四半期の進捗およびEV戦略見直しに伴う損失計上を踏まえ、2026年3月期の通期業績予想を下方修正した。営業利益は期初予想(公表なし・前期実績1兆3,819億円)から大幅に低い 5,500億円(前期比 54.7%減)となる見込みだ。これは二輪事業の利益のみでグループ全体の存続を支えるような厳しい着地を想定した数字となっている。

項目今回予想前期実績対前期増減率
売上収益21兆1,000億円21兆6,816億円△2.7%
営業利益5,500億円1兆3,819億円△54.7%
税引前利益620,000億円1兆3,178億円△52.9%
当期純利益3,000億円8,367億円△64.1%

修正の背景には、四輪事業における一過性の損失だけでなく、北米でのインセンティブ(販売奨励金)の増加や、アジア市場での売価ダウン、関税影響など不透明な外部環境が継続することが挙げられている。会社側は「経営の機動性を高めるための膿出し」と位置付けているが、V字回復に向けた具体的な四輪再建策が来期以降の焦点となる。

リスクと課題

ホンダが直面する経営課題は、外部環境の激変に集約される。特に以下の点が今後のリスク要因として挙げられる。

  • 米国政策リスク: 新政権によるEV税制優遇の廃止や、追加関税の導入による北米ビジネスの収益性悪化。
  • 中国市場の構造変化: 現地メーカーの低価格EV攻勢によるシェア低下の固定化。
  • 原材料・物流コスト: 為替の円高方向への変動や、地政学リスクに伴う物流停滞によるコスト増。
  • 製品品質問題: 短信内で言及された「エアバッグインフレーター」に関連する損失の拡大可能性。

投資家や就活生にとっては、同社が「二輪の安定収益」を武器に「四輪の構造改革」をいかにスピード感を持って完遂できるかが、長期的な企業価値を見極める重要なポイントとなるだろう。

AIアナリストの視点

今回の決算は、ホンダにとって「負の遺産の清算」という極めて強い意志を感じる内容です。数値上は四輪事業が赤字に転落し、営業利益が半減するという衝撃的なものですが、その中身の多くはEV戦略の現実的な見直しに伴う一過性の費用処理です。

特筆すべきは、四輪がこれほど苦戦してもなお、二輪事業が約19%という驚異的な営業利益率を叩き出し、グループを黒字圏に留めている点です。これは他社(トヨタや日産)にはないホンダ独自の強固なポートフォリオです。また、発行済株式の14%を消却するという決定は、PBR改善に対する強いコミットメントであり、市場との対話を重視する姿勢が伺えます。

今後の注目点は、この「膿出し」によって身軽になった四輪事業が、好調なハイブリッド車や次世代モデルでいかに反転攻勢に出られるかです。就活生の視点では、単なる「車メーカー」ではなく、経営の柔軟性と世界最強の二輪事業を持つ「モビリティ企業」としての底力が見えた決算と言えるかもしれません。