スギホールディングス・2026年2月期Q3、売上高18%増の7,501億円——I&H買収で急成長、売上1兆円の大台視野に
売上高
7,501億円
+18.2%
通期予想
1.0兆円
営業利益
341億円
+18.7%
通期予想
490億円
純利益
357億円
+87.1%
通期予想
442億円
営業利益率
4.6%
スギホールディングスが発表した2026年2月期第3四半期決算は、連結売上高が前年同期比 18.2%増 の 7,501億円 、営業利益が 18.7%増 の 341億円 と大幅な増収増益となりました。2024年9月に実施した I&H株式会社の連結化 が収益を大きく押し上げたほか、既存店の改装やインバウンド需要の獲得が堅調に推移しました。親会社株主に帰属する四半期純利益は、税金費用の調整もあり前年同期比 87.1%増 の 356億円 と急増し、通期での売上高1兆円突破が確実視されています。
業績のポイント
当第3四半期累計期間の業績は、M&Aによる事業規模の拡大と既存事業の底堅さが際立つ結果となりました。売上高は 7,501億円 (前年比 +18.2% )、営業利益は 341億円 (同 +18.7% )と、ドラッグストア業界内でも高い成長率を維持しています。物価高による消費者の節約志向は続いているものの、食品や日用雑貨の販売が堅調だったことに加え、 インバウンド需要の積極的な取り込み が寄与しました。
利益面では、新規出店や改装に伴う人件費・設備投資負担が増加したものの、増収効果がこれを上回りました。特に純利益が 356億円 (前年比 +87.1% )と大幅に伸びた背景には、収益性の向上に加え、繰延税金資産の計上等による法人税等調整額のマイナス計上が大きく影響しています。これにより、通期予想に対する進捗も極めて順調に推移しています。
| 項目 | 前第3四半期累計 | 当第3四半期累計 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 6,346億円 | 7,501億円 | +18.2% |
| EBITDA | 415億円 | 490億円 | +18.2% |
| 営業利益 | 287億円 | 341億円 | +18.7% |
| 経常利益 | 303億円 | 347億円 | +14.5% |
| 四半期純利益 | 190億円 | 356億円 | +87.1% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
同社は「ドラッグストア・調剤事業」の単一セグメントですが、その内訳は「物販領域」と「調剤領域」の両輪で成長を加速させています。物販領域では、関東・中部・関西エリアでのドミナント出店を強化し、エリアニーズに合わせた店舗改装を 192店舗 実施しました。DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した個客マーケティングや、専門性を活かしたカウンセリング販売が奏功し、ヘルス&ビューティケア関連の売上が伸長しています。
調剤領域では、高齢化に伴う処方せん応需枚数の増加を背景に、売上基盤の拡充が進みました。特に2025年3月に吸収合併を予定している I&H株式会社の店舗網(72店舗)が加わったこと で、グループ全体の調剤対応力が大幅に向上しています。調剤室や待合室の拡張・改装を進めるとともに、アプリを活用した「調剤DX」を推進することで、業務効率化と患者の利便性向上を同時に実現しています。
当第3四半期末の店舗数は、新規出店 84店舗 、閉店 38店舗 に加え、M&Aによる取得を合わせて合計 2,303店舗 となりました。この圧倒的な店舗網を背景に、地域密着型の「かかりつけ薬局」としての機能を強化しており、競合他社との差別化を図っています。調剤売上の構成比が高まることで、ドラッグストア業界全体の課題である 粗利益率の維持・向上 に取り組む姿勢が鮮明となっています。
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| ドラッグストア・調剤事業 | 7,501億円 | 100% | 341億円 | 4.6% |
財務状況と資本政策
資産合計は前期末比 1,207億円増 の 6,158億円 と大幅に拡大しました。これは主にI&H社の連結化に伴う資産の増加や、新規投資のための長期借入金の実施によるものです。流動資産では現金及び預金が 1,080億円 (前期末比 +552億円 )と厚くなっており、機動的な投資が可能な状態を維持しています。
負債合計は 3,353億円 (前期末比 +909億円 )に増加しましたが、これは主に 新規投資に伴う長期借入金 の増加によるものです。一方で、純資産も利益剰余金の積み上げにより 2,805億円 まで増加しました。自己資本比率は前期末の 50.6% から 45.6% へ低下しましたが、積極的なM&Aや設備投資を優先した結果であり、財務の健全性は依然として一定の水準を保っています。
配当については、直近の予想に変更はなく、中間配当 15円 、期末配当 20円 の年間 35円 を予定しています。成長投資を優先しつつも、安定的な株主還元を継続する方針を堅持しています。
リスクと課題
今後の懸念材料としては、以下の要因が挙げられます。
- 物価高騰による消費抑制: 生活防衛意識の高まりにより、利益率の高い嗜好品から低利益率の生活必需品へと購買がシフトするリスクがあります。
- コスト増の影響: 最低賃金の引き上げに伴う人件費の上昇や、新規店舗・改装にかかる建築資材・光熱費の高騰が利益を圧迫する要因となります。
- M&A後のPMI(統合プロセス): 買収したI&H社とのシステム統合や企業文化の融和、オペレーションの効率化が計画通りに進むかが、中長期的な収益性の鍵を握ります。
- 薬価・調剤報酬改定: 政府の政策による薬価の引き下げや調剤報酬体系の変化は、調剤部門の採算性に直接的な影響を及ぼす不確実な外部要因です。
通期見通し
2026年2月期の通期連結業績予想について、同社は期初からの予想を据え置いています。しかし、第3四半期時点での進捗は非常に好調であり、売上高 1兆円 の大台突破が目前に迫っています。I&H社の収益寄与がフルに反映されることで、次期以降もさらなる成長が期待されるフェーズにあります。
| 項目 | 前回予想 | 当期実績(Q3累計) | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆50億円 | 7,501億円 | 1兆50億円 | 74.6% |
| 営業利益 | 490億円 | 341億円 | 490億円 | 69.7% |
| 純利益 | 442億円 | 356億円 | 442億円 | 80.7% |
今回の決算で最も注目すべきは、 I&H株式会社の買収による「規模の経済」の実現 です。ドラッグストア業界が飽和状態にある中で、調剤に強みを持つ中堅企業の連結化は、処方せん応需という安定収益源の確保に直結しています。
- 特筆すべき点: 純利益が前年比でほぼ倍増している点は目を引きますが、これには税効果会計の影響(繰延税金資産の計上)が含まれているため、実力値としては営業利益の 18.7%増 を評価すべきでしょう。
- 今後の焦点: 2025年3月に予定されているスギ薬局によるI&Hの吸収合併です。組織を一本化することで、物流や仕入れの最適化がどこまで進み、利益率を押し上げられるかが投資家にとっての次のチェックポイントになります。
- 成長性: 売上高1兆円規模に到達することで、仕入れ交渉力の強化やプライベートブランド(PB)の開発力向上が期待されます。ウエルシアやツルハなど上位勢との競争において、存在感が一段と高まった決算と言えます。
