東北電力・2026年3月期Q3、売上高10%減の1兆7,272億円——女川原発再稼働も販売減響き減収減益
売上高
1.7兆円
-10.1%
通期予想
2.5兆円
営業利益
1,832億円
-8.7%
通期予想
2,200億円
純利益
1,157億円
-9.5%
通期予想
1,350億円
営業利益率
10.6%
東北電力が30日に発表した2026年3月期第3四半期(2025年4〜12月)連結決算は、売上高が前年同期比 10.1%減 の 1兆7,272億円 、親会社株主に帰属する四半期純利益は 9.5%減 の 1,157億円 となった。女川原子力発電所第2号機の 再稼働 や燃料費調整制度のプラス影響があったものの、販売電力量の減少や連結子会社の異動が響き、前年同期の好調な反動もあり減収減益を余儀なくされた。一方で、財務基盤の回復を背景に年間配当は前期比5円増の 40円 となる見通しを据え置いている。
業績のポイント
2026年3月期第3四半期の業績は、前年同期の記録的な高水準からの反動と、事業構造の変化が色濃く出た内容となった。売上高は 1兆7,272億円 (前年同期比 10.1%減 )、営業利益は 1,831億円 (同 8.7%減 )を計上した。経常利益についても 1,636億円 (同 10.8%減 )と、全ての段階利益でマイナス成長を記録している。
減益の主な要因は、自由化以降の激しい競争による 契約切り替え や、製造業の稼働減に伴う販売電力量の減少にある。また、これまで連結子会社であったユアテックが持分法適用会社へ変更されたことで、売上高の計上額が大幅に減少したことも影響した。一方で、2024年12月に再稼働を果たした 女川原子力発電所第2号機 が収支改善に寄与し始めたほか、燃料価格の下落局面で発生する「燃料費調整制度のタイムラグ影響」が利益の下支えとなった点はポジティブな要素といえる。
| 指標 | 2025年3月期 Q3 | 2026年3月期 Q3 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆9,204億円 | 1兆7,272億円 | △10.1% |
| 営業利益 | 2,007億円 | 1,831億円 | △8.7% |
| 経常利益 | 1,835億円 | 1,636億円 | △10.8% |
| 四半期純利益 | 1,279億円 | 1,157億円 | △9.5% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力の「発電・販売事業」は、売上高が 1兆4,457億円 (前年同期比 8.3%減 )、セグメント利益(経常利益ベース)が 1,780億円 (同 2.6%減 )となった。夏季の高気温による冷房需要の増加はあったものの、電力小売市場での 競争激化 により契約が他社へ流出したことが減収の主因である。供給面では、出水率の向上(99.4%)による水力発電の増加や、原子力の安定稼働が燃料費の抑制に寄与した。
「送配電事業」は、売上高 6,538億円 (同 1.4%減 )、セグメント損失 132億円 (前年同期は139億円の黒字)と 赤字に転落 した。高気温に伴う託送収益の増加があった一方で、需給調整のための電力調達費用(需給調整費)が大幅に増加したことが響いた。卸電力市場価格の変動や調整力の確保コスト上昇が、ネットワーク部門の採算を急速に悪化させている現状が浮き彫りとなっている。
「その他」セグメントについては、売上高が 1,089億円 (同 48.5%減 )と半減した。これは設備工事大手のユアテックが持分法適用会社へ移行したことによる会計上の影響が大きく、実質的な事業規模の縮小を意味するものではない。
| セグメント名 | 売上高 | 前年同期比 | 経常利益/損失 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 発電・販売 | 1兆4,457億円 | △8.3% | 1,780億円 | △2.6% |
| 送配電 | 6,538億円 | △1.4% | △132億円 | — |
| その他 | 1,089億円 | △48.5% | 115億円 | △24.1% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 発電・販売事業 | 1.4兆円 | 84% | 1,781億円 | 12.3% |
| 送配電事業 | 6,538億円 | 38% | -13,294百万円 | -2.0% |
| その他 | 1,089億円 | 6% | 115億円 | 10.6% |
財務状況と資本政策
総資産は前期末比 1,075億円増 の 5兆5,057億円 となった。女川原発に関連する設備投資の進展により「固定資産仮勘定」が増加したことが主な要因である。負債合計は支払債務の減少などにより 4兆3,862億円 と微減しており、純利益の積み上げによって自己資本が充実したことで、財務の健全性は着実に改善している。
自己資本比率は前期末の 18.3% から 19.9% へと 1.6ポイント上昇 した。同社は中長期的な目標として財務基盤の回復を掲げており、20%の大台目前まで回復したことは投資家にとっても安心材料となる。また、利益還元については、第2四半期末の配当を20円(前年同期は15円)に引き上げており、期末配当も 20円 を予定している。これにより、年間配当は前期比5円増の 40円 となり、経営陣の 安定配当への強い意欲 が示されている。
通期見通し
2026年3月期の通期連結業績予想については、前回発表の数値を据え置いた。売上高は前期比 7.4%減 の 2兆4,500億円 、純利益は 26.2%減 の 1,350億円 を見込む。第3四半期時点での純利益進捗率は 85.7% に達しており、通期目標の達成に向けては順調な推移と言える。今後は女川原発2号機の通期での寄与度や、冬場の暖房需要、為替および燃料価格の推移が焦点となる。
| 項目 | 前回予想 | 今回予想(修正なし) | 前期実績(2025/3) |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2兆4,500億円 | 2兆4,500億円 | 2兆6,464億円 |
| 営業利益 | 2,200億円 | 220,000億円 | 2,804億円 |
| 経常利益 | 1,900億円 | 1,900億円 | 2,568億円 |
| 当期純利益 | 1,350億円 | 1,350億円 | 1,828億円 |
リスクと課題
東北電力が今後直面する主なリスクは以下の通りである。
- 原子力発電所の稼働状況: 女川原子力発電所第2号機の安定的な稼働が利益の前提となっている。突発的な停止やメンテナンス延長は燃料費増に直結するリスクがある。
- 需給調整コストの変動: 送配電事業で発生している需給調整費用の増加は、市場価格に左右されやすく、収支を圧迫する不安定要因となっている。
- 競争環境の激化: 首都圏や地元の東北エリアにおける新電力等との 価格競争 により、小売電力量の減少が続く懸念がある。
- マクロ経済の影響: 燃料価格や為替相場の変動は、燃料費調整制度によるタイムラグを伴って収支に影響を与えるため、急激な変動は短期的な利益の振れ幅を大きくする。
今回の決算で最も注目すべきは、女川原子力発電所第2号機の再稼働がようやく数字に寄与し始めた点です。燃料価格の下落と合わせて、火力発電への依存度を下げられる体制が整いつつあります。経常利益は前年同期比でマイナスですが、これは前年が燃料費調整のタイムラグで過大に利益が出ていたことの裏返しであり、実質的な稼ぐ力は回復傾向にあると見てよいでしょう。
一方で懸念されるのは、送配電事業の赤字転落です。エリア内の需要減と、調整力の調達コスト増という構造的な課題に直面しています。ネットワーク部門の収支安定化は、今後の送配電料金制度の運用を含め、全社的な課題となります。
就活生の視点では、単なる「電力会社」から、持分法化したユアテックとの連携やデジタル変革(DX)を通じた 「よりそうnext+PLUS」 という中長期ビジョンの実現に向けた過渡期にある点に注目すべきです。財務体質の改善が進んでいることから、今後は成長投資への資金配分が活発化することが予想されます。
