オンライン証券3社・2027年3月期Q1比較、松井の高利益率とSBIの投資収益が際立つ
2027年3月期第1四半期は、松井証券が活発な株式売買と信用取引を追い風に利益を大きく伸ばしました。SBIはPE投資事業が全体を押し上げ、マネックスは増収でも利益が伸び悩みました。収益源の違いが明暗を分けた四半期です。
今期の総括
収益源の違いが利益差に
業界全体の動き
3社とも市場環境の影響を受けましたが、利益を伸ばす経路は異なりました。松井証券は株式売買と信用取引、SBIはPE投資、マネックスは証券事業の手数料が収益を支えました。
| 会社 | 売上高 前年比 | 営業利益 前年比 | 主な要因 |
|---|---|---|---|
| 松井証券 | 173億円 +51.6% | 88億円 +87.7% | 株式売買活況 |
| マネックス | 218億円 +2.0% | 23億円 -22.4% | デジタル資産低調 |
| SBI | 5,710億円 +28.8% | 2,258億円 +149.9% | PE投資の拡大 |
- 取引活況: 松井証券では株式等委託売買代金が前年同期比112%増となり、四半期ベースで過去最高を記録しました。
- 収益源の多様化: SBIは金融サービスに加え、PE投資事業の利益拡大が連結業績を押し上げました。
- デジタル資産の弱さ: マネックスでは暗号資産取引の減少が響き、デジタルアセット事業の税引前損失が拡大しました。
- 利益の伸びに差: 業界平均の売上高成長率は27.5%ですが、マネックスはこれを下回り、営業利益も前年割れでした。
売上高の業界平均は2,033.7億円、営業利益の平均は789.7億円です。SBIの規模が平均を大きく押し上げる一方、松井証券は小規模ながら高い伸びを示しました。3社の数字は事業構成が異なるため、規模だけでなく収益の源泉と継続性を見極める必要があります。
売上高ランキング
売上高 前年同期比
勝者と敗者
最も好調だったのは、PE投資事業を中心に利益を大きく伸ばしたSBIです。最も苦戦したのは、営業利益が前年を下回ったマネックスでした。ただし、松井証券は利益率の高さと本業の伸びで存在感を示しています。
- SBI: PE投資事業の税引前利益は1,199億円で、前年同期比328.0%増でした。金融サービス事業も税引前利益が59.5%増えています。
- 松井証券: 受入手数料は67.1%増、金融収支は55.0%増でした。費用も17.8%増えましたが、収益の伸びが上回りました。
- マネックス: 証券事業の営業収益は増えた一方、金融収益の減少や費用増、保有銘柄の評価益剥落が利益を圧迫しました。
SBIの強さは、金融サービスだけでなく投資事業も利益を生んだ点にあります。一方、投資収益は市場環境に左右されやすく、今期の高い伸びが続くとは限りません。松井証券は株式取引と信用取引の追い風を受け、営業利益率は業界平均の33.6%を上回りました。マネックスは純利益こそ増えましたが、税引前利益の減少と営業利益の前年割れが課題です。
- 好調
- SBI
- 苦戦
- マネックス

営業利益ランキング
営業利益率ランキング
注目の動き・戦略比較
各社の打ち手には、取引基盤の強化、事業ポートフォリオの拡張、株主還元という違いが表れました。短期の業績だけでなく、相場の変化に耐える収益基盤を築けるかが次の焦点です。
- 松井証券: 顧客向け情報発信に加え、米国株やFXの取引環境改善を進めています。過去最高の売買代金を顧客基盤の拡大につなげられるかが注目されます。
- マネックス: コインチェックと3iQをデジタルアセット事業にまとめ、暗号資産の取引と運用を一体で伸ばす構えです。今期は取引減少などが利益を圧迫しました。
- SBI: 好業績を受け、中間配当予想を株式分割後換算で1株30円に引き上げました。前期実績95円以上を目標とする株主還元方針も示しています。
- 通期見通し: 松井証券とマネックスは相場変動の大きさなどを理由に業績予想を開示していません。マネックスの年間配当予想は30.8円です。
松井証券は個人投資家の取引機会を取り込み、SBIは金融サービスと投資事業を組み合わせています。マネックスはデジタル資産の回復が課題となる一方、事業をまとめて成長を目指します。純利益の伸びにも差が出ており、業界平均の58%に対し、松井証券とSBIは上回り、マネックスは小幅な増加にとどまりました。
純利益 前年同期比
業界共通のリスク
3社の収益には、市場の活況や金利、資産価格の変動が異なる形で影響します。好調な四半期の数字だけで判断せず、収益源ごとの変動幅と費用の動きを確かめる必要があります。
- 相場の反転: 取引が落ち着けば手数料収入が鈍る可能性があります。株式売買代金の拡大が収益を支えた松井証券は、取引活況の変化を受けやすい構造です。
- 金利と信用取引: 金融収支が増えた松井証券では、金利や信用取引残高の変化が収益に影響します。金利上昇が常に同じ幅で利益に結びつくとは限りません。
- 投資収益の振れ: SBIはPE投資事業が利益を大きく押し上げました。投資先の評価や売却環境が変われば、利益の伸びが変動するリスクがあります。
- 暗号資産の市況・制度: 取引量の減少で損失が拡大したマネックスや、赤字が続くSBIの暗号資産事業は、市況や制度変更の影響を受けやすい分野です。
- 費用の増加: 松井証券では取引所関連費用や広告宣伝費などが増え、マネックスでも変動費を含む販管費が利益を圧迫しました。
各社とも通期業績の見通しを一部開示しておらず、四半期の勢いをそのまま年間計画に置き換えるのは難しい状況です。投資家は売上の伸びだけでなく、収益源の偏りや費用の増加にも注目したいところです。就活生や転職希望者にとっても、市況に連動する部門と、事業運営を支える部門の双方を理解することが業界研究の手掛かりになります。
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