株式会社安藤・間 の会社詳細
株式会社安藤・間
安藤・間
2026年3月期 第3四半期

安藤ハザマ・2026年3月期Q3、営業利益7.6%増の206億円——建築の採算向上で通期利益予想を上方修正

安藤ハザマ
ゼネコン
上方修正
増益
建築事業
採算改善
M&A
海外展開
増配
建設業界
第3四半期累計期初から9ヶ月間の累計値(前年同期比)

売上高

3,110億円

+5.1%

通期予想

4,350億円

進捗率72%

営業利益

206億円

+7.6%

通期予想

297億円

進捗率69%

純利益

144億円

-4.4%

通期予想

203億円

進捗率71%

営業利益率

6.6%

安藤・間(安藤ハザマ)が発表した2026年3月期第3四半期決算は、売上高が前年同期比5.1%増3,110億円、営業利益が同7.6%増206億円となった。国内の建設投資が底堅く推移する中、主力である建築事業の採算性が大幅に改善したことが増益に寄与した。同社は建築工事の利益率向上を背景に、通期の各段階利益予想を上方修正した。受注高も前年同期を大きく上回る好調な進捗を見せており、質を重視した受注戦略が実を結び始めている。

業績のポイント

当第3四半期累計期間の業績は、売上高が3,110億円(前年同期比+5.1%)、営業利益が206億円(同+7.6%)と、増収増益を確保した。経常利益も199億円(同+4.7%)と堅調に推移している。一方で、親会社株主に帰属する四半期純利益は144億円(同-4.4%)と微減した。これは前年同期に計上した投資有価証券売却益などの特別利益が減少したことが主な要因であり、本業の稼ぐ力を示す営業利益ベースでは着実な成長を見せている。

建設業界全体で資材価格や労務費の高騰が続く中、同社は厳選受注と徹底した原価管理を推進した。その結果、完成工事総利益率は前年同期の12.8%から14.0%へと大幅に改善している。特に受注面では、建築事業を中心に民間投資を的確に取り込み、グループ全体の受注高は3,453億円(前年同期比+13.2%)と、将来の収益基盤となる繰越高を積み増すことに成功した。

業績推移(通期)

売上高営業利益|当期累計通期予想残

セグメント別動向

主力である建築事業が全体の利益成長を牽引する一方、土木事業も安定した推移を見せている。各セグメントの状況は以下の通り。

建築事業は、完成工事高が1,859億円(前年同期比+2.6%)、セグメント利益が154億円(同+11.1%)と大幅な増益を達成した。民間建設投資の底堅さを背景に、施工が概ね順調に進捗したことに加え、採算性の高い案件が寄与したことで利益率が向上した。受注高も2,866億円(同+25.2%)と極めて好調であり、今後の成長に向けた強い足がかりを築いている。

土木事業は、完成工事高が1,000億円(同+6.0%)、セグメント利益が103億円(同+1.1%)となった。政府による防災・減災関連の投資やインフラ老朽化対策を背景に、手持ち工事の進捗が寄与した。受注面では大型案件の端境期にあたり受注高は586億円(同-22.8%)となったものの、豊富な繰越高を背景に安定した操業を維持している。

セグメント売上高(億円)前年比営業利益(億円)前年比利益率
土木事業1,000+6.0%103+1.1%10.3%
建築事業1,859+2.6%154+11.1%8.3%
グループ事業182+13.2%9+96.0%5.0%
その他69+63.7%5+78.9%7.5%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
土木事業1,000億円32%104億円10.4%
建築事業1,859億円60%154億円8.3%
グループ事業182億円6%9億円5.1%

通期見通し

同社は決算発表に合わせ、2026年3月期の通期連結業績予想を上方修正した。売上高については、連結子会社の進捗が想定を下回ることから4,350億円(前回予想比-60億円)に引き下げた。しかし、利益面では主力の建築事業において工事採算性の向上が見込まれることから、営業利益を297億円(前回予想比+26億円)、純利益を203億円(同+23億円)へとそれぞれ引き上げている。

項目前回予想(A)今回修正(B)増減(B-A)前期実績
売上高4,410億円4,350億円△1.4%4,251億円
営業利益271億円297億円+9.6%352億円
純利益180億円203億円+12.8%264億円

この修正は、厳選受注によるマージンの改善が当初の想定以上に進んでいることを示唆している。通期では前期実績(352億円)に届かない見込みだが、期初時点の慎重な予想からは一転して、回復の兆しが鮮明となっている。

戦略トピック:シンガポール企業の買収による海外展開強化

同社は2026年1月、シンガポールの総合建設会社「QXY Resources Pte. Ltd.」他2社の株式を取得し、子会社化した。QXY社はシンガポールのリニューアル建築分野で豊富な実績と競争優位性を持つ。このM&Aは、同社の中期経営計画に掲げる「海外事業の安定化と基盤強化」を具体化する重要な一手である。

国内市場が資材高や人手不足で不透明感を増す中、経済成長が見込まれる東南アジアでの事業拡大は急務となっている。特にシンガポールは都市再生の需要が旺盛であり、QXY社の持つ現地でのノウハウと、安藤ハザマの技術力を融合させることで、グローバルな収益基盤の構築を目指す構えだ。

財務状況と資本政策

2026年3月期第3四半期末の総資産は3,774億円となり、前期末から54億円増加した。投資有価証券の評価額上昇が押し上げ要因となった。一方、負債は工事未払金の減少などにより110億円減の1,887億円となった。この結果、自己資本比率は前期末の46.0%から49.7%へと大幅に向上しており、財務の健全性はさらに強固となっている。

配当政策については、当期の年間配当を1株当たり80円(中間40円・期末40円)とする予想を維持している。前期実績の70円から10円の増配となる計画だ。同社は株主還元を重視する姿勢を鮮明にしており、業績予想の上方修正により、配当の安定性に対する信頼感が高まっている。

リスクと課題

堅調な決算の一方で、以下のリスク要因が挙げられている。

  • 資材価格・労務費の動向: 高止まりする建設資材価格や、慢性的な人材不足に伴う労務費の上昇は依然として利益を圧迫する要因となっている。同社は原価改善で対応しているが、さらなる高騰には注意が必要である。
  • 大型工事の追加費用リスク: 茨城県東海村での発電所防潮堤工事に関連し、補修費等で約62億円の追加費用発生を見込んでいる。今後、補修計画の確定次第で業績にさらなる影響を与える可能性がある。
  • 海外事業の統合リスク: 新たに子会社化したシンガポール企業との統合(PMI)がスムーズに進むかどうかが、中長期的な海外成長の鍵を握る。
AIアナリストの視点

今回の決算で最も注目すべきは、売上予想を下げつつも利益予想を大幅に引き上げた「利益重視」への鮮明なシフトです。建設業界全体がコストプッシュ圧力に苦しむ中、建築事業の営業利益率を改善させている点は、同社の施工管理能力と選別受注が機能している証左といえます。

また、受注高が前年比13%増と伸びている点も見逃せません。特に建築受注の25%増は、次年度以降の収益の柱として期待が持てます。一方で、東海村の防潮堤工事に関する追加費用(約62億円)のような個別案件のリスクは依然として残っており、これが完全に収束するかが当面の焦点となるでしょう。

戦略的には、シンガポール企業の買収により「国内一本足」からの脱却を加速させています。国内の公共投資が安定しているうちに、いかに海外で自律的な成長モデルを確立できるかが、将来の時価総額向上の分水嶺になると評価します。