業界ダイジェスト
株式会社INPEX の会社詳細
株式会社INPEX
INPEX
2026年12月期 第1四半期

INPEX・2026年12月期Q1、純利益13.4%減の1,094億円——市況下落が響くも、通期予想を上方修正

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INPEX
上方修正
増配
石油・天然ガス
円安メリット
イクシス
エネルギー市況
株主還元
インペックス
第1四半期累計期初から3ヶ月間の累計値(前年同期比)

売上高

5,018億円

-6.5%

通期予想

2.3兆円

進捗率22%

営業利益

2,782億円

-14.1%

通期予想

1.4兆円

進捗率20%

純利益

1,094億円

-13.4%

通期予想

4,500億円

進捗率24%

営業利益率

55.4%

日本最大の石油・天然ガス開発企業であるINPEXは5月13日、2026年12月期第1四半期(1〜3月)の連結決算を発表した。世界的な資源価格の下落が逆風となり、売上収益は前年同期比 6.5%減5,018億円、親会社の所有者に帰属する四半期利益は 13.4%減1,094億円 となった。しかし、足元の中東情勢緊迫化に伴う原油価格の上昇と円安進行を受け、同社は通期の業績予想を上方修正し、株主還元への積極姿勢を改めて鮮明にしている。

業績のポイント

当第1四半期は、エネルギー価格の落ち着きが利益を押し下げる結果となった。主力の海外原油販売価格が1バレル当たり 67.39ドル と前年同期の75.49ドルから 10.7%下落 したことが、収益を直撃している。天然ガス価格も国内で 10.8%下落 するなど、資源高に沸いた前年からの反動が色濃く出た形だ。

一方で、為替レートが1米ドル= 157.00円 と前年同期(152.40円)に比べ約 3.0%の円安 で推移したことが、減収幅を一定程度抑制した。販売数量面では、原油が 2.6%減少 したものの、天然ガスは海外プロジェクトの安定稼働により 3.5%増加 しており、生産体制は堅調を維持している。コスト面では探鉱費の抑制に取り組んだが、売上減少の影響を補うには至らず、営業利益は 14.1%減2,782億円 に留まった。

指標2025年12月期 Q12026年12月期 Q1前年同期比
売上収益5,368億円5,018億円△6.5%
営業利益3,238億円2,782億円△14.1%
税引前利益3,353億円2,913億円△13.1%
四半期利益1,262億円1,094億円△13.4%

業績推移(通期)

売上高営業利益|当期累計通期予想残

セグメント別動向

セグメント別では、稼ぎ頭である「海外石油・天然ガス事業(海外O&G)」のうち、オーストラリアのイクシスプロジェクトが安定した収益源としての存在感を示した。同プロジェクトの売上収益は販売数量の増加により 7.8%増986億円 と増収を確保したが、法人所得税費用の増加等が響き、セグメント利益は 5.2%減703億円 となった。その他の海外プロジェクトも販売価格下落の影響を受け、利益は 351億円 と微減(前年同期比 1.3%減)で着地している。

国内石油・天然ガス事業(国内O&G)は、販売価格の下落が特に深刻な打撃となった。売上収益が 11.0%減579億円 へと落ち込み、セグメント利益は前年同期の113億円から 19億円 へと 82.6%の激減 を記録した。国内でのガス販売単価の下落が利益率を圧迫しており、エネルギー価格の変動に対する脆弱性が露呈した格好だ。

セグメント利益2025年12月期 Q12026年12月期 Q1増減率
国内O&G113億円19億円△82.6%
海外O&G(イクシス)741億円703億円△5.2%
海外O&G(その他)355億円351億円△1.3%
その他(再生可能エネ等)△1億円△14億円
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
国内石油・天然ガス事業579億円12%20億円3.4%
海外石油・天然ガス事業(イクシス)1,045億円21%703億円67.3%
海外石油・天然ガス事業(その他)3,407億円68%351億円10.3%

通期見通しの修正と背景

Q1の実績は減益となったものの、INPEXは2026年12月期通期の連結業績予想を上方修正した。新たな予想では、親会社株主に帰属する当期利益を前回予想の3,300億円から、最大で 4,500億円(従来比 36.4%増)まで引き上げている。この強気な姿勢の背景には、前提となる原油価格(ブレント原油)を1バレル 63.0ドル から 70.0〜83.0ドル へ、為替レートを1ドル 151.0円 から 154.0〜156.0円 へと見直したことがある。

項目前回予想今回修正予想(レンジ)修正率(最大時)
売上収益1兆8,930億円2兆0,040億〜2兆2,910億円+21.0%
営業利益9,570億円1兆0,860億〜1兆3,680億円+42.9%
親会社株主利益3,300億円3,500億〜4,500億円+36.4%

修正後の業績予想は、中東情勢の不確実性を考慮してレンジ形式(幅を持たせた表記)で開示されている。同社はイクシスプロジェクト等の安定操業を前提に、市況の追い風を最大限に享受する構えだ。

財務状況と資本政策

財務体質は極めて強固な状態を維持している。2026年3月末時点の総資産は、石油・ガス資産の積み増しや円安による外貨建て資産の評価増により、前期末比2,842億円増の 8兆194億円 となった。自己資本比率(親会社所有者帰属持分比率)は 61.0% と、製造業の中でも非常に高い水準を保っており、巨額の投資が必要な資源開発ビジネスにおける耐性を備えている。

株主還元については、年間配当予想を1株当たり108円とし、前期実績(100円)から 8円の増配 を行う方針を据え置いた。また、自己株式の取得についても、第1四半期期間中に約 100億円 分を実施しており、総還元性向40%以上を目標とする中計方針に基づき、機動的な還元を継続している。就職活動中の学生にとっても、この安定した財務基盤と高い収益性は大きな魅力と言えるだろう。

リスクと課題

堅調な見通しの一方で、同社が直面するリスクも無視できない。最大の懸念は中東情勢の不透明感であり、これが原油価格の乱高下を招く要因となっている。業績が市況に大きく左右される「市況産業」の特性上、急激な円高への反転や、世界景気後退に伴うエネルギー需要の減退は、上方修正した利益目標の達成を阻むリスク要因となる。

また、脱炭素社会への移行(エネルギー・トランジション)への対応も中長期的な課題だ。決算短信では、再生可能エネルギーや水素・CCS(二酸化炭素回収・貯留)事業を含む「その他」セグメントが依然として 14億円の赤字 を計上している。化石燃料への依存度が高い現状から、いかに収益性を維持しつつクリーンエネルギー企業へと変革できるかが、将来の企業価値を左右する焦点となる。

AIアナリストの視点

INPEXの今決算は、表面上の「Q1減益」という数字よりも、その裏にある「通期の大幅上方修正」に真意があります。1年前の超高水準な市況と比較すれば減益はやむを得ませんが、同社が期初予想を保守的に見積もりすぎていたことが浮き彫りになりました。

特に注目すべきは、原油価格の前提を20ドル近く引き上げた点です。これは現在の地政学リスクが長期化するという見立てを反映しています。投資家目線では、レンジ形式の予想は不透明感とも取れますが、最大で純利益4,500億円という数字は、過去最高益水準に迫る強気なものです。

就活生の視点では、8兆円の資産規模と6割の自己資本比率という「圧倒的な安定感」を確認できる決算です。ただし、赤字が続く再生可能エネルギー部門をいつ黒字化軌道に乗せられるかが、DXやESGを重視する現代のキャリア形成において同社を選ぶ際の見極めポイントになるでしょう。