業界ダイジェスト
株式会社クラレ の会社詳細
株式会社クラレ
クラレ
2026年12月期 第1四半期

クラレ・2026年12月期Q1、売上高3.1%増の2,009億円——主力事業の需要低迷で営業利益は20%減も、機能材料は大幅増益

クラレ
3405
増収減益
ポバール
機能材料
記念配当
自己株消却
構造改革
中東リスク
化学業界
第1四半期累計期初から3ヶ月間の累計値(前年同期比)

売上高

2,009億円

+3.1%

通期予想

8,500億円

進捗率24%

営業利益

149億円

-20.3%

通期予想

700億円

進捗率21%

純利益

78億円

-35.0%

通期予想

400億円

進捗率20%

営業利益率

7.4%

高機能化学大手のクラレが13日に発表した2026年12月期第1四半期決算は、売上高が前年同期比3.1%増2,009億円、営業利益が同20.3%減148億円と、増収減益の結果となりました。主力のビニルアセテート事業において、中東情勢の混乱や世界的な需要低迷を背景とした販売数量の減少と操業度悪化が利益を押し下げました。一方で、円安による為替効果や機能材料セグメントの好調が下支えとなり、通期業績予想および創立100周年記念配当を含む増配計画は据え置いています。

業績のポイント

当第1四半期の連結業績は、売上高が2,009億円(前年同期比+3.1%)と増収を確保したものの、本業の儲けを示す営業利益は148億円(同△20.3%)と、前年を大きく下回る着地となりました。経常利益は137億円(同△22.9%)、親会社株主に帰属する四半期純利益は78億円(同△35.0%)と、利益各段階で厳しい結果となっています。

増収の主な要因は、円安進行に伴う海外売上の円貨換算額の上昇や、一部製品での価格改定が進んだことです。しかし、利益面では主力のビニルアセテート事業で、中東情勢の緊迫化による物流混乱や、欧州・中国を中心とした景気停滞による需要低迷が直撃しました。また、一部事業での操業度悪化による製造コストの上昇が利益を圧迫し、増収分を吸収しきれなかった形です。

項目前年同期実績当期実績増減率
売上高1,948億円2,009億円+3.1%
営業利益186億円148億円△20.3%
経常利益178億円137億円△22.9%
四半期純利益120億円78億円△35.0%

業績推移(通期)

売上高営業利益|当期累計通期予想残

セグメント別動向

各セグメントの動向を見ると、最大利益源であるビニルアセテート事業の苦戦が目立つ一方、機能材料や繊維事業での改善が見られました。

ビニルアセテート事業は、売上高1,019億円(前年同期比+1.5%)、営業利益110億円(同△30.7%)となりました。ポバール樹脂はグローバルな需要低迷で販売数量が減少し、PVBフィルムも欧州・アジアでの競争激化に晒されています。光学用ポバールフィルムのみ、スポーツイベントに向けたテレビ需要やサプライチェーンでの在庫積み増しにより販売が伸びましたが、セグメント全体を牽引するには至りませんでした。

機能材料事業は、売上高528億円(前年同期比+10.5%)、営業利益33億円(同+148.2%)と大幅な増益を記録しました。メタクリル事業で生産能力の縮小といった構造改革を進める中、水処理などに使われる活性炭の需要が底堅く推移し、価格改定も浸透しました。さらに為替のプラス影響が大きく寄与しています。

繊維事業は、売上高139億円(前年同期比+4.0%)、営業利益11億円(前年同期は5億円の赤字)となり、黒字転換を果たしました。不採算だった乾式不織布事業からの撤退に加え、人工皮革「クラリーノ」が靴用途などで需要を回復させたことが寄与しています。

セグメント売上高営業利益利益前年比
ビニルアセテート1,019億円110億円△30.7%
イソプレン215億円28億円+2.4%
機能材料528億円33億円+148.2%
繊維139億円11億円黒字転換
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
ビニルアセテート1,019億円51%110億円10.8%
機能材料528億円26%34億円6.4%
イソプレン215億円11%29億円13.4%

財務状況と資本政策

財務状態については、総資産が前年末比125億円増の1兆3,160億円となりました。棚卸資産や有形固定資産が増加した一方、自己株式の取得により純資産は微減しています。自己資本比率は56.2%と、引き続き高い水準を維持しており、財務の健全性に揺らぎはありません。

資本政策では、株主還元への積極姿勢を明確にしています。2026年3月までに約100億円(582万9千株)の自己株式取得を完了させ、これらを2026年5月29日付で消却することを決定しました。また、配当については創立100周年を記念し、期末配当に10円の記念配当を上乗せする方針です。これにより、年間配当金は前期比10円増の64円(普通配当54円+記念配当10円)となる見通しです。

リスクと課題

今後の経営における懸念事項として、会社側は以下のリスクを挙げています。

  • 中東情勢の緊迫化: 原燃料価格の上昇や物流網の混乱が、化学業界全体のサプライチェーンに深刻な影響を及ぼしています。特に一部調達品での供給制約が発生しており、製造コストの増大が懸念されます。
  • 需要回復の遅れ: 中国の不動産不況長期化や欧州の物価高に伴い、主力のポバール樹脂関連の需要回復が想定より遅れるリスクがあります。
  • 為替変動: 現時点では円安が利益の押し上げ要因となっていますが、急激な円高への反転は海外売上比率の高い同社にとって収益圧迫要因となります。

会社側は、これらの外部環境が不透明であることから、通期の業績予想を据え置いています。今後の情勢変化を注視し、合理的な見通しが可能となった段階で必要に応じて修正を行う方針です。

通期見通し

2026年12月期の通期連結業績予想は、2026年2月に公表した数値を据え置いています。下期以降の需要回復と為替安定を前提に、通期では大幅な増益を見込んでいます。

項目今回予想前期実績増減率
売上高8,500億円8,088億円+5.1%
営業利益700億円588億円+18.9%
当期純利益400億円74億円+435.6%
AIアナリストの視点

クラレのQ1決算は、数字の上では減益となりましたが、内容を精査するとポジティブな側面も見受けられます。

  • 構造改革の成果: 赤字が続いていた繊維事業が不採算事業(不織布)からの撤退を経て黒字化したことや、メタクリル事業の規模縮小による損益改善は、経営の「選択と集中」が実を結びつつある証拠です。
  • セグメントの分散: 主力のビニルアセテートがマクロ環境の影響で落ち込む中、機能材料(活性炭など)が利益を補完する構造が見て取れます。これは特定の製品依存から脱却しつつある良い兆候と言えます。

一方で、Q1時点での営業利益進捗率は通期予想(700億円)に対して約21%に留まっており、通期目標達成には、下期におけるポバール需要の回復と物流混乱の沈静化が不可欠です。投資家としては、Q2以降の操業度回復のペースを注視すべきでしょう。