九州電力・2026年3月期Q3、営業利益45%増の2,163億円——燃料費調整制度の影響などで大幅増益、自己資本比率も改善
売上高
1.6兆円
-3.8%
通期予想
2.3兆円
営業利益
2,163億円
+45.2%
通期予想
2,100億円
純利益
1,611億円
+48.0%
通期予想
1,400億円
営業利益率
13.1%
九州電力の2026年3月期第3四半期累計(4〜12月)連結決算は、売上高が前年同期比3.8%減の1兆6,493億円となった一方、本業の儲けを示す営業利益は同45.2%増の2,163億円と大幅な増益を記録しました。燃料価格の低下に伴う燃料費調整制度のタイムラグ影響などが利益を押し上げ、最終的な純利益も同48.0%増の1,610億円に達しました。財務基盤の健全性を示す自己資本比率も19.2%へと向上しており、収益力の回復が鮮明になっています。
業績のポイント
当第3四半期の連結業績は、減収ながらも大幅な増益を確保する結果となりました。売上高は1兆6,493億円(前年同期比3.8%減)と微減しましたが、これは燃料価格の下落に伴う燃料費調整制度に基づき、電気料金単価が低下したことが主な要因です。一方で、営業利益は2,163億円(同45.2%増)、経常利益は2,154億円(同40.1%増)と、いずれも前年を大きく上回る水準で推移しています。
大幅増益の背景には、燃料価格の変動が料金に反映されるまでの時間差(タイムラグ)が利益側に大きく寄与したことがあります。また、原子力発電所の安定的な稼働が維持されたことも、高価な火力発電の抑制につながり、収益構造の安定化に寄与しました。親会社株主に帰属する四半期純利益は1,610億円(同48.0%増)を計上し、1株当たり純利益も331.55円(前年同期は221.07円)へと大きく改善しています。
| 項目 | 2025年3月期 Q3 | 2026年3月期 Q3 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆7,153億円 | 1兆6,493億円 | △3.8% |
| 営業利益 | 1,489億円 | 2,163億円 | +45.2% |
| 経常利益 | 1,537億円 | 2,154億円 | +40.1% |
| 四半期純利益 | 1,088億円 | 1,610億円 | +48.0% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力である「エネルギーサービス事業」の国内電気事業が全体を牽引しました。特に発電・販売事業のセグメント利益は1,488億円と、前年同期(852億円)から約1.7倍に拡大しました。これは、前述の燃料価格下落に伴うタイムラグ影響が好転したことが最大の要因です。一方、送配電事業の利益は215億円(前年同期比25.1%減)に留まりました。これは、修繕費などの送配電設備に関わる費用の増加が利益を圧迫したためです。
成長領域と位置付ける周辺事業も堅調な推移を見せています。ICTサービス事業は、情報通信案件の受注増やコスト削減努力が奏功し、セグメント利益は59億円(同43.8%増)と高い伸びを示しました。また、海外事業においても持分法投資利益の寄与などにより、118億円(同6.2%増)の利益を確保しています。都市開発事業は不動産売却のタイミング等により34億円(同1.0%減)と横ばい圏内でしたが、セグメント全体として多角化が進んでいます。
| セグメント(利益) | 2025年3月期 Q3 | 2026年3月期 Q3 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 発電・販売事業 | 852億円 | 1,488億円 | +74.5% |
| 送配電事業 | 287億円 | 215億円 | △25.1% |
| 海外事業 | 112億円 | 118億円 | +6.2% |
| その他エネルギー | 215億円 | 235億円 | +9.2% |
| ICTサービス | 41億円 | 59億円 | +43.8% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 発電・販売事業(国内電気) | 1.4兆円 | 82% | 1,488億円 | 11.0% |
| 送配電事業(国内電気) | 5,337億円 | 32% | 215億円 | 4.0% |
| 海外事業 | 27億円 | 0% | 119億円 | 438.1% |
| ICTサービス事業 | 997億円 | 6% | 60億円 | 6.0% |
財務状況と資本政策
財務体質は着実に改善へと向かっています。2025年12月末時点の総資産は5兆8,603億円と、前期末から863億円増加しました。これは主に燃料在庫の積み増しや、設備投資に伴う固定資産の増加によるものです。負債合計は4兆7,014億円と前期末(4兆7,427億円)から減少しており、社債や長期借入金の返済が進んでいます。
純資産は利益の積み上げにより1兆1,588億円(前期末比1,276億円増)に拡大しました。この結果、経営の安定性を示す指標である自己資本比率は、前期末の17.3%から19.2%へと1.9ポイント改善しています。株主還元については、中間配当を1株あたり25円、期末配当予想も25円としており、年間合計50円の配当を維持する方針を堅持しています。優先株式についても、所定の配当を安定的に実施する計画です。
通期見通し
2026年3月期の通期連結業績予想については、前回発表の数値を据え置いています。通期の売上高は2兆2,500億円(前期比4.5%減)、営業利益は2,100億円(同5.2%増)を見込んでいます。第3四半期時点での進捗は極めて好調ですが、電力需要の動向や冬場の燃料価格の変動リスクを慎重に見極めているものと推察されます。
| 項目 | 前回予想 | 今回修正 | 前期実績 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2兆2,500億円 | 2兆2,500億円 | 2兆3,568億円 |
| 営業利益 | 2,100億円 | 2,100億円 | 1,996億円 |
| 経常利益 | 1,900億円 | 1,900億円 | 1,947億円 |
| 当期純利益 | 1,400億円 | 1,400億円 | 1,288億円 |
足元では電気・ガス料金負担軽減支援事業による政府補助金(Q3累計で約250億円)などの外部要因もありますが、通期ではこれらを除いた実質的な収益力も堅調に推移する見通しです。
リスクと課題
九州電力の経営において注視すべきリスク要因は、外部環境の変化と電源構成のバランスです。会社側は以下の項目をリスク・課題として認識しています。
- 燃料価格・為替の変動: 燃料価格の上昇や円安は、火力発電コストの増加を招き、利益を圧迫する直接的な要因となります。
- 原子力発電所の稼働状況: 原子力はベースロード電源として極めて重要な役割を担っており、検査やトラブルによる停止は、代替燃料費の大幅な増加につながります。
- 再生可能エネルギーの導入拡大: 九州地域は太陽光発電の導入が進んでおり、電力の需給バランス調整(出力制御など)に伴うコストや運用の複雑化が課題となっています。
- 制度変更のリスク: 政府による電気料金抑制策の出口戦略や、送配電網の利用ルール変更などが収益に影響を与える可能性があります。
九州電力の今回の決算は、表面的な減収とは裏腹に、極めて質の高い利益成長を示した内容と言えます。特に営業利益が前年同期比で45%以上も増加した点は、投資家にとってポジティブなサプライズです。
注目すべきは「自己資本比率の改善」です。一時期、燃料高騰により財務基盤が傷んだ時期もありましたが、19.2%まで回復してきたことは、今後の投資余力(脱炭素投資やデジタル化)を確保する上で非常に重要です。他電力会社と比較しても、原子力の安定稼働という強みが収益の下支えとなっている点が鮮明です。
就職活動中の学生にとっては、同社が「電力の安定供給」という伝統的な使命を果たしつつも、ICTサービスや海外展開といった多角化で利益を伸ばしている点に注目すると、企業の成長ストーリーを理解しやすいでしょう。通期予想を据え置いているのは、Q4(1-3月)の電力需要変動への保守的な見方と思われますが、着地は上方修正の含みも感じさせる力強い内容でした。
