森永乳業・2026年3月期通期、純利益4.1倍の225億円——海外事業が過去最高、1対4の株式分割も発表
売上高
5,715億円
+1.8%
通期予想
5,800億円
営業利益
345億円
+16.3%
通期予想
320億円
純利益
226億円
+313.9%
通期予想
200億円
営業利益率
6.0%
森永乳業が発表した2026年3月期通期決算は、売上高が前年比1.8%増の5,714億円、営業利益が同16.3%増の344億円と増収増益を達成した。原材料高や物流費上昇の影響を国内の価格改定とプロダクトミックスの改善で跳ね返したほか、ドイツの子会社ミライ社を中心とした海外事業が収益を大きく牽引した。前期に計上した一時的損失の反動もあり、親会社株主に帰属する当期純利益は225億円と、前年の約4.1倍に急拡大。あわせて、投資家層の拡大を狙い1対4の株式分割の実施を公表した。
業績のポイント
森永乳業の2026年3月期は、中期経営計画「2025-28」の初年度として、成長領域へのリソース集中が奏功する形となった。売上高は5,714億5,800万円(前年比1.8%増)、営業利益は344億7,900万円(前年比16.3%増)と着実な成長を遂げた。特に、親会社株主に帰属する当期純利益は225億9,900万円(前年比313.9%増)と、前期の減益要因が解消されたことで大幅な回復を見せている。
利益面での主な押し上げ要因は、海外事業の躍進だ。ドイツのミライ社において、ホエイたんぱくの市況高止まりと販売数量増が重なり、グループ全体の営業利益を大きく押し上げた。国内では2025年6月および8月に実施された生乳取引価格の引き上げに伴い、徹底した価格改定を断行。需要環境の悪化により販売数量は減少したものの、高付加価値商品の拡販とコスト見直しにより、国内事業の収益性を維持した。
| 項目 | 2025年3月期(実績) | 2026年3月期(実績) | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,611億円 | 5,714億円 | +1.8% |
| 営業利益 | 296億円 | 344億円 | +16.3% |
| 経常利益 | 298億円 | 371億円 | +24.3% |
| 当期純利益 | 54億円 | 225億円 | +313.9% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
同社は新中期経営計画に基づき、「成長分野」「基幹分野」「育成・その他」の3カテゴリーで戦略を展開している。各セグメントの状況は、海外と国内で明暗が分かれる結果となった。
成長分野(ヨーグルト、アイス、菌体、海外育児用ミルク)は、売上高1,245億円(前年比5.2%増)と伸長した。ヨーグルトは四半期を追うごとに改善し、アイスも新設備の稼働により増収に寄与した。しかし、営業利益は125億円(前年差11億円減)と微減。これは、アイス新工場の償却費増加や原材料価格の上昇が影響したもので、先行投資局面にあることが伺える。
基幹分野(ミライ社、BtoB、牛乳、飲料等)は、売上高3,649億円(前年比3.4%増)、営業利益200億円(前年差63億円増)と大幅な増益を達成した。特にドイツのMILEI GmbH(ミライ社)が、高付加価値な乳由来素材の販売好調により利益の柱となった。国内の牛乳・飲料カテゴリーでは数量減に苦しんだものの、米国子会社の工場統合による生産効率化が利益を下支えした。
海外事業全体のパフォーマンスは極めて高く、売上高は前年比25.1%増の874億円、営業利益は前年差95億円増の169億円に達した。菌体販売やパキスタン子会社の好調も加わり、全社利益の約半分を海外で稼ぎ出す構造へと進化している。
| 分野名 | 売上高 | 前年比 | 営業利益 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 食品事業(全体) | 5,476億円 | +1.8% | 458億円 | +15.1% |
| 成長分野 | 1,245億円 | +5.2% | 125億円 | △8.6% |
| 基幹分野 | 3,649億円 | +3.4% | 200億円 | +46.4% |
| 海外事業(内訳) | 874億円 | +25.1% | 169億円 | +127.4% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 食品事業 | 5,477億円 | 96% | 458億円 | 8.4% |
| その他の事業 | 340億円 | 6% | 36億円 | 10.5% |
財務状況と資本政策
2026年3月末時点の総資産は、前年度末から266億円増加し、5,471億円となった。これは主に、将来の成長に向けた設備投資による「建物及び構築物」や「機械装置」の増加によるものである。自己資本比率は50.2%と、前年末の51.2%から微減したものの、依然として強固な財務基盤を維持している。
特筆すべきは、積極的な株主還元策である。当期の年間配当は前期から10円増配の100円(配当性向36.2%)とした。さらに、機動的な資本政策として約100億円の自己株式取得を実施し、全株を消却済みである。
また、今回の決算発表と同時に、2026年7月1日付で1株につき4株の割合で株式分割を行うことを決定した。投資単位当たりの金額を引き下げることで、若年層を含む個人投資家の売買活性化と、市場流動性の向上を狙う。新中期経営計画で掲げた「配当性向40%」への引き上げ方針を具現化する姿勢を鮮明にしている。
通期見通しとリスク課題
2027年3月期の通期予想については、売上高5,800億円(前期比1.5%増)、営業利益320億円(同7.2%減)と、増収ながら慎重な減益予想を提示した。この背景には、不安定な中東情勢に伴うコスト増や、前期に好調だったミライ社における在庫販売の反動減、原価高騰による利益圧迫を見込んでいるためだ。
会社側は、中東情勢による営業利益への影響額を約40億円と試算し、あらかじめ業績予想に織り込んだ。今後の課題は、消費者の購買意欲が減退する中で、いかに高付加価値商品の比率を高め、価格転嫁から「価値の浸透」へとシフトできるかにある。また、完全子会社である森永乳業販売との吸収合併方針を固めるなど、グループ運営の効率化によるコスト削減も継続課題となる。
| 項目 | 2026年3月期(実績) | 2027年3月期(予想) | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,714億円 | 5,800億円 | +1.5% |
| 営業利益 | 344億円 | 320億円 | △7.2% |
| 親会社株主純利益 | 225億円 | 200億円 | △11.5% |
今回の決算で最も注目すべきは、森永乳業が「国内の市乳メーカー」から「グローバルな乳由来素材メーカー」へと、収益構造の転換を成し遂げつつある点です。
- ドイツのMILEI社が利益の約半分を稼ぎ出す構造は、国内の少子高齢化や生乳価格上昇という構造的リスクに対する強力なカウンターとなっています。
- 1対4の大胆な株式分割は、新NISA制度などで投資に関心を持つ就活生や若年層投資家にとって、同社の株式を手に取りやすくする好材料です。
- 次期予想の営業減益は、中東リスクをあらかじめ保守的に見積もった結果と言えます。本業のキャッシュフロー創出力(営業CF 357億円)は改善しており、投資余力は十分に保たれています。
今後は、国内市場での「数量回復」がどこまで進むか、そして成長投資として掲げたアイスや菌体事業が、償却負担を上回る利益成長を早期に実現できるかが焦点となります。
