業界ダイジェスト
四国電力株式会社 の会社詳細
四国電力株式会社
四国電力
2026年3月期 通期

四国電力・2026年3月期通期、純利益25.6%減の508億円——燃料費調整の減少響き減収減益も、年間配当は50円へ増配

四国電力
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電力業界
減収減益
増配
伊方発電所
自己資本比率
燃料費調整
株主還元
インフラ投資
通期1年間の確定値(前年比)

売上高

7,619億円

-10.5%

通期予想

9,250億円

進捗率82%

営業利益

678億円

-23.8%

通期予想

370億円

進捗率183%

純利益

508億円

-25.6%

通期予想

300億円

進捗率169%

営業利益率

8.9%

四国電力が発表した2026年3月期通期決算は、売上高が前年比 10.5%減7,618億円 、親会社株主に帰属する当期純利益が同 25.6%減508億円 となりました。燃料価格の下落に伴う燃料費調整制度による収入減や、卸販売における容量確保契約金額の減少が響き、前年度の好業績から一転して減収減益となりました。一方で、財務体質の改善を背景に株主還元を強化しており、年間配当は前期比10円増の 50円 を実施、次期予想でもさらに5円の増配を見込むなど、攻めの資本政策が鮮明となっています。

トーク

四国電力 2026年3月期 通期決算

さくら × けんじ の対話形式解説

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業績のポイント

2026年3月期の連結業績は、売上・利益ともに前年を下回る厳しい着地となりました。最重要指標である売上高は 7,618億円 (前年比 10.5%減 )、営業利益は 67,848百万円 (同 23.8%減 )、経常利益は 67,890百万円 (同 25.9%減 )を記録しました。この減益の主因は、電気事業における需給収支の悪化です。燃料価格の低下によって燃料費などの費用は減少したものの、それ以上に小売販売における燃料費調整額の減少や、卸販売の単価下落による収入減が利益を押し下げました。

電力需要面では、小売販売電力量が前年比 0.8%増228億kWh と堅調に推移しました。契約電力の増加などが寄与しましたが、卸販売電力量が他社向けの相対販売減少により同 11.1%減 と大きく落ち込んだことで、総販売電力量は 343億kWh (同 3.5%減 )に留まっています。また、供給面では伊方発電所3号機の稼働日数増加により原子力発電量が 5.6%増 と改善した一方、出水率の低下(99%→80%)により水力発電量が大幅に減少するなどの変動もありました。

項目2025年3月期(実績)2026年3月期(実績)前年比
売上高8,513億円7,618億円△10.5%
営業利益890億円678億円△23.8%
経常利益916億円678億円△25.9%
当期純利益683億円508億円△25.6%

業績推移(通期)

売上高営業利益

セグメント別動向

主力である電気事業は、売上高が 6,622億円 (前年比 12.4%減 )、セグメント利益(経常利益ベース)が 434億円 となり、全体の業績を押し下げる形となりました。小売・卸の両面で収入単価が下落したことが響きましたが、原子力発電の安定稼働により一定の利益水準は維持しています。送配電部門については、レベニューキャップ制度下における年度毎の収支変動などが影響し、利益を圧縮する要因となりました。

一方で、非電力部門のセグメントは底堅く推移しています。情報通信事業は、売上高 527億円 、セグメント利益 112億円 となり、高い利益率を維持してグループの収益を下支えしました。また、エネルギー事業(ガス・LNG販売等)も売上高 270億円 、セグメント利益 53億円 と安定した利益を計上しています。建設・エンジニアリング事業を含め、電気事業以外の利益合計は 244億円 に達し、エネルギー価格に左右されにくい収益基盤の多様化が進んでいます。

セグメント名売上高セグメント利益利益率概況
電気事業(合算)6,622億円434億円6.6%燃調収入の減少により減益
情報通信事業527億円112億円21.2%安定した高収益を維持
エネルギー事業270億円53億円19.5%順調な推移
建設・エンジ589億円51億円8.6%堅調な受注を確保
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
電気事業(発電・販売)6,301億円83%349億円5.5%
電気事業(送配電)2,305億円30%85億円3.7%
情報通信事業528億円7%113億円21.4%
エネルギー事業271億円4%54億円19.8%

財務状況と資本政策

財務体質は着実に改善が進んでいます。2026年3月末時点の総資産は 1兆7,343億円 と、事業用資産の積み増しにより前期末から 469億円 増加しました。自己資本は利益の蓄積により 4,745億円 まで積み上がり、自己資本比率は27.4%(前期末比1.4ポイント上昇)と、中長期目標に向けて前進しています。キャッシュ・フロー面では、投資活動による支出が 1,500億円 に拡大しましたが、営業活動によるキャッシュ・フロー 822億円 と社債・借入による資金調達を組み合わせ、成長投資と株主還元の両立を図っています。

特筆すべきは、積極的な株主還元の拡充です。同社は「安定的な配当」を基本方針としつつ、2026年3月期の年間配当を前期の40円から 50円 へ大幅に引き上げました。また、期中に 187万株 の自社株買いを実施しており、資本効率の向上を追求する姿勢を明確にしています。中期経営計画2030で掲げる「自己資本配当率(DOE)2.5%」の目標に向け、業績の変動に左右されにくい安定した還元姿勢を投資家に示しています。

通期見通し

2027年3月期の通期連結予想は、売上高が前年比 21.4%増9,250億円 と大幅な増収を見込む一方、純利益は同 41.0%減300億円 となる見通しを公表しました。増収の背景には、卸販売電力量の増加や燃料価格上昇に伴う収入単価の上昇を見込んでいますが、利益面では退職給付費用の増加や諸経費の増大、さらには前期に計上された一時的な利益の反動減が重くのしかかる見込みです。

項目2026年3月期(実績)2027年3月期(予想)増減率
売上高7,618億円9,250億円+21.4%
営業利益678億円370億円△45.5%
経常利益678億円400億円△41.1%
当期純利益508億円300億円△41.0%

次期の前提条件として、為替レートは 1ドル160円 、原油価格(CIF)は 1バレル95ドル を想定しています。原子力利用率については、伊方3号機の安定稼働により 91% (前期実績81%)と高水準を見込んでおり、燃料価格高騰リスクへの耐性を高める方針です。配当については、さらなる増配となる年間 55円 を予定しており、厳しい利益予想の中でも還元重視の姿勢を維持します。

リスクと課題

同社の経営環境には、以下の主要なリスクが存在します。

  • 燃料価格および為替の変動: 石炭や原油の輸入価格、および円安の進行は発電コストを直接押し上げる要因となります。燃料費調整制度による転嫁にはタイムラグがあるため、短期的には収益を圧迫するリスクがあります。
  • 原子力の稼働状況: 伊方発電所3号機の稼働率は収益に大きな影響を与えます。定期点検の延長や予期せぬトラブルによる停止は、代替火力の燃料費負担増に直結します。
  • 電力自由化に伴う競争激化: 小売全面自由化により他社との顧客獲得競争が続いています。契約電力の維持・拡大が売上高の安定には不可欠です。
  • 気象条件の変動: 出水率の低下は水力発電量を減少させ、夏季・冬季の気温変動は電力需要と調達コストに大きな影響を及ぼします。
AIアナリストの視点

四国電力の今回の決算は、表面的な「減収減益」という数字以上に、「財務体質の改善を背景とした還元重視へのシフト」が強く印象に残ります。燃料費調整制度の影響で売上・利益が振れやすい電力株において、利益が減少する局面でも配当を50円から55円へと引き上げる判断は、投資家に対する強いコミットメントと言えます。

注目すべきは以下の3点です。

  • 原子力への依存とリスク: 次期予想で利用率91%を見込んでおり、伊方3号機の安定稼働が収益の生命線となっています。停止リスクは常に考慮すべきです。
  • 非電力事業の貢献: 情報通信やエネルギー事業が安定して200億円規模の利益を稼いでおり、電力事業のボラティリティを緩和するクッションとして機能しています。就活生にとっても、同社が「ただの発電会社」ではない点は魅力に映るでしょう。
  • 資本政策の透明化: 自己資本比率が30%に近づく中で、自社株買いやDOEを意識した配当方針など、かつての「守りの電力株」から、より資本効率を意識した企業体への変貌が感じられます。次期の減益予想をマーケットがどう消化するかが今後の焦点となるでしょう。