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九州電力株式会社 の会社詳細
九州電力株式会社
九州電力
2026年3月期 通期

九州電力・2026年3月期通期、純利益20%増の1,545億円——燃料安が利益押し上げ、次期は減益予想

九州電力
増収増益
燃料価格下落
電力業界
原子力発電
減益予想
配当維持
自己資本比率向上
期ずれ影響
ICT事業
通期1年間の確定値(前年比)

売上高

2.2兆円

-4.7%

通期予想

2.3兆円

進捗率98%

営業利益

2,249億円

+12.7%

通期予想

2,100億円

進捗率107%

純利益

1,545億円

+20.0%

通期予想

1,300億円

進捗率119%

営業利益率

10.0%

九州電力の2026年3月期連結決算は、親会社株主に帰属する当期純利益が前年比20.0%増1,545億円となった。売上高は小売販売電力量の減少により2兆2,472億円(同4.7%減)と減収となったが、燃料価格の下落に伴う燃料費の大幅な減少が増益を牽引した。一方、2027年3月期は燃料費調整制度の「期ずれ」による差益が差損に転じることを見込み、15.9%の最終減益と慎重な見通しを示している。

トーク

九州電力 2026年3月期 通期決算

さくら × けんじ の対話形式解説

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業績のポイント

当期の業績は、販売面の苦戦をコスト削減が補う「減収増益」の構図となった。売上高は2兆2,472億円(前年比4.7%減)と落ち込んだ。これは域内の契約電力減少により、小売販売電力量が前年比9.3%減686億kWhに止まったことが主因である。しかし、利益面では燃料価格の下落に伴う発電単価の低下が大きく寄与した。営業利益は2,248億円(前年比12.7%増)、経常利益は2,070億円(前年比6.4%増)と、いずれも前期を上回る着地となった。

経営効率の指標である自己資本比率は、前期末から2.6ポイント向上し、19.9%まで回復した。純利益の積み上げにより、財務基盤の強化が着実に進んでいる。配当については、普通株式1株当たり年間50円(中間25円、期末25円)を維持し、安定的な株主還元を継続する方針だ。

指標2025年3月期2026年3月期前年比
売上高2兆3,568億円2兆2,472億円△4.7%
営業利益1,995億円2,248億円+12.7%
経常利益1,946億円2,070億円+6.4%
当期純利益1,287億円1,545億円+20.0%

業績推移(通期)

売上高営業利益

セグメント別動向

主力事業である「発電・販売事業」は、売上高が1兆8,429億円(前年比8.4%減)となった。小売販売電力量の減少が響いたものの、燃料価格の下落によって需給関係費が縮小し、経常利益は1,364億円(前年比19.2%増)と大幅な増益を確保した。グループ全体の利益を支える大黒柱としての役割を果たしている。

一方、「送配電事業」は厳しい結果となった。エリア電力需要の減少に加え、需給調整市場における調整交付金の単価低下が収入を押し下げた。その結果、売上高は7,205億円(前年比3.7%減)、経常利益は82億円(前年比68.8%減)と、利益が大きく削られる形となった。

成長領域として期待される非電力部門では明暗が分かれた。「ICTサービス事業」は情報システム開発の受託増により売上高が10.3%増1,520億円と好調を維持したが、利益面では設備投資等の影響により前期並み(106億円)に留まった。「都市開発事業」はオール電化マンションの販売減少で減収となったものの、受取配当金の増加などにより経常利益は51億円(前年比50.0%増)と高い伸びを記録した。

セグメント売上高前年比経常利益前年比
発電・販売1兆8,429億円△8.4%1,364億円+19.2%
送配電7,205億円△3.7%82億円△68.8%
海外37億円△16.2%126億円+42.6%
その他エネルギー3,517億円+8.5%369億円+11.2%
ICTサービス1,520億円+10.3%106億円+0.5%
都市開発271億円△5.1%51億円+50.0%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
発電・販売事業1.8兆円82%1,364億円7.4%
送配電事業7,205億円32%82億円1.1%
海外事業37億円0%126億円340.5%
ICTサービス事業1,520億円7%106億円7.0%

財務状況と資本政策

総資産は前期末比2,093億円増の5兆9,833億円となった。これは主に電力供給体制の維持・強化に向けた設備投資の継続や、退職給付に係る資産の増加によるものである。一方で、有利子負債残高は3兆6,970億円と、前期末から217億円削減することに成功し、借入金依存度の低減が進んでいる。

キャッシュ・フロー面では、営業活動により4,387億円のキャッシュを獲得した。小売販売収入の減少はあったが、卸売販売の増加や燃料代の支出減がプラスに働いた。得られたキャッシュは、主に3,837億円にのぼる設備投資(投資活動CF)や、配当金の支払・借入金の返済といった財務活動に充てられている。攻めの投資と財務の健全化を両立させる姿勢が鮮明となっている。

通期見通し

2027年3月期の連結業績予想は、売上高は増収となるものの、各利益項目で減益を見込む。売上高は2兆3,000億円(前期比2.3%増)と、卸売販売単価の上昇などにより増加する計画だ。しかし、営業利益は2,100億円(同6.6%減)、純利益は1,300億円(同15.9%減)と減益を避けられない見通しである。

最大の減益要因は、燃料費調整制度における「期ずれ」影響の悪化である。前期は価格下落局面で差益が発生していたが、今期は反転して差損が生じる見込みだ。また、想定為替レートを1ドル=160円、原油価格を1バレル=90ドルと、前期(151円、71ドル)よりも厳しい外部環境を前提としている。

項目2026年3月期実績2027年3月期予想増減率
売上高2兆2,472億円2兆3,000億円+2.3%
営業利益2,248億円2,100億円△6.6%
経常利益2,070億円1,800億円△13.1%
当期純利益1,545億円1,300億円△15.9%

リスクと課題

九州電力が直面する主なリスクと課題は以下の通りである。

  • 燃料価格・為替の変動: 火力発電の比率が依然として高く、原油・LNG価格の騰貴や円安の進行は直接的に収益を圧迫する要因となる。
  • 原子力発電所の稼働状況: 2027年3月期の予想では原子力設備利用率を84.7%と高水準に設定しており、定期点検の延長やトラブルによる停止は業績下振れに直結する。
  • 電力自由化と競争激化: 域内での顧客獲得競争により小売販売電力量が減少傾向にあり、卸売販売や新事業での収益補完が急務となっている。
  • 再エネ出力制御の影響: 九州エリアは太陽光発電の導入が進んでおり、電力需給のバランス調整に伴う出力制御の頻度やその費用負担が課題となっている。
AIアナリストの視点

今回の決算は「燃料価格の恩恵」が利益を押し上げた格好ですが、本業の小売販売電力量が9.3%も減少している点は、就活生や投資家にとって見逃せない懸念材料です。域内での競争激化や人口減少の影響が数値として表れています。

一方で、有利子負債の削減と自己資本比率の改善が進んでおり、かつての経営危機からは完全に脱したと言える財務水準です。ICTや都市開発といった非電力部門の利益貢献も着実に増えており、インフラ一辺倒からの脱却を目指す戦略の進捗が見て取れます。

次期予想の減益は、あくまで会計上の「期ずれ」が主因であり、キャッシュフローを伴う実質的な収益力が急落するわけではありません。むしろ、1ドル160円という保守的な為替前提を置いていることから、今後の為替動向次第では上方修正の余地も含んだ慎重な計画と言えるでしょう。