島津製作所・2026年3月期通期、売上高5,607億円で過去最高——ヘルスケア・海外市場が牽引、純利益は12.5%増
売上高
5,607億円
+4.0%
通期予想
5,750億円
営業利益
737億円
+2.8%
通期予想
760億円
純利益
605億円
+12.5%
通期予想
550億円
営業利益率
13.1%
精密機器大手の島津製作所が発表した2026年3月期決算は、売上高が前期比 4.0%増 の 5,607億2,800万円 となり、過去最高を更新しました。主力の計測機器事業が製薬・食品市場向けに伸長したほか、北米や欧州での需要増が中国市場の停滞を補い、営業利益は 737億200万円(同 2.8%増)を確保しました。為替差益の計上などにより、親会社株主に帰属する当期純利益は 604億9,900万円(同 12.5%増)と、増収増益の堅調な着地となりました。
業績のポイント
当期の連結業績は、世界的な地政学リスクや中国経済の減速という逆風下にあっても、地域バランスの取れた成長によって増収増益を達成しました。売上高は 5,607億2,800万円(前年同期比 +4.0%)と過去最高を更新し、営業利益は 737億200万円(同 +2.8%)となりました。特に、営業外収益において為替差益を 77億2,400万円 計上したことが寄与し、経常利益は 827億5,300万円(同 +14.9%)と大幅な伸びを見せています。
同社は中期経営計画に基づき、ヘルスケアやグリーン(環境)といった注力4領域へ資源を集中させています。北米R&Dセンターの設立やインドでの新会社設立など、「地産地消」の開発・販売体制を強化したことが、特定の地域リスクを分散する結果となりました。利益率の高いアフターサービスや消耗品を扱う「リカーリングビジネス」の強化も、収益の安定化に大きく貢献しています。
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力の計測機器事業は、製薬および臨床検査市場向けの質量分析システムが好調を維持しました。中国の民間市場は停滞したものの、国内や北米、アジア地域での成長がこれを上回り、セグメント売上高は 3,649億6,200万円(前年同期比 +4.9%)となりました。また、医用機器事業では、AI画像解析技術を融合した新製品の投入により、プロダクトミックスが改善し、セグメント利益は 48億7,100万円(同 +14.3%)と大幅な増益を達成しています。
| セグメント | 売上高 | 前年同期比 | 営業利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 計測機器 | 3,649億円 | +4.9% | 525億円 | +1.0% |
| 医用機器 | 738億円 | +1.7% | 48億円 | +14.3% |
| 産業機器 | 715億円 | △1.1% | 105億円 | +1.2% |
| 航空機器 | 433億円 | +12.2% | 82億円 | +35.5% |
産業機器事業では、生成AI向けの半導体需要を背景にターボ分子ポンプが堅調だった一方で、油圧機器が産業車両向けの需要遅れから苦戦し、微減収となりました。特筆すべきは航空機器事業で、防衛予算の拡大に伴う搭載品の増加により、売上高・利益ともに二桁成長を記録しています。
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 計測機器 | 3,650億円 | 65% | 526億円 | 14.4% |
| 医用機器 | 738億円 | 13% | 49億円 | 6.6% |
| 産業機器 | 716億円 | 13% | 106億円 | 14.8% |
| 航空機器 | 434億円 | 8% | 82億円 | 18.9% |
財務状況と資本政策
総資産は、棚卸資産の増加や現預金の積み増しにより、前期末から 658億円 増加して 7,379億7,800万円 となりました。自己資本比率は 76.6%(前期は 74.1%)まで上昇しており、極めて強固な財務基盤を維持しています。この安定した財務体質を背景に、成長投資と株主還元の両立を図る方針です。
株主還元については、当期の年間配当を前期より3円増配の 69円 としました。次期(2027年3月期)についても、1円の増配となる 70円 を予定しており、配当性向30%以上の維持を目指す方針を堅持しています。営業活動によるキャッシュ・フローも 546億7,900万円 の収入を確保しており、中長期的な成長に向けたR&D投資や設備投資のための資金余力は十分に保たれています。
通期見通し
2027年3月期の通期業績予想は、売上高 5,750億円(前期比 +2.5%)、営業利益 760億円(同 +3.1%)と、増収増益の継続を見込んでいます。一方で、純利益については前期に計上された為替差益などの剥落を見込み、550億円(同 △9.1%)と慎重な見通しを立てています。
| 項目 | 2026年3月期実績 | 2027年3月期予想 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,607億円 | 5,750億円 | +2.5% |
| 営業利益 | 737億円 | 760億円 | +3.1% |
| 経常利益 | 827億円 | 750億円 | △9.4% |
| 当期純利益 | 604億円 | 550億円 | △9.1% |
次期はAIやデータセンター関連の半導体市場の回復を背景に、産業機器事業の反転攻勢を狙います。また、ライフサイエンス分野でのロボティクス活用や、環境規制(PFAS規制等)に対応した新たな分析装置の投入により、高付加価値化をさらに進める戦略です。
リスクと課題
同社は今後想定される主なリスクとして、以下の要因を挙げています。
- 中国市場における民間投資の動向と政府の経済対策の実行スピード
- 米国の関税政策や地政学リスクに伴うサプライチェーンの混乱
- 原材料価格のさらなる上昇および物流コストの高止まり
- 為替相場の急激な変動による海外利益の目減り
特に中国市場については、政府の経済対策による大学向けの需要は期待できるものの、民間市場の回復には依然として不透明感が残っています。これに対し、インドや東南アジア、北米などの成長市場へのリソースシフトを加速させ、特定の地域に依存しない収益構造への転換を急いでいます。
島津製作所の決算からは、世界的な不透明感の中でも「科学技術への投資」という本質的な需要を確実に捉える底力が感じられます。
特筆すべきは、中国市場の民間需要減退という大きなマイナス要因を、北米・欧州・インドでの成長、さらには防衛・航空という国内需要で完全に対処し切った点にあります。単なる製品販売にとどまらず、消耗品やメンテナンスで稼ぐ「リカーリングビジネス」の強化が、営業利益の安定的な積み上げに寄与しています。
今後は、次世代の成長エンジンとして期待される「AI画像解析」や「臨床市場向け質量分析」が、競合他社に対してどこまで優位性を維持できるかが焦点となります。財務基盤は盤石であり、攻めの投資(M&AやR&D)に向けた準備は整っていると言えるでしょう。
