業界ダイジェスト
TIS株式会社 の会社詳細
TIS株式会社
TIS
2026年3月期 通期

TIS・2026年3月期通期、営業利益10.4%増の762億円——IT投資需要を捉え増収増益、過去最大規模の自社株買いも発表

増収増益
DX需要
自社株買い
増配
経営統合
システムインテグレーター
株主還元
情報サービス
IT投資
特別損失
通期1年間の確定値(前年比)

売上高

5,965億円

+4.3%

通期予想

6,200億円

進捗率96%

営業利益

762億円

+10.4%

通期予想

810億円

進捗率94%

純利益

466億円

-6.8%

通期予想

570億円

進捗率82%

営業利益率

12.8%

IT大手のTISは5月8日、2026年3月期の連結決算を発表しました。企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)需要が堅調に推移し、売上高は5,964億円(前年比+4.3%)、営業利益は762億円(同+10.4%)と増収増益を達成しました。訴訟和解に伴う一過性の損失で純利益は減少したものの、500億円規模の大型自社株買いや増配を決定するなど、積極的な株主還元姿勢を鮮明にしています。

業績のポイント

当連結会計年度の業績は、企業の旺盛なIT投資需要を背景に、主力事業が軒並み好調に推移しました。売上高は5,964億7,900万円(前年比4.3%増)、営業利益は762億2,900万円(同10.4%増)となりました。増収による利益の押し上げに加え、高付加価値ビジネスへのシフトや不採算案件の削減が進み、営業利益率は12.8%(前年比0.7ポイント改善)へと上昇しています。

一方で、親会社株主に帰属する当期純利益は466億2,400万円(前年比6.8%減)と減益を余儀なくされました。これは、長年係争中であった三菱食品とのシステム開発に関する訴訟が和解に至り、それに伴う訴訟損失引当金繰入額として74億3,400万円を特別損失に計上したことが主な要因です。また、政策保有株式の縮減を進めたことで投資有価証券売却益を計上したものの、和解金や減損損失の影響を補うには至りませんでした。

指標2025年3月期実績2026年3月期実績前年比
売上高5,716億円5,964億円+4.3%
営業利益690億円762億円+10.4%
経常利益705億円765億円+8.5%
当期純利益500億円466億円△6.8%

業績推移(通期)

売上高営業利益

セグメント別動向

セグメント別では、知識集約型サービスを自社投資で構築する「オファリングサービス」が売上高1,605億円(前年比10.3%増)と二桁成長を記録しました。決済分野や海外事業の寄与に加え、不採算案件の減少が利益を押し上げました。ビジネスプロセスのアウトソーシングを担う「BPM」も、DX関連案件の獲得や効率化施策が実を結び、営業利益は63億円(同20.1%増)と大幅な伸びを見せています。

「金融IT」は、クレジットカード系の大型開発案件がピークアウトした影響で売上高は987億円(同1.5%減)と微減しましたが、モダナイゼーション関連の高付加価値案件の推進により、営業利益は増益を確保しました。一方、「産業IT」は製造・流通・エネルギーなど幅広い業種でIT投資が拡大し、売上高1,333億円(同4.1%増)、営業利益225億円(同16.4%増)と好調でした。地方自治体や公共系を支える「広域ITソリューション」も、医療やその他産業系での需要を取り込み、着実に利益を積み上げています。

セグメント売上高営業利益営業利益率
オファリングサービス1,605億円104億円6.5%
BPM440億円63億円14.5%
金融IT987億円127億円12.9%
産業IT1,333億円225億円16.9%
広域ITソリューション1,842億円233億円12.7%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
オファリングサービス1,606億円27%104億円6.5%
BPM441億円7%64億円14.5%
金融IT987億円17%127億円12.9%
産業IT1,334億円22%225億円16.9%
広域ITソリューション1,842億円31%233億円12.7%

財務状況と資本政策

2026年3月末時点の総資産は5,515億円となり、前年末比で65億円減少しました。自己資本比率は58.9%と、前年末の61.5%から低下していますが、これは積極的な株主還元に伴う自己株式の取得によるものです。キャッシュ・フロー面では、営業活動により814億円の資金を創出した一方、自己株式の取得に559億円を投じ、財務の健全性を維持しつつも株主への利益還元を優先する姿勢を示しました。

特筆すべきは、株主還元の強化です。同社は中期経営計画に基づき、総還元性向の目安をこれまでの45%から50%に引き上げました。2026年3月期の年間配当は、当初予想の76円から4円増額し、80円(前年実績70円)としました。さらに、2026年3月から9月にかけて総額500億円の自己株式取得を実施することを決定しました。これは本源的価値に照らして現在の株価が十分に評価されていないという経営判断に基づく、極めて強力な還元策といえます。

通期見通し

2027年3月期の連結業績予想については、売上高6,200億円(前期比3.9%増)、営業利益810億円(同6.3%増)と、引き続き増収増益を見込んでいます。特筆すべき戦略的トピックとして、2026年7月1日付で完全子会社である株式会社インテックとの合併を予定しています。この合併により、グループ内の経営資源を集約し、バリューチェーンの強化と事業展開の加速を図ります。これに合わせ、商号を「TISI株式会社(予定)」へ変更し、新たなステージへの飛躍を目指します。

項目2026年3月期実績2027年3月期予想前期比
売上高5,964億円6,200億円+3.9%
営業利益762億円810億円+6.3%
経常利益765億円810億円+5.9%
当期純利益466億円570億円+22.3%

リスクと課題

TISが成長を継続する上で、以下のリスクを注視する必要があります。

  • IT人材の確保と育成: DX需要の拡大に伴いエンジニアの獲得競争が激化しており、人件費の上昇が利益を圧迫するリスクがあります。
  • 外部環境の変化: 米国の通商政策や地政学リスク、原油価格の高騰などが顧客企業の投資意欲に与える影響が懸念されます。
  • AI技術への対応: 生成AIをはじめとするテクノロジーの急速な進化に対し、迅速なサービス転換や社内プロセスの再構築が求められています。
  • 大規模案件の進捗管理: 不採算案件は減少傾向にあるものの、金融系などの大規模プロジェクトにおける品質管理や納期遅延は依然として経営上のリスク要因です。
AIアナリストの視点

TISの今回の決算で最も注目すべきは、業績の堅調さ以上に「資本政策の劇的な転換」です。訴訟の和解という長年の懸案事項に終止符を打ち、一過性の損失を出しつつも、その裏で500億円という巨額の自己株式取得を打ち出した点は、マーケットに対する非常に強い信頼回復のメッセージとなります。

特に、「現在の株価は過小評価されている」と明言して自社株買いに踏み切る姿勢は、投資家にとってポジティブな材料です。また、子会社インテックとの合併による「TISI」への商号変更は、単なる組織再編ではなく、グループ一体となった「バリューチェーンの垂直統合」を狙うものであり、コンサルティングから開発、BPMまでを一気通貫で提供する競争力がさらに高まると予想されます。

懸念点としては、純利益の目減りにより自己資本比率が低下している点ですが、キャッシュ創出力は極めて高く、財務基盤が揺らぐレベルではありません。今後はAI時代に即したサービスへの転換速度が、中長期的な収益性を左右する鍵となるでしょう。