東レ株式会社 の会社詳細
東レ株式会社
東レ
2026年3月期 第3四半期

東レ・2026年3月期Q3、純利益46.6%減の401億円——韓国BSF事業の減損響く、通期売上予想を下方修正

東レ
減収減益
減損損失
バッテリーセパレータ
EV関連
繊維事業
自社株買い
株主還元
業績予想修正
化学業界
第3四半期累計期初から9ヶ月間の累計値(前年同期比)

売上高

1.9兆円

-0.2%

通期予想

2.6兆円

進捗率74%

営業利益

710億円

-31.6%

通期予想

1,500億円

進捗率47%

純利益

402億円

-46.6%

通期予想

820億円

進捗率49%

営業利益率

3.7%

繊維大手の東レが発表した2026年3月期第3四半期決算は、売上収益が1兆9,194億円(前年同期比0.2%減)、純利益が401億円(同46.6%減)と大幅な減益となった。主力事業である繊維や環境・エンジニアリング事業は堅調に推移したものの、電気自動車(EV)市場の低迷を受けた韓国子会社のバッテリーセパレータフィルム事業における約250億円の減損損失が利益を大きく押し下げた。同社は世界景気の不確実性を鑑み、通期の売上収益予想を下方修正している。

東レ・2026年3月期Q3、純利益46.6%減の401億円——韓国BSF事業の減損響く、通期売上予想を下方修正

業績のポイント

当第3四半期累計期間の売上収益は1兆9,194億円(前年同期比0.2%減)と、前年並みの水準を維持した。本業の収益力を示す事業利益は1,051億円(同3.4%減)と微減にとどまったが、最終的な利益を示す親会社の所有者に帰属する四半期利益は401億円(同46.6%減)と大きく落ち込んだ。この利益急減の主因は、非経常的な費用として計上された275億円の減損損失である。

特に韓国子会社で手掛けるバッテリーセパレータフィルム(BSF)事業において、EV市場の成長鈍化に伴う収益性悪化により249億円の減損を計上したことが響いた。一方で、構造改革が進む繊維事業や、中東向けが好調な水準処理関連事業が収益を下支えした。一過性の損失を除いた事業利益ベースでは、厳しい外部環境下でも底堅さを見せている。

業績推移(通期)

売上高営業利益|当期累計通期予想残

セグメント別動向

主力セグメント別では、明暗が分かれる結果となった。繊維事業は徹底したコスト改善が奏功し、売上収益は8,049億円(前年同期比3.9%増)、事業利益は548億円(同9.5%増)と伸長した。衣料用途では欧州市場の低迷が続くものの、産業用途での価格転嫁や効率化が利益を押し上げている。

機能化成品事業は、売上収益が6,687億円(同6.1%減)、事業利益が431億円(同10.3%減)と苦戦した。車載用コンデンサ用途のフィルム需要は伸びたが、上述のBSF事業の低迷に加え、中国における有機EL関連材料の競争激化が重荷となった。

炭素繊維複合材料事業は、航空宇宙用途の需要回復が追い風となったが、風力発電向けなどの一般産業用途が調整局面に入り、売上収益は2,127億円(同4.7%減)となった。環境・エンジニアリング事業は、中東向けの水処理膜の出荷が堅調で、売上収益が1,803億円(同11.0%増)と二桁の伸びを記録した。

セグメント名売上収益前年同期比事業利益前年同期比
繊維8,049億円+3.9%548億円+9.5%
機能化成品6,687億円△6.1%431億円△10.3%
炭素繊維複合材料2,127億円△4.7%115億円△18.6%
環境・エンジニアリング1,803億円+11.0%176億円+3.5%
ライフサイエンス385億円△1.8%△11億円
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
繊維8,049億円42%548億円6.8%
機能化成品6,687億円35%431億円6.4%
炭素繊維複合材料2,127億円11%115億円5.4%
環境・エンジニアリング1,803億円9%176億円9.8%

財務状況と資本政策

総資産は円安による海外子会社の円換算額の増加や、将来の成長に向けた設備投資に伴う有形固定資産の増加により、前期末比2,225億円増の3兆5,151億円となった。自己資本を示す親会社所有者帰属持分比率は50.1%と、前期末の51.9%から1.8ポイント低下している。これは資産総額の膨張に加え、積極的な株主還元策による資本の減少が影響している。

注目すべきは積極的な自社株買いの実施である。当期間中に約784億円の自己株式取得を行い、資本効率の向上を図った。配当については、中間配当10円を実施済みで、期末配当も10円を予定している。年間配当は前期比2円増の20円となる見込みで、減益局面にあっても株主への利益還元を強化する姿勢を維持している。

リスクと課題

経営陣は、今後のリスク要因として以下の点を注視している。

  • 米国の政策転換リスク: トランプ政権による関税政策や通商外交の変化が、モノの流れに停滞をもたらす不確実性。
  • 中国景気の低迷: 回復が足踏み状態にある中国市場において、電子情報材料や樹脂製品の需要回復が遅れるリスク。
  • 原材料・エネルギー価格: 地政学的緊張による一次産品価格の上昇が、ライフサイエンス事業などのコストを圧迫する懸念。

特にEV市場の減速は、今回減損を計上したBSF事業の再建を遅らせる要因となる。同社は中期経営課題「AP-G 2025」に基づき、不採算事業の構造改革と、成長分野へのリソース集中を一段と加速させる必要がある。

通期見通し

同社は通期の連結業績予想について、売上収益を前回予想から300億円引き下げ、2兆6,000億円に修正した。世界景気の不透明感や中国経済の足踏みを反映した形だ。一方で、事業利益や純利益の予想については据え置いている。繊維事業のコスト削減効果や為替の円安推移(1月以降155円/ドル想定)が利益面を下支えすると見ている。

項目前回予想今回修正前期実績前期比
売上収益2兆6,300億円2兆6,000億円2兆5,633億円+1.4%
事業利益1,500億円1,500億円1,428億円+5.1%
親会社株主利益820億円820億円779億円+5.2%
AIアナリストの視点

今回の決算で最も注目すべきは、成長ドライバーと位置づけてきたバッテリーセパレータフィルム(BSF)事業で巨額の減損を計上した点です。EV市場の急速な冷え込みという外部要因が大きいものの、巨額投資の回収シナリオに狂いが生じたことは否定できません。

一方で、本業の繊維事業が利益を伸ばし、水処理関連も好調を維持している点は、同社の事業ポートフォリオの分散が機能している証左と言えます。また、大幅減益となりながらも約780億円の自社株買いを断行し、年間配当を増配(18円→20円)する判断からは、株価意識の高さと財務的な余裕が感じられます。

今後の焦点は、下方修正された売上をどこまでカバーできるか、そして構造改革を通じたBSF事業の早期立て直しにあります。投資家にとっては、一時的な損失を出し切り、株主還元を強化した姿勢をどう評価するかが分かれ道となるでしょう。