業界ダイジェスト
東ソー株式会社 の会社詳細
東ソー株式会社
東ソー
2026年3月期 通期

東ソー・2026年3月期、純利益28%減の416億円——米子会社での減損計上が響くも、エンジニアリング事業は最高益を更新

東ソー
4042
減益
半導体関連
水処理
オルガノ
自己株買い
減損損失
化学業界
中期経営計画
通期1年間の確定値(前年比)

売上高

1.0兆円

-4.1%

営業利益

955億円

-3.4%

純利益

416億円

-28.3%

営業利益率

9.4%

東ソーが発表した2026年3月期通期決算は、売上高が前期比 4.1%減1兆199億円、親会社株主に帰属する当期純利益が同 28.3%減416億円 となりました。石油化学やクロル・アルカリといった基礎原料部門が中国の需要低迷や市況下落で苦戦したほか、米国子会社における 約196億円の減損損失 の計上が利益を押し下げました。一方で、半導体向け水処理装置を担うエンジニアリング事業は好調を維持し、過去最高益を更新する「二極化」の鮮明な決算となっています。

業績のポイント

当期の連結業績は、売上高が 1兆199億円(前期比 4.1%減)、営業利益が 955億円(前期比 3.4%減)となりました。減収の主な要因は、ナフサ価格の下落に連動した製品価格の下落や、主要製品の海外市況が悪化したことです。特に中国経済の停滞に伴うデフレ輸出の影響を受け、アジア圏全体で化学品の価格競争が激化しました。

利益面では、原燃料価格の下落が販売価格の下落を上回る「交易条件の改善」が見られたものの、在庫受払差の悪化や固定費の増加が足を引っ張る形となりました。さらに、米国でスパッタリングターゲット事業を行う連結子会社「トーソー・SMD, Inc.」において、固定資産に係る 195億7,200万円減損損失 を特別損失として計上した(前年比+1131%)ことが、最終利益の大きな押し下げ要因となりました。

項目2025年3月期2026年3月期前期比
売上高1兆633億円1兆199億円△4.1%
営業利益989億円955億円△3.4%
経常利益1,030億円1,067億円+3.6%
当期純利益580億円416億円△28.3%

業績推移(通期)

売上高営業利益

セグメント別動向

全4セグメントのうち、基礎原料を扱う2部門が減益、高機能化を進める2部門が増益となり、明暗が分かれました。

石油化学事業 は、売上高 1,697億円(前期比 17.1%減)、営業利益 97億円(前期比 32.0%減)と大幅な減収減益でした。国内コンビナートの需要減少により出荷が落ち込んだほか、ナフサ安に伴う販売価格の下落が響きました。一方、クロロプレンゴムは需要回復の遅れはあったものの、価格是正が進んだことで一定の利益を確保しています。

クロル・アルカリ事業 は、売上高 3,460億円(前期比 7.4%減)、営業利益 19億円(前期比 79.8%減)と極めて厳しい結果となりました。南陽事業所での定期修繕規模が前期より大きかったことに加え、中国の需要低迷がアジア全域に波及し、苛性ソーダや塩ビ樹脂の海外市況が低迷しました。

機能商品事業 は、売上高 2,729億円(前期比 0.9%増)、営業利益 399億円(前期比 3.4%増)を確保しました。石英ガラスが半導体用途で苦戦したものの、ハイシリカゼオライトやジルコニアの出荷が海外向けに伸び、収益を支えました。

エンジニアリング事業 は、売上高 1,864億円(前期比 10.1%増)、営業利益 404億円(前期比 20.1%増)と 過去最高益を更新 しました。中核を担うオルガノが、日本や台湾、米国での最先端半導体工場向け水処理装置の大型プロジェクトを順調に完遂したことが大きく貢献しました。

セグメント売上高前期比営業利益前期比
石油化学1,697億円△17.1%97億円△32.0%
クロル・アルカリ3,460億円△7.4%19億円△79.8%
機能商品2,729億円+0.9%399億円+3.4%
エンジニアリング1,864億円+10.1%404億円+20.1%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
石油化学1,697億円17%97億円5.7%
クロル・アルカリ3,460億円34%19億円0.6%
機能商品2,729億円27%399億円14.6%
エンジニアリング1,864億円18%404億円21.7%

財務状況と資本政策

総資産は、前期末比817億円増の 1兆4,089億円 となりました。現金及び預金の増加が主因です。自己資本比率は 59.0%(前期末比3.3ポイント低下)と依然として高い水準を維持しており、財務の健全性は保たれています。

株主還元については、2028年3月期を最終年度とする中期経営計画に基づき、総還元性向50% を目標に掲げています。当期の年間配当は 100円(前期比据え置き)とし、これに加えて2025年8月から2026年3月までに 250億円自己株買い を実施しました。機動的な資本政策を通じて、資本効率(ROE)の改善を図る姿勢を明確にしています。

リスクと課題

今後の懸念材料として、会社側は以下のリスクを挙げています。

  • 地政学リスクの長期化: 中東情勢の悪化に伴う原油・天然ガス価格の高騰リスクが、製造コストを押し上げる懸念があります。
  • 中国経済の不透明感: 不動産市場の低迷や米中関係の緊張が続き、アジアの化学品市況が回復しないリスクがあります。
  • 為替・金融市場の変動: 金融市場の不安定化や急速な円高進行が、輸出採算を悪化させる可能性があります。

なお、2027年3月期の業績予想については、これらの不確定要素が多く、合理的な算出が困難として「未定」としています。

戦略トピック:新組織体制への移行

東ソーは、2027年3月期より報告セグメントを従来の4区分から 5区分に再編 することを発表しました。新区分は「基礎素材」「付加価値素材」「バイオサイエンス」「高機能材料」「水処理エンジニアリング」となります。

この再編は、収益変動の激しい「コモディティ(基礎素材)」と、安定成長が見込まれる「スペシャリティ(先端事業)」をより明確に分けることで、経営資源の最適配分を加速させる狙いがあります。特に成長分野である バイオサイエンス を独立したセグメントに据えることで、バイオ医薬品向け分離精製剤などの事業拡大に注力する姿勢を鮮明にしています。

AIアナリストの視点

東ソーの決算は、日本の総合化学メーカーが直面している「コモディティ(汎用品)の苦戦」と「スペシャリティ(高付加価値品)の成長」という構造的な課題を象徴する内容でした。特に、オルガノが牽引するエンジニアリング事業の営業利益(404億円)が、石油化学とクロル・アルカリの合計利益(116億円)の3倍以上に達している点は驚異的です。

米国子会社での大幅な減損は痛手ですが、これは将来に向けた「膿出し」の側面もあります。来期からのセグメント刷新により、投資家は同社の成長ドライバーであるバイオや高機能材料の進捗をより詳細に追えるようになります。就活生にとっては、従来の「重厚長大」なイメージから、半導体やバイオといった先端分野に軸足を移しつつある「変革期の企業」として捉えるのが正解でしょう。次期の予想が「未定」とされたことで、当面はマクロ市況や為替の動向に株価が左右されやすい展開が予想されます。