矢作建設、2027年3月期第1四半期決算、営業減益も純利益15%増

矢作建設の2027年3月期第1四半期決算は、売上高が前年同期比23.2%減の315億円、営業利益は57.8%減の15億円と減収減益でした。一方、投資有価証券の売却益など特別利益を計上し、親会社株主に帰属する純利益は15.3%増の29億円となりました。通期予想と配当予想を修正し、年間配当は110円に引き上げています。

決算の数字第1四半期累計
期初から3ヶ月間の累計値(前年同期比)
| 項目 | 実績 | 前年比 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 316億円 | -23.2% | 1,500億円 | 21% |
| 営業利益 | 15億円 | -57.8% | 95億円 | 16% |
| 純利益 | 30億円 | +15.3% | 93億円 | 32% |
| 営業利益率 | 4.9% | |||
この決算のポイント
- 1建築の完成工事高は前年同期比25.6%減の212億円、土木は30.3%増の92億円。
- 2受注高は前年同期比38.5%減の179億円、建築の民間受注が60.1%減と落ち込んだ。
- 3投資有価証券売却益など特別利益26億円を計上し、純利益は15.3%増の29億円。
- 4通期売上高予想は1,500億円、営業利益予想は95億円。いずれも会社が予想を修正。
- 5年間配当予想を前期実績の100円から110円へ増額し、自己資本比率は60.2%に上昇。
業績のポイント
矢作建設(矢作建設工業)は、2027年3月期第1四半期に減収減益となりました。売上高は前年同期比23.2%減の315億96百万円、営業利益は57.8%減の15億40百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は15.3%増の29億53百万円です。
- 売上高: 前年同期比23.2%減。完成工事高が14.4%減り、不動産事業等の売上高も80.7%減少。
- 営業利益: 前年同期比57.8%減。売上総利益の減少に加え、販売費及び一般管理費が前年同期より増加。
- 経常利益: 前年同期比55.4%減の16億38百万円。営業利益の落ち込みを反映。
- 純利益: 前年同期比15.3%増。投資有価証券売却益など特別利益26億20百万円を計上。
本業の減益を特別利益が補う決算となりました。純利益の増加は営業活動の改善によるものではなく、投資有価証券売却益15億49百万円や事業譲渡益10億円など、一時的な利益が寄与しています。したがって、収益力をみるうえでは純利益だけでなく、営業利益の回復と受注の動向を確認する必要があります。
- 建築民間-60.1%
- 土木官庁+4.5%
- 土木民間+56.2%
セグメント別動向
建築は売上が縮小し、土木が伸びる一方、分譲マンション関連事業の譲渡で不動産セグメントも大幅減となりました。セグメント利益の前年同期比は、建築が35.3%減、土木が29.7%増、不動産が82.7%減です。
建築セグメントは、売上高が前年同期比25.6%減の212億55百万円でした。民間向けの売上が25.7%減り、セグメント利益も減少しました。受注高も民間案件を中心に60.1%減っており、今後の工事進捗を支える受注の確保が課題です。
土木セグメントは、売上高が前年同期比30.3%増の92億90百万円、セグメント利益も増加しました。官庁向け、民間向けの双方で売上が伸び、受注高も土木全体で33.4%増加しています。公共投資やインフラ更新需要に加え、民間案件の受注増が業績を下支えしました。
不動産セグメントは、売上高が前年同期比80.7%減の10億50百万円、利益も大きく減少しました。4月1日付で分譲マンション開発・販売事業と管理事業を譲渡した影響が大きく、単純な既存事業の失速とは分けて見る必要があります。会社は経営資源を法人・官公庁向け建設事業と不動産事業に集中する方針です。
- 建築-35.3%
- 土木+29.7%
- 不動産-82.7%
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 建築 | 213億円 | 67% | 18億円 | 8.3% |
| 土木 | 93億円 | 29% | 8億円 | 8.7% |
| 不動産 | 11億円 | 3% | 3億円 | 24.5% |
財務状況と資本政策
第1四半期末の総資産は前期末から215億46百万円減の1,261億15百万円、自己資本比率は51.5%から60.2%へ上昇しました。年間配当予想は前期実績を10円上回る110円に引き上げています。
| 項目 | 2027年3月期1Q・予想 | 比較対象 |
|---|---|---|
| 総資産 | 1,261億15百万円 | 前期末比215億46百万円減 |
| 自己資本比率 | 60.2% | 前期末51.5% |
| 中間配当予想 | 55円 | 前期中間45円 |
| 期末配当予想 | 55円 | 前期末55円 |
| 年間配当予想 | 110円 | 前期実績100円 |
総資産と負債がともに減少しており、会社は売上債権や有利子負債の減少を主な要因に挙げています。四半期キャッシュ・フロー計算書は作成されていないため、営業・投資・財務活動別の資金収支は確認できません。自己株買いの記載はなく、今回の株主還元策では配当予想の増額が中心です。
通期見通し
矢作建設は2027年3月期の第2四半期累計および通期業績予想を修正しました。通期は売上高1,500億円、営業利益95億円、純利益93億円を見込んでいます。
| 指標 | 2027年3月期通期予想 | 前期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,500億円 | -11.5% |
| 営業利益 | 95億円 | -30.9% |
| 経常利益 | 93億80百万円 | -31.5% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 93億円 | +9.8% |
会社は5月12日に公表した予想を修正したと説明していますが、この短信には修正前の数値や修正理由の詳細は掲載されていません。通期予想に対する第1四半期の進捗率は売上高21.1%、営業利益16.2%、純利益31.8%です。純利益の進捗には一時的な特別利益が含まれるため、本業の進捗を判断する際は売上高と営業利益、今後の工事進捗をあわせて見る必要があります。
戦略トピック
矢作建設は不動産事業の一部を譲渡する一方、土木分野の技術力を強化するため新たな会社を連結子会社化しました。事業の選択と集中と、土木の技術基盤拡充を並行して進めています。
- 分譲マンション関連事業の譲渡: 4月1日付で、矢作地所の分譲マンション開発・販売事業を名鉄都市開発へ、矢作ビル&ライフの管理事業を名鉄コミュニティライフへ譲渡。
- 譲渡の狙い: 経営資源を法人・官公庁向けの建設事業と不動産事業に集中し、競争力と中長期的な企業価値の向上を目指す。
- 土木分野の会社取得: アクエリアスインベスコの全株式を取得し、子会社の海昌とともに連結対象に追加。法面工事の技術力と事業基盤の強化を狙う。
- 会計上の影響: 事業譲渡益10億円を特別利益に計上。会社取得に伴うのれんは33億41百万円で、取得原価の配分が未完了のため暫定額。
分譲マンション事業の譲渡で不動産売上は当面小さくなる一方、取得した会社の技術や事業基盤を土木事業にどう生かすかが中長期の焦点です。のれんの金額は暫定であり、今後の取得原価配分や事業の収益貢献を確認する必要があります。
リスクと課題
建設需要には公共投資や製造業・物流施設、データセンターなどの案件がある一方、コスト上昇と人手不足が続いています。受注高の減少が続くか、利益率を保ちながら工事を進められるかが今後の確認点です。
- 資材・エネルギー価格の変動: 資材価格の高止まりや中東情勢を背景とするエネルギー価格の変動が、工事原価を押し上げる可能性。
- 技能労働者不足と労務費上昇: 労働需給の逼迫が続けば、工期や施工体制に影響し、採算の悪化につながるおそれ。
- 受注の減少: 第1四半期の受注高は前年同期比38.5%減。特に建築の民間受注が減っており、将来の売上を確保できるかが課題。
- 民間投資の慎重化: 集合住宅では資材高騰や金利上昇への懸念から投資判断が慎重化しており、関連する需要の回復が遅れるリスク。
- 一時利益への依存: 純利益は増えたものの、営業利益は大幅減。特別利益がなくなる次期以降は、本業の利益回復が重要。
会社は建設業界の厳しい経営環境が続くと説明しています。公共投資や大型設備投資の需要を取り込みながら、受注の質と工事採算を確保できるかが、通期計画の達成を左右します。
決算発表前後の株価推移
決算発表当日の終値(2026/8/7)
1,992円
最新終値(2026/10/23)
2,083円+4.6%
※ 日次終値ベースの参考チャートです。リアルタイムの株価ではありません(株式分割調整済み、1年以上前は週次の終値)。2026/10/25更新
タグ#矢作建設#決算#決算分析#四半期決算#建設業#受注高#配当増額#不動産事業譲渡#土木事業
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コメント
純利益の増加だけを見ると好調に映りますが、営業利益が大きく減っているため、今回の決算は本業の回復を確認できた内容ではありません。投資有価証券売却益や事業譲渡益が利益を支えており、次の四半期は工事採算と受注残の積み上がりが重要です。
一方で、土木の受注・売上が伸びていることや、法面工事分野の技術基盤を取得で強化する動きは注目点です。分譲マンション事業の整理で経営資源をどこに振り向け、土木の成長を利益に結びつけられるかを追いたい決算です。
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