横浜FG・2026年3月期Q3、純利益35.4%増の850億円——貸出金利息の拡大とM&Aによる収益上乗せが寄与
売上高
3,568億円
+23.4%
営業利益
1,232億円
+32.0%
通期予想
1,510億円
純利益
850億円
+35.4%
通期予想
1,030億円
営業利益率
34.5%
横浜フィナンシャルグループが発表した2026年3月期第3四半期(2025年4月〜12月)の連結決算は、本業の儲けを示す経常利益が前年同期比 32.0%増 の 1,232億円 、純利益が同 35.4%増 の 850億円 と大幅な増益となりました。国内の金利上昇局面を背景に預貸金利息の収支が改善したほか、2025年4月に子会社化した「L&Fアセットファイナンス」の連結貢献が業績を押し上げました。通期目標に対する純利益の進捗率は 82.5% に達しており、極めて堅調な推移を見せています。
業績のポイント
当第3四半期の連結累計期間における経常収益は、前年同期比 23.4%増 の 3,567億円 となりました。この増収の主因は、日本国内の金利上昇に伴う貸出金利息の増加にあります。ソリューション営業の深化・拡大を掲げる同社は、法人向け融資の利回り向上に加え、法人役務(手数料ビジネス)も堅調に推移させ、資金運用収益の拡大を実現しました。
利益面では、経常利益が前年同期から 298億円 増加して 1,232億円 に、親会社株主に帰属する四半期純利益は 222億円 増加して 850億円 となりました。この大幅増益には、旧三井住友トラスト・ローン&ファイナンス(現:L&Fアセットファイナンス)の買収が大きく寄与しており、同社単体での利益貢献(のれん等償却後)は 36億円 に上ります。コスト面では預金利息の増加により資金調達費用が 379億円 増加したものの、収益の伸びがそれを大きく上回り、銀行本業の強さを示す結果となりました。
| 連結経営指標 | 2025年3月期 Q3 | 2026年3月期 Q3 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 経常収益 | 2,889億円 | 3,567億円 | +23.4% |
| 経常利益 | 933億円 | 1,232億円 | +32.0% |
| 親会社株主に帰属する純利益 | 627億円 | 850億円 | +35.4% |
| 1株当たり四半期純利益 | 54.07円 | 74.73円 | +38.2% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
同社グループは銀行業の単一セグメントですが、傘下3行(横浜銀行、東日本銀行、神奈川銀行)の合算ベースでの内訳を見ると、各行の役割と課題が鮮明になっています。中核の横浜銀行は、コア業務純益が前年同期比 264億円増 の 1,118億円 となり、グループ全体の成長を牽引しました。特に国内業務部門での資金利益が 218億円 増加しており、金利上昇の恩恵を最も強く受けています。
一方、東日本銀行はコア業務純益が 64億円 と、前年同期比で 5億円の減少 となりました。これは資金利益や役務利益が微増したものの、経費の増加やその他業務利益の減少が響いた形です。神奈川銀行については、コア業務純益が 21億円 (前年同期比 1億円増 )と着実な推移を見せています。
特筆すべきは、グループ全体での与信関係費用(貸倒引当金など)の抑制です。3行合算での与信関係費用は、前年同期の 76億円 からわずか 9億円 へと大幅に減少しました。これは不良債権処理が想定以上に進んでいないことや、貸倒引当金の戻入益が発生したことによるもので、最終利益を押し上げる一要因となっています。
| 銀行別業績(単体合算) | コア業務純益 | 前年同期比 | 四半期純利益 |
|---|---|---|---|
| 横浜銀行 | 1,118億円 | +264億円 | 749億円 |
| 東日本銀行 | 64億円 | △5億円 | 39億円 |
| 神奈川銀行 | 21億円 | +1億円 | 14億円 |
| 3行合算 | 1,203億円 | +260億円 | 803億円 |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 銀行業(横浜銀行単体) | 1,809億円 | 51% | 1,118億円 | 61.8% |
| 銀行業(東日本銀行単体) | 191億円 | 5% | 64億円 | 33.7% |
| 銀行業(神奈川銀行単体) | 64億円 | 2% | 21億円 | 33.1% |
戦略トピック:L&Fアセットファイナンスの子会社化
当期の最重要戦略として、2025年4月に三井住友信託銀行グループから「株式会社L&Fアセットファイナンス」の株式85.0%を取得し、連結子会社化したことが挙げられます。取得価額は 544億円 です。同社は不動産担保融資に特化したノウハウを持ち、銀行が十分に対応できていなかった外国人や高齢者、築古物件への融資など、多様化する金融ニーズを取り込むための強力な武器となっています。
このM&Aは既に計数面でも成果を上げており、連結純利益に対して 36億円 の上乗せ効果をもたらしました。人口減少や社会構造の変化により、空き家や大相続時代の到来といった地域課題が増加する中、専門性の高い金融機能をグループ内に取り込むことで、非金利収益の拡大と新たな顧客基盤の創出を狙っています。
財務状況と資本政策
総資産は2025年3月末比で 4,273億円 増加し、 25兆2,205億円 となりました。主要な項目では、貸出金が 17兆6,408億円 ( 8,952億円増 )と伸長した一方で、預金は公金預金の減少を個人・法人預金の増加で補いきれず、 20兆3,235億円 ( 894億円減 )となっています。
資本政策においては、積極的な株主還元姿勢を鮮明にしています。今期の年間配当予想は 37円 (前期は29円)を維持しており、前期比で 8円の増配 となる見込みです。また、当期間中に自己株式の取得を進めており、バランスシート上の自己株式は前期末の 16億円 から 157億円 へと大幅に増加しました。これは、利益成長を背景とした機動的な資本効率の向上と株主還元の意思表明と言えます。
通期見通し
2026年3月期の通期連結業績予想については、期初予想を据え置いています。しかし、親会社株主に帰属する当期純利益の予想 1,030億円 に対し、第3四半期時点での進捗率は 82.5% と非常に高く、上振れも期待できる状況です。今後、年度末にかけての金融市場の動向や、貸倒引当金の積み増しなどの変動要因を注視する必要があります。
| 連結通期予想 | 2025年3月期 実績 | 2026年3月期 予想 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 経常利益 | 1,227億円 | 151,000百万円 | +23.0% |
| 親会社株主に帰属する純利益 | 828億円 | 103,000百万円 | +24.3% |
| 1株当たり当期純利益 | 71.32円 | 90.70円 | +27.2% |
リスクと課題
好調な業績の裏で、いくつかの留意点も示されています。第一に、有価証券の含み損益です。外債などを含む債券ポートフォリオにおいて、金利上昇に伴う時価下落が発生しており、債券の評価損益はグループ連結で 1,017億円の含み損 (2025年12月末時点)となっています。ただし、株式の含み益が 1,672億円 あるため、その他有価証券全体では 1,128億円の含み益 を維持しています。
第二の課題は、預金コストの上昇です。市場金利の上昇により、預金利息(資金調達費用)が前年同期比で約 1.9倍 に増加しています。貸出金利回りの改善が先行していますが、今後は預金獲得競争によるコスト増が利鞘を圧迫するリスクがあり、粘着性の高い個人預金の維持が重要な鍵となります。
横浜フィナンシャルグループの決算は、まさに「金利のある世界」への適応力の高さを示す内容でした。
注目すべきは、単なる利鞘改善だけでなく、M&Aを戦略の柱として機能させている点です。L&Fアセットファイナンスの連結化は、低収益な従来型銀行業務から、専門性の高い高収益分野(不動産担保融資等)へのポートフォリオ転換を加速させています。これは地域銀行が人口減少下で生き残るための一つの解となるでしょう。
懸念点としては、東日本銀行の収益性が横浜銀行と比較して伸び悩んでいることが挙げられます。また、債券の含み損が1,000億円規模に達しており、今後の金利動向次第では更なる評価損の拡大や、入れ替え売却に伴う損失計上が利益を圧迫する可能性があります。
しかし、純利益進捗率が80%を超え、自己株買いと増配を同時に進めるなど、資本効率と株主還元の両立において地銀セクター内で一歩抜き出た存在感を示しています。
