全国保証・2026年3月期通期、営業収益3.1%増の587億円——営業利益は1.4%減も経常増益、次期も増配を予定
売上高
587億円
+3.1%
通期予想
606億円
営業利益
414億円
-1.4%
通期予想
420億円
純利益
325億円
+1.4%
通期予想
327億円
営業利益率
70.5%
独立系住宅ローン保証最大手の全国保証が発表した2026年3月期連結決算は、営業収益が前期比 3.1%増 の 58,739百万円 となった。営業利益は人件費やシステム関連費用の増加により同 1.4%減 の 41,382百万円 となったものの、受取利息や持分法投資利益の拡大により、経常利益は同 4.6%増 の 46,554百万円 を確保した。同社は「株主還元の積極化」を掲げ、配当性向の引き上げや機動的な自社株買いを継続しており、強固な収益基盤を背景に安定した経営を維持している。
全国保証 2026年3月期 通期決算
さくら × けんじ の対話形式解説
業績のポイント
2026年3月期の連結業績は、売上高にあたる営業収益が 58,739百万円 (前期比 +3.1% )、純利益が 32,526百万円 (同 +1.4% )と、増収および最終増益を達成した。国内の住宅市場において、資材価格の高騰等により新設住宅着工戸数が減少する逆風はあったものの、都市部を中心とした中古住宅取引の活性化が収益を支えた格好だ。住宅ローン市場全体では、物件価格の上昇に伴う借入額の増加が追い風となり、保証料収入の安定的な積み上げに寄与した。
一方で、利益面では内訳に変化が見られる。営業利益は 41,382百万円 (前期比 -1.4% )とわずかに減少した。これは、債務保証損失引当金の繰入額が 5,983百万円 (前期比 +35.0% )に増加したことや、将来の成長に向けた人的資本・システムへの投資を優先したことが要因である。しかし、営業外収益において受取利息が 4,731百万円 (同 +19.2% )と大幅に伸びたほか、持分法投資利益 1,193百万円 を計上したことで、経常利益は 46,554百万円 と過去最高水準を更新した。本決算は、本業の堅調さと資産運用の効率化がバランスよく機能した結果といえる。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 営業収益 | 56,972 | 58,739 | +3.1% |
| 営業利益 | 41,974 | 41,382 | △1.4% |
| 経常利益 | 44,518 | 46,554 | +4.6% |
| 当期純利益 | 32,089 | 32,526 | +1.4% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
同社は住宅ローンを中心とした「信用保証事業」の単一セグメントである。当期は中期経営計画「Next Phase」の最終年度として、「基幹事業の拡大」と「周辺事業への進出」の二軸で戦略を展開した。主力の住宅ローン保証では、提携金融機関との連携を深める「エリア制度」を導入し、地域ごとのニーズに即した商品提供を実施。その結果、新規保証の獲得に加え、既存の保証債務残高の維持・拡大に成功した。特に中古住宅市場でのインオーガニックな成長が顕著で、ABL(動産・債権担保融資)の手法を用いた保証債務の積み上げが収益に大きく貢献している。
周辺事業においては、将来の収益源確保に向けた種まきを加速させた。当期中にシナジーが期待できる企業2社と資本業務提携を締結したほか、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を通じてスタートアップ企業3社へ出資を実行した。また、グループ会社の「みのり信用保証」では5つの金融機関と、「あけぼの債権回収」では1つの機関と新たに提携。これにより、住宅ローンの入り口(保証)から出口(債権回収)までを網羅する総合保証グループとしての体制が一段と強化された。これらの取り組みは単年度の利益貢献こそ限定的だが、中長期的な成長の「のりしろ」として投資家からも注目されている。
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 信用保証事業 | 587億円 | 100% | 414億円 | 70.5% |
財務状況と資本政策
財務の健全性は極めて高い水準を維持している。総資産は前期末比で 8,432百万円 増加し、 500,831百万円 となった。投資有価証券や長期貸付金などの固定資産が同 11.4%増 と伸びており、余剰資金を積極的に運用に回している姿勢がうかがえる。自己資本比率は 48.9% (前期末は48.5%)と高水準をキープしつつ、1株当たり純資産は 1,845.14円 に向上した。
資本政策では、株主への利益還元を経営の最重要課題の一つに据えている。2026年3月期の年間配当は、株式分割(2025年4月1日付、1対2)を考慮した実質ベースで増配となる 120円 を実施。さらに、当期中に 7,000百万円 の自己株式取得(自社株買い)を完了し、発行済株式の消却も進めている。これにより、連結配当性向は 49.2% まで上昇した。同社は次期(2027年3月期)についても年間 123円 への増配と、配当性向 50.0% を目標として掲げており、「総還元性向の向上」に対する強い意志を示している。
通期見通し
2027年3月期の通期連結業績は、営業収益 60,600百万円 (前期比 +3.2% )、営業利益 42,000百万円 (同 +1.5% )と、引き続き増収増益を見込む。住宅ローン市場は、政府の支援策や底堅い雇用環境により安定的に推移すると予測される。同社は新たな中期経営計画「Go for 50」を策定し、住宅ローン保証を中核とした住生活・金融分野の総合グループ形成を目指す。特にIT技術を活用した保証審査の高度化や、デジタルチャネルの強化により、さらなる業務効率化と顧客利便性の向上を図る方針だ。
| 項目 | 2026年3月期実績 | 2027年3月期予想 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 営業収益 | 58,739 | 60,600 | +3.2% |
| 営業利益 | 41,382 | 42,000 | +1.5% |
| 経常利益 | 46,554 | 47,200 | +1.4% |
| 当期純利益 | 32,526 | 32,700 | +0.5% |
リスクと課題
同社の事業成長における主な懸念要因は以下の通りである。
- 人口減少と少子高齢化: 長期的な国内住宅需要の減退は避けられず、新規保証案件の獲得競争が激化するリスクがある。
- 金利動向の変化: 国内の金利上昇局面においては、住宅ローンの新規実行件数が抑制される懸念がある。一方で、同社は運用の受取利息増というメリットも享受するため、金利感応度の管理が重要となる。
- 不動産価格の高止まり: 資材費や人件費の上昇による住宅価格の高騰が、個人の購買意欲を冷え込ませるリスクがある。
- 国際情勢の不透明感: 原材料価格の変動や経済環境の変化が、提携金融機関の融資姿勢や保証先のデフォルト率に影響を与える可能性がある。
全国保証の決算において特筆すべきは、70.5%という驚異的な営業利益率を維持している点です。これは一般的な事業会社では考えられない水準であり、独立系としての地位と、規模の経済が働いている証左といえます。
今回の決算では、本業の利益がわずかに減少したものの、資産運用の収益(営業外収益)がそれを補完する形となっており、ポートフォリオの多角化が功を奏しています。2025年4月の株式分割を経て、投資家層の拡大も期待される中、配当性向を50%まで引き上げるという発表は、市場に対する強いコミットメントとして好意的に受け止められるでしょう。
今後の焦点は、新中計「Go for 50」で掲げる「住生活・金融分野の総合グループ形成」が、住宅ローン保証以外の収益柱をどれだけ早期に確立できるかにあります。CVCを通じたスタートアップとの連携が、単なる投資で終わらず具体的なサービスに結実するかが鍵となります。
