ZOZO・2026年3月期Q3、売上高6.7%増の1,718億円——商品取扱高が5,000億円を突破、海外プラットフォーム連結も寄与
売上高
1,718億円
+6.7%
通期予想
2,315億円
営業利益
549億円
+6.1%
通期予想
692億円
純利益
370億円
+2.9%
通期予想
478億円
営業利益率
32.0%
ZOZOが発表した2026年3月期第3四半期累計決算は、売上高が前年同期比 6.7% 増の 1,718億500万円、営業利益が同 6.1% 増の 549億2,100万円 と増収増益を確保しました。主力の「ZOZOTOWN」における積極的な販促に加え、海外ファッションプラットフォーム 「LYST」の完全子会社化 が寄与し、グループ全体の商品取扱高(GMV)は 5,029億7,200万円 と大台の5,000億円を突破しました。物価上昇による消費意欲の減退リスクを抱えつつも、会員基盤の拡大と物流効率の改善により、増益基調を維持しています。

業績のポイント
当第3四半期累計期間は、国内ファッション市場における底堅い需要を取り込み、各利益項目で前年同期を上回る着地となりました。売上高は 1,718億500万円(前年同期比 +6.7%)、親会社株主に帰属する四半期純利益は 369億7,600万円(同 +2.9%)を記録しています。増益の主因は、アクティブ会員数が前年同期比で 90.7万人 増加し、1,211万人 に達したことによる購買ボリュームの拡大です。
利益面では、物流コストの適正化が大きく貢献しました。2025年10月より 配送委託先との契約条件を改善 したことで、荷造運賃の対商品取扱高比率を 0.7ポイント 改善させるなど、EC運営の効率化を徹底しています。一方で、海外事業「LYST」の連結に伴うのれん償却費の発生や、集客強化のための広告宣伝費増(同 +0.2ポイント)といったコスト増加要因もありましたが、これらを売上総利益の伸びで吸収しました。
| 項目 | 当期実績(累計) | 前年同期実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 商品取扱高(GMV) | 5,029億円 | 4,611億円 | +9.1% |
| 売上高 | 1,718億円 | 1,610億円 | +6.7% |
| 営業利益 | 549億円 | 517億円 | +6.1% |
| EBITDA | 606億円 | 554億円 | +9.5% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力である ZOZOTOWN事業 は、商品取扱高が 3,870億1,500万円(前年同期比 +4.1%)と安定して成長しています。5月や10月に実施した「ZOZOWEEK」やブラックフライデー等の大型セールが奏功し、新規会員の獲得が順調に進みました。一方で、高単価な秋冬物の販売が気温の高止まりにより一部軟調となったものの、コスメカテゴリー「ZOZOCOSME」への注力や出店ショップ数の増加(1,712ショップ)が下支えしました。
新たに連結加わった海外プラットフォーム LYST事業 は、商品取扱高 319億800万円 を計上し、グループの取扱高拡大に寄与しました。LYSTは成果報酬型の手数料モデルを採用しているため、国内事業と比較して売上高への変換効率は低いものの、グローバル市場における非連続な成長に向けた布石となります。これに対し、BtoB事業 は商品取扱高が前年同期比 37.3% 減の 63億2,300万円 と大幅に縮小しました。これは、受託先ブランドの戦略変更や自社EC強化に伴う影響であり、収益性の観点から事業ポートフォリオの整理が進んでいます。
| セグメント・区分 | 商品取扱高 | 前年同期比 | 売上高 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| ZOZOTOWN事業 | 3,870億円 | +4.1% | 1,188億円 | +3.0% |
| LINEヤフーコマース | 578億円 | +15.4% | 177億円 | +15.4% |
| LYST事業 | 319億円 | - | 43億円 | - |
| BtoB事業 | 63億円 | △37.3% | 9億円 | △39.6% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| ZOZOTOWN事業 | 1,188億円 | 69% | — | — |
| LINEヤフーコマース | 177億円 | 10% | — | — |
| LYST | 44億円 | 3% | — | — |
財務状況と資本政策
2025年12月末時点の総資産は 1,876億2,900万円 と、前期末から微減(△0.1%)となりました。流動資産において現金及び預金が 450億円 減少した一方で、固定資産ではLYSTの買収に伴う 「のれん」が209億円増加 するなど、将来の成長に向けた資産構成へのシフトが見られます。自己資本比率は 50.9% と、前期末の52.6%から低下したものの、依然として強固な財務基盤を維持しています。
株主還元については、機動的な資本政策を遂行しています。2025年4月より実施した自己株買いにより、当期間中に 99億9,900万円(約654万株)を取得し、その後消却を実施しました。また、2025年4月1日付で実施した 1株につき3株の株式分割 を考慮した年間配当予想は1株当たり 39.00円 を据え置いており、利益成長に伴う安定的な還元を継続する方針です。
戦略的判断:不採算事業の整理
今決算において特筆すべきは、独自商材の開発に関わる事業の整理です。同社はマルチサイズ(MS)展開やブランド生産支援事業「Made by ZOZO」について、今後の事業性を総合的に検討した結果、事業終了を決定 しました。これに伴い、当第3四半期に固定資産の減損損失 3億2,600万円、事業整理損失 3億8,000万円 をそれぞれ 特別損失 として計上しています。この判断は、リソースを主力のモール事業や成長領域であるLYST、広告事業へ集中させる「選択と集中」の現れと言えます。
通期見通し
2026年3月期の通期業績予想については、2025年7月に公表した数値を据え置いています。下期は気温変動などの外部要因による不透明感はあるものの、LYSTの通年寄与や物流コストの削減効果を見込んでいます。
| 項目 | 前回予想 | 今回修正 | 前期実績 | 対前期増減 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,315億円 | 据え置き | 2,132億円 | +8.6% |
| 営業利益 | 692億円 | 据え置き | 647億円 | +6.9% |
| 当期純利益 | 478億円 | 据え置き | 453億円 | +5.4% |
リスクと課題
同社が直面している主なリスクは以下の通りです。
- 気候変動の影響: 第2四半期・第3四半期に見られた気温の高止まりは、冬物衣料の需要に直結します。今後も暖冬傾向が続いた場合、取扱高の伸びが鈍化する懸念があります。
- 物価上昇と消費マインド: 恒常的な物価高による実質賃金の伸び悩みは、ファッションへの支出を抑制するリスク要因です。
- LYSTのPMI(買収後の統合): 海外事業の収益化は道半ばであり、グローバル市場での競争激化や為替変動が利益成長の重石となる可能性があります。
- 配送コスト: 物流2024年問題以降、人件費上昇に伴う配送単価の引き上げ圧力は継続的なリスクとして注視が必要です。
今回の決算は、国内の「ZOZOTOWN」が成熟期にありながらも、配送効率の改善(配送委託条件の見直し)という実利的な施策によって利益率を死守している点が評価できます。特筆すべきは、長年試行錯誤してきた「Made by ZOZO」や「マルチサイズ事業」に見切りをつけた決断です。これにより、独自のモノづくりから、プラットフォームとしてのメディア・広告・グローバル展開へ完全に舵を切ったことが鮮明になりました。
- 強み: 1,200万人を超える圧倒的なアクティブユーザー数と、物流改善によるマージン確保能力。
- 懸念点: LYSTの貢献が現状では「取扱高(GMV)」の嵩上げに留まっており、純利益への貢献が本格化するまでには時間を要する点。
- 今後の焦点: 5,000億円の大台を超えたGMVを背景に、広告事業などの「在庫を持たない高利益率ビジネス」をどこまでスケールさせ、ECモール以上の付加価値を生み出せるかが株価・成長の鍵となります。
