大日本印刷、オーストリア上場企業へのTOBに96.55%応募、実質成立で完全子会社化へ
大日本印刷は8月21日、オーストリアの決済ICカード・IDカード大手AUSTRIACARD HOLDINGS AGに対するTOBに発行済み株式の96.55%が応募し、成立条件の75%以上を大きく上回ったと発表した。オーストリア外資規制の承認が残るが、取得できれば完全子会社化へ進む。

TOB結果:96.55%が応募、成立条件を大幅に上回る
大日本印刷は2026年6月12日から8月21日まで、AUSTRIACARD HOLDINGS AGの全普通株式を対象にTOBを実施した。買付価格は1株当たり10.0ユーロ。応募株数は35,099,096株で、発行済み株式に対する割合は96.55%に達した。これは成立条件である75%以上を21.55ポイント上回る水準で、96.55%の高水準応募となった。ただし、2026年8月25日時点でギリシャ・ルーマニアの外資規制承認とオーストリア・ドイツ・トルコの競争法承認は取得済みだが、オーストリア外資規制の承認が未了。このためTOBは未成立であり、同承認が得られ次第、2027年3月期第2四半期中に応募株式の取得を完了し、AUSTRIACARDを連結子会社化する予定だ。
対象会社の業績と買収価額
AUSTRIACARDはオーストリア・ウィーンに本社を置き、欧州・アフリカ・北米で決済ICカード、国民IDソリューション、バリアブルセキュリティ印刷を展開する。グループ創業は1897年、持株会社は2010年設立。大株主はNikolaos Lykos氏で74.58%を保有するが、DNPとは資本・人的・取引関係はない。直近3年間の連結業績は以下の通り。2025年12月期は減収減益だったが、これは世界経済の不透明感による需要減退が主因とみられる。
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 当期純利益 |
|---|---|---|---|
| 2023年12月期 | 364.6百万EUR | 31.4百万EUR | 15.8百万EUR |
| 2024年12月期 | 392.3百万EUR | 34.1百万EUR | 19.0百万EUR |
| 2025年12月期 | 360.2百万EUR | 29.7百万EUR | 14.7百万EUR |
取得価額は応募株式35,099,096株に対し約351百万ユーロ(約652億円、1ユーロ185.66円換算)。DNPは従来同社株式を保有しておらず、決済完了後の議決権所有割合は96.55%となる。オーストリア外資規制承認を条件に、2027年3月期第2四半期中の連結化を見込む。
今後の手続き:スクイーズアウトで完全子会社化へ
応募率96.55%はオーストリア法におけるスクイーズアウト決議要件の90.00%を超えており、DNPは外資規制承認の取得を前提に、株主総会決議を経てスクイーズアウトを実施し、AUSTRIACARDを完全子会社化する方針を示した。これに伴い、同社株式はウィーン証券取引所およびユーロネクスト・アテネ証券取引所で上場廃止となる見通し。また、残存株主の売却機会を提供するため、2026年8月26日から11月26日まで3カ月間の追加公開買付期間が設定される。DNPは本買収により、国内で強みを持つセキュリティ印刷・ICカード事業を欧州・アフリカ・北米に拡大し、政府発行IDや決済カードの需要を取り込む狙いとみられる。業績への影響は軽微としているが、完全子会社化後のPMI(買収後統合)が今後の焦点となる。
開示前後の株価推移
開示当日の終値(2026/8/26)
3,133円
最新終値(2026/10/23)
2,843.5円-9.2%
※ 日次終値ベースの参考チャートです。リアルタイムの株価ではありません(株式分割調整済み、1年以上前は週次の終値)。2026/10/25更新
タグ#大日本印刷#TOB結果#M&A#AUSTRIACARD#決済ICカード
この記事はいかがでしたか?
クリックで反応を送信(登録不要)
コメント
TOB応募率96.55%は異例の高水準で、株主の賛同はほぼ確定的。オーストリア外資規制が最終ハードルだが、EU内案件で競争法承認済みのため大きな障害は想定しにくい。対象会社の2025年12月期は減収減益だが、欧州のデジタルID・キャッシュレス化は構造的成長分野。DNPは国内市場の成熟を踏まえ、海外成長戦略の布石として本件を位置づけたとみられる。取得価格は2025年純利益の約24倍と割高だが、シナジー創出で評価できるかが焦点。
Googleで業界ダイジェストを優先表示
Google検索の「トップニュース」やAIによる概要で、当サイトの記事が見つけやすくなります。



