
北海道電力、2027年3月期第1四半期決算、増収も営業利益44%減で通期予想据え置き
売上高
2,145億円
+5.9%
通期予想
9,700億円
営業利益
244億円
-44.3%
通期予想
480億円
純利益
148億円
-52.0%
通期予想
220億円
営業利益率
11.4%
北海道電力が30日発表した2027年3月期第1四半期決算は、売上高が前年同期比5.9%増の2,144億81百万円となった一方、燃料費調整の期ずれ影響で大幅減益となり、営業利益は44.3%減の244億49百万円、純利益は52.0%減の147億77百万円に落ち込んだ。通期予想は据え置き、年間配当は前期比1円増の33円を計画する。
業績のポイント
北海道電力(北海道電力)が2026年7月30日に発表した2027年3月期第1四半期(2026年4~6月期)の連結決算は、売上高が前年同期比5.9%増の2,144億81百万円となり、2期ぶりの増収となった。主力の電気事業では、相対販売の増加による他社販売電力料の伸びが寄与し、営業収益は2,024億95百万円(前年同期比6.3%増)に拡大した。
しかし、利益面では大幅な減益を余儀なくされた。営業利益は前年同期比44.3%減の244億49百万円、経常利益は55.0%減の187億64百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は52.0%減の147億77百万円。最大の減益要因は、燃料費等調整制度の期ずれ影響が前年同期の差益から差損に転じたことだ。前年第1四半期には燃料費調整制度により収支が押し上げられたが、当期は逆に収益を圧迫する形となり、営業利益段階で約200億円の下押し要因となった。これに支払利息の増加やデリバティブ損失計上なども重なり、経常利益は前年同期の半分以下に縮小した。
通期見通しについては、売上高9,700億円(前期比13.3%増)、営業利益480億円(同34.5%減)、純利益220億円(同50.0%減)の従来予想を据え置いた。期ずれ影響は年度を通じれば平準化される見込みだが、燃料価格のボラティリティや泊発電所の再稼働時期が収益の大きな変動要因となる。
業績推移(通期)
セグメント別動向
北海道電力グループの報告セグメントは「北海道電力」(発電・小売りが中心)、「北海道電力ネットワーク」(送配電)、「その他」の3つで構成される。今第1四半期の外部売上高とセグメント利益(経常利益ベース)は以下の通り。
| セグメント | 売上高(百万円) | 構成比 | セグメント利益(百万円) |
|---|---|---|---|
| 北海道電力 | 165,858 | 77.3% | 21,201 |
| 北海道電力ネットワーク | 38,067 | 17.7% | △3,278 |
| その他 | 10,556 | 4.9% | 2,687 |
「北海道電力」セグメントは、相対販売の拡大を主因に売上高が前年同期比で増加した。しかし、燃料費調整制度の期ずれ差損が重くのしかかり、セグメント利益は大きく減少した。発電部門では原子力発電設備の安全対策投資が続いており、泊発電所3号機の再稼働に向けた工事が進展しているものの、収益貢献はまだ見込めていない。
「北海道電力ネットワーク」は、安定した託送収入により売上高を伸ばしたが、減価償却費や修繕費などの固定費負担が重く、3,278百万円のセグメント損失を計上した。前年同期比でも赤字幅が拡大しており、固定資産の効率的な運用とコスト削減が課題だ。なお、同社は2020年の法的分離により設立され、北海道エリアの送配電網を一元的に管理している。
「その他」には情報通信や設備工事などの子会社が含まれ、売上高は順調に推移。利益も前年同期比で改善した。全体として、発電・小売りの収益悪化が連結業績の足を引っ張る格好となっている。
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 北海道電力 | 1,659億円 | 77% | - | - |
| 北海道電力ネットワーク | 381億円 | 18% | - | - |
| その他 | 106億円 | 5% | - | - |
財務状況と資本政策
当第1四半期末の総資産は前連結会計年度末比646億16百万円増の2兆5,356億67百万円。カーボンニュートラル対応や電力需要増に対応した固定資産投資が嵩み、固定資産仮勘定(建設仮勘定など)が大きく膨らんだ。とくに泊発電所の安全対策工事や再エネ導入拡大に向けた設備投資が加速している。
負債は503億79百万円増の2兆477億93百万円。有利子負債の増加が主因で、長期借入金が前年末比1,026億円増の6,430億円となった一方、社債は500億円減少。純資産は親会社株主に帰属する四半期純利益の計上などにより142億37百万円増の4,878億74百万円。この結果、自己資本比率は18.5%から18.6%にわずかに改善したが、依然として低水準であり、財務安全性の観点からは予断を許さない。
株主還元では、2027年3月期の年間配当金を前期比1円増の33円(中間16.5円・期末16.5円)に増配する予定。B種優先株式についても年300万円の配当を継続する方針だ。増配は3期連続となり、株主還元の姿勢が強化されている点は評価できる。ただし、純利益が大きく落ち込む中での増配は、配当性向の上昇を招くため、持続性には注意が必要だ。四半期キャッシュ・フロー計算書は作成されていないが、現金及び預金は期首の1,846億円から1,600億円に減少しており、投資と配当がキャッシュを圧迫している可能性がある。
リスクと課題
決算短信や補足資料で示された主なリスク・課題は以下の通り。
- 燃料価格の変動リスク:発電燃料のLNG・石炭価格は国際情勢に左右されやすく、燃料費調整制度のタイムラグも収益の不安定要因となる。
- 泊発電所再稼働の不確実性:安全審査や地元同意のプロセスが長期化する可能性があり、再稼働時期は見通せない。再稼働が遅れれば、代替燃料費や固定費回収の問題が残る。
- 競争激化:電力小売りの全面自由化により新電力との競争が続いており、顧客離れが進めば販売数量減と値下げ圧力につながる。
- 電力需要の構造変化:半導体工場やデータセンター誘致による需要増が期待される一方、省エネや人口減少による需要減も見込まれ、将来の設備投資の回収見通しに影響を与える。
- 気候変動対応:脱炭素化の流れが加速する中、再エネ導入や水素・アンモニア混焼などの技術開発が急務だが、巨額の投資負担が伴う。
これらのリスクを踏まえ、会社は中長期的な収益基盤の強化に向け、泊発電所の再稼働と再エネ拡大の両輪で安定供給と脱炭素の両立を目指すとしている。
通期見通し
2027年3月期通期の連結業績予想は期初から変更なく、売上高9,700億円(前期比13.3%増)、営業利益480億円(同34.5%減)、経常利益300億円(同51.1%減)、純利益220億円(同50.0%減)を見込む。第1四半期進捗率は売上高で22.1%、営業利益で50.9%と、利益面ではやや高めのスタートだが、燃料調整の期ずれが年度後半に逆作用する可能性もあり、楽観はできない。
| 項目 | 前回予想 | 前期実績 (2026/3期) |
|---|---|---|
| 売上高 | 9,700億円 | 8,565億円 |
| 営業利益 | 480億円 | 733億円 |
| 経常利益 | 300億円 | 613億円 |
| 純利益 | 220億円 | 440億円 |
会社は、相対販売の拡大や北海道エリアの電力需要増加を増収要因とする一方、燃料費調整の期ずれ差損や減価償却費の増加が利益を下押しすると説明している。前提となる原油価格や為替の動向次第で業績は大きく変動するため、今後の四半期ごとの状況を注視する必要がある。
戦略トピック
今第1四半期に特筆すべき戦略的な動きとしては、会計方針の変更と泊発電所の安全対策進展が挙げられる。
会計方針では、電源設備等の建設に充当した資金にかかる支払利息を、従来の発生時費用処理から資産の取得原価に算入する方法に変更した。これは泊発電所3号機の安全対策工事について、2025年4月の長期脱炭素電源オークション落札や原子炉設置変更許可の取得により投資回収の予見性が高まったことを背景とするもの。この変更により第1四半期の経常利益は1億10百万円、純利益は78百万円押し上げられた。
泊発電所の再稼働に向けては、3号機の安全対策工事が進行中で、テロ対策施設(特定重大事故等対処施設)の設置などが進められている。工事完了時期や地元の理解状況など依然不透明要素は多いが、再稼働が実現すれば収益構造が大きく改善する可能性がある。年間数百億円の燃料費削減や稼働に伴う固定費回収により、大幅な利益改善が期待されるからだ。北海道電力にとって、泊再稼働は長年の経営課題であり、引き続き最大の注目点である。
また、カーボンニュートラル実現に向け、苫東厚真発電所におけるアンモニア混焼実証や、洋上風力発電の事業化調査なども着実に進められている。これらの成長投資は短期的には負担となるが、長期的な企業価値向上には不可欠な布石と言える。
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今期第1四半期は増収ながら、燃料費調整の期ずれによる差損で大幅な減益となり、収益構造の脆弱さを露呈した。本質的な稼ぐ力が伸び悩む中、泊発電所の再稼働が実現するまでは、外部環境に左右されやすい不安定な収益が続くだろう。
好材料は、3期連続の増配と相対販売の拡大だ。株主還元を重視する姿勢は評価されるが、利益の減少下での増配は配当性向を70%近くに押し上げる可能性があり、今後の利益回復が伴わなければ維持は難しい。
泊再稼働に関しては、原子炉設置変更許可を取得したことで一歩前進したが、安全対策工事の完了と地元同意という高いハードルが残る。仮に2028年以降に再稼働がずれ込めば、代替燃料費の負担が続き、財務体質の改善は遅れる。投資家は再稼働の具体的スケジュールと、成長投資の回収シナリオを冷静に見極める必要がある。
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