コーエーテクモ・2026年3月期通期、純利益13.8%増の428億円で過去最高——『仁王3』等ヒット、資産運用も利益を押し上げ
売上高
884億円
+6.3%
通期予想
900億円
営業利益
372億円
+15.7%
通期予想
320億円
純利益
428億円
+13.8%
通期予想
310億円
営業利益率
42.0%
コーエーテクモホールディングスが発表した2026年3月期連結決算は、売上高が前期比6.3%増の883億9,300万円、純利益が同13.8%増の428億3,000万円となり、売上高・経常利益・純利益の各項目で過去最高を更新した。主力タイトル『仁王3』のシリーズ最速ヒットに加え、機動的な有価証券運用による営業外収益の拡大が業績を大きく押し上げた。次期については、中長期の飛躍に向けた人的資本投資や開発体制の拡充を優先し、増収減益の保守的な予想を掲げている。
コーエーテクモホールディングス 2026年3月期 通期決算
さくら × けんじ の対話形式解説
業績のポイント
2026年3月期の業績は、主力であるエンタテインメント事業が牽引し、増収増益の着地となった。売上高は883億9,300万円(前期比+6.3%)、営業利益は371億6,800万円(同+15.7%)と、本業の稼ぐ力が着実に伸長した。特筆すべきは、有価証券の売却益などを含む経常利益が570億円(同+14.0%)に達した点だ。同社特有の強みである「財テク」を駆使した資産運用が、地政学リスクや関税政策による不透明な市場環境下でも、親会社株主に帰属する当期純利益の過去最高更新を強力に支えた。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 831億円 | 883億円 | +6.3% |
| 営業利益 | 321億円 | 371億円 | +15.7% |
| 経常利益 | 499億円 | 570億円 | +14.0% |
| 純利益 | 376億円 | 428億円 | +13.8% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
エンタテインメント事業は、売上高825億4,100万円、セグメント利益366億4,200万円(利益率44.3%)と、グループ全体の利益の大部分を稼ぎ出した。新作タイトルでは、2月に発売した『仁王3』がシリーズ最速で100万本を突破し、シリーズ累計では1,000万本を突破する大ヒットを記録。また、任天堂と協力した『ぽこ あ ポケモン』も発売4日で220万本を突破するなど、強力なIP(知的財産)の活用が収益に結実した。スマートフォン向けでは『三國志 覇道』や『信長の野望 覇道』などの既存作が安定収益を維持し、IP許諾による収益も継続的に寄与している。
アミューズメント事業は、既存店の好調な推移により売上高47億8,200万円、利益8億200万円を確保した。不動産事業もライブハウス「KT Zepp Yokohama」の高い稼働率により、売上高12億9,900万円、利益3億2,700万円と安定した収益源となっている。一方で、「その他事業」ではベンチャーキャピタル事業におけるファンド管理費用の発生により、6億400万円のセグメント損失を計上した。
| セグメント名 | 売上高 | 営業利益 | 利益率 |
|---|---|---|---|
| エンタテインメント | 825億円 | 366億円 | 44.3% |
| アミューズメント | 47億円 | 8億円 | 16.8% |
| 不動産 | 12億円 | 3億円 | 25.2% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| エンタテインメント事業 | 825億円 | 93% | 366億円 | 44.4% |
| アミューズメント事業 | 48億円 | 5% | 8億円 | 16.8% |
| 不動産事業 | 13億円 | 2% | 3億円 | 25.2% |
財務状況と資本政策
期末の総資産は前期末比で1,038億円増加し、3,136億6,200万円となった。現金及び預金が612億円、有価証券が538億円に積み上がったほか、横浜シンフォステージへの新オフィス移転等に伴う土地・建物の取得により固定資産も増加した。自己資本比率は86.7%と極めて高い水準を維持しており、キャッシュを潤沢に保有する盤石な財務体質が特徴である。
株主還元については、当期の年間配当を前期の60円から66円へと増配する。同社は「連結総配分性向50%」を基本方針として掲げており、自社株買いの処分等も通じて株主への利益還元を積極的に進めている。内部留保金については、次世代ゲームの開発や新規事業の創出など、高い成長が見込まれる分野への投資に充てる方針だ。
リスクと課題
経営陣は今後のリスクとして、以下の要因を注視している。
- 外部環境の不透明性: 米国の関税政策や中東等の地政学リスクに伴う、世界経済の変動可能性。
- 開発競争の激化: グローバル市場でのユーザー獲得競争が激しく、開発コストが増大傾向にある点。
- 人的資本の確保: 高品質なコンテンツを継続的に提供するための優秀なクリエイターの採用・育成が急務となっている。
特に人的資本への投資は、次期の利益予想を押し下げる要因にもなっているが、中長期的な競争力を維持するための不可避な経営判断と位置付けている。
通期見通し
2027年3月期の連結業績予想は、売上高900億円(前期比+1.8%)と増収を維持する一方、営業利益は320億円(同13.9%減)と減益を見込む。これは、第4次中期経営計画の2年目として、人的資本への投資や開発体制のさらなる拡充を優先させるためだ。また、営業外収支についても昨今の金融市場環境を踏まえ、保守的な運用計画を策定している。
| 項目 | 2026年3月期実績 | 2027年3月期予想 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 883億円 | 900億円 | +1.8% |
| 営業利益 | 371億円 | 320億円 | △13.9% |
| 経常利益 | 570億円 | 420億円 | △26.3% |
| 純利益 | 428億円 | 310億円 | △27.6% |
コーエーテクモの強みは、営業利益率40%を超える圧倒的な開発効率と、数百億円規模の余剰資金を動かす「資産運用」の二刀流にあります。今回の決算でも、本業の営業利益(371億円)をはるかに上回る経常利益(570億円)を計上しており、ゲーム会社という枠を超えた投資会社のような側面が改めて浮き彫りとなりました。
次期予想が大幅な減益となっている点は一見ネガティブですが、これは人的資本(給与改善や採用)や開発費への「攻めの投資」を織り込んだ結果です。特に横浜に新オフィスを構え、開発体制を拡充する動きは、将来の成長に向けたインフラ整備を優先する姿勢として評価できます。
就職活動中の学生にとっても、高い利益率を維持しながら社員への還元を強める方針は魅力的に映るでしょう。投資家にとっては、有価証券の売却益という「営業外」の利益に依存しすぎない本業の成長持続性が、今後の焦点となりそうです。
