TDK株式会社 の会社詳細
TDK株式会社
TDK
2026年3月期 第3四半期

TDK・2026年3月期第3四半期、営業利益10%増の2,307億円——スマホ向け電池やAIデータセンター需要が牽引、通期予想を上方修正

TDK
増収増益
上方修正
二次電池
HDD
AIデータセンター
スマートフォン需要
配当増額
株式分割
電子部品
第3四半期累計期初から9ヶ月間の累計値(前年同期比)

売上高

1.9兆円

+11.3%

通期予想

2.5兆円

進捗率75%

営業利益

2,307億円

+10.4%

通期予想

2.6兆円

進捗率9%

純利益

1,812億円

+12.6%

通期予想

1,900億円

進捗率95%

営業利益率

12.4%

電子部品大手のTDKが2日発表した2026年3月期第3四半期(4〜12月)の連結決算は、売上高が前年同期比 11.3%増1兆8,585億円 、営業利益が同 10.4%増2,307億円 と増収増益を記録した。スマートフォン新モデル向けの小型二次電池やセンサの販売が大きく拡大したほか、AI需要に伴うデータセンター向けHDD用部品が好調に推移したことが業績を押し上げた。為替の円安推移や、前期に実施した構造改革による収益性改善も寄与し、同社は通期の業績予想を上方修正している。

業績のポイント

当第3四半期累計期間の業績は、売上高が 1兆8,585億円 (前年同期比 +11.3% )、営業利益が 2,307億円 (同 +10.4% )となり、主力事業が軒並み堅調だった。特に、スマートフォン市場の回復とハイエンドモデルへのシフトが追い風となり、ATL(香港アンプレックステクノロジー)が手掛ける二次電池事業が利益の柱として盤石な強さを見せた。

また、世界的なAI投資の加速を受け、データセンター向けニアライン用HDDの需要が高水準を維持した。HDD用ヘッドやサスペンションの出荷増が磁気応用製品セグメントの利益を劇的に改善させている。一方で、自動車市場向けは電気自動車(BEV)の需要低迷による在庫調整の影響を受けたものの、ICTおよび産業機器向け部品の好調がこれを十分に補った。

指標2025年3月期 3Q累計2026年3月期 3Q累計前年同期比
売上高1兆6,705億円1兆8,585億円+11.3%
営業利益2,090億円2,307億円+10.4%
税引前利益2,180億円2,350億円+7.8%
親会社の所有者に帰属する四半期利益1,608億円1,812億円+12.6%

業績推移(通期)

売上高営業利益|当期累計通期予想残

セグメント別動向

セグメント別では、売上高の約55%を占める「エナジー応用製品」が全体の成長を牽引した。同セグメントの売上高は 1兆252億円 (前年同期比 +14.4% )、営業利益は 2,050億円 (同 +4.3% )に達した。スマートフォン向け小型二次電池の出荷増に加え、ICT市場向けの電源製品も堅調に推移した。

「磁気応用製品」セグメントは、売上高 1,868億円 (同 +13.0% )に対し、営業利益が前年同期の40億円から 194億円 へと約4.8倍に急拡大した。これは、データセンター向けのHDDヘッドおよびサスペンションが、AIサーバー需要の拡大を背景に高稼働を維持したためだ。不採算案件の整理など事業ポートフォリオの最適化が進んだことも大幅な増益に寄与した。

「受動部品」セグメントは、売上高が 4,381億円 (同 +3.2% )と微増だったが、営業利益は 304億円 (同 25.6%減 )となった。産業機器向けにコンデンサなどが堅調だった一方で、自動車市場のBEV需要鈍化に伴う部品需要の減少や、為替変動に伴う影響が利益を押し下げた。「センサ応用製品」は、スマホ向け磁気センサや産機向けの販売が伸び、営業利益は 192億円 (前年同期比 +259.8% )と飛躍的な成長を見せた。

セグメント売上高前年同期比営業利益前年同期比
受動部品4,381億円+3.2%304億円△25.6%
センサ応用製品1,677億円+17.3%192億円+259.8%
磁気応用製品1,868億円+13.0%194億円+380.3%
エナジー応用製品1兆252億円+14.4%2,050億円+4.3%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
受動部品4,382億円24%304億円6.9%
センサ応用製品1,677億円9%192億円11.5%
磁気応用製品1,868億円10%194億円10.4%
エナジー応用製品1.0兆円55%2,051億円20.0%

財務状況と資本政策

2025年12月末時点の総資産は、前期末から 7,953億円 増加し、 4兆3,367億円 となった。営業債権の増加や、設備投資に伴う有形固定資産の積み増しが主な要因である。親会社の所有者に帰属する持分は 2兆939億円 となり、持分比率は前期末の50.8%から 48.3% へと低下したが、これは負債の増加による資産規模の拡大が主な背景にある。

資本政策においては、積極的な株主還元を継続している。2025年10月に実施した1対5の株式分割後ベースで、年間配当は 34円 (前回予想から増額)を予定している。同社は中期経営計画において配当性向35%を目安としており、好調な業績を背景に株主への利益還元を強化する方針を明確にしている。

通期見通し

当第3四半期までの業績が想定を上回ったことから、TDKは2026年3月期の通期連結業績予想を上方修正した。修正後の売上高は前回予想から1,000億円増の 2兆4,700億円 、営業利益は200億円増の 2,650億円 を見込む。この修正は、ICT市場やAIデータセンター市場の需要が想定以上に強固であることや、対ドル・対ユーロでの円安傾向が収益を押し上げる効果を反映したものである。

項目前回予想(10月)今回修正(2月)前期実績(FY25)
売上高2兆3,700億円2兆4,700億円2兆2,048億円
営業利益2,450億円2,650億円2,241億円
税引前利益2,500億円2,700億円2,378億円
当期純利益1,800億円1,900億円1,671億円

リスクと課題

好決算の一方で、今後の懸念材料として以下の点が挙げられている。

  • 自動車市場の減速: 電気自動車(BEV)需要の低迷が期初想定を超えて継続しており、受動部品などの部品需要に下押し圧力がかかっている。
  • 地政学的リスク: 貿易摩擦の激化や中東情勢など、サプライチェーンを揺るがす外部環境の不透明感は依然として高い。
  • 為替変動の影響: 足元では円安が寄与しているものの、急激な為替の反転は収益にマイナスの影響を与えるリスクがある。
  • 構造改革コスト: 課題事業の対処として構造改革費用約130億円を計上する見込みであり、一時的な利益圧縮要因となる。
AIアナリストの視点

TDKの決算は、同社が「スマホ関連企業」から「AIインフラ・エネルギー関連企業」へと見事にトランスフォーメーションを遂げていることを象徴する内容でした。特筆すべきは、かつて苦戦していた磁気応用製品(HDD部品)が、AI需要という新たな波を捉えて利益率を劇的に改善させている点です。

受動部品がEV減速の影響を受ける中で、ATLを軸としたエナジー事業が稼ぎ、HDDやセンサが成長を加速させるという、多角化されたポートフォリオが効果的に機能しています。株主還元についても配当性向35%を遵守し、分割後もしっかりと還元姿勢を維持している点は投資家から高く評価されるでしょう。

今後の焦点は、鈍化するBEV向け需要がいつ底を打つか、そして競合が激化する小型二次電池市場でATLの圧倒的シェアを維持し続けられるかにあると考えます。構造改革費用を早めに計上し、次期への「重し」を外す経営判断も非常に合理的です。