
東宝、2027年2月期第1四半期決算、増収も営業利益28%減、IPアニメ不振
売上高
887億円
+4.6%
通期予想
3,450億円
営業利益
139億円
-28.3%
通期予想
620億円
純利益
82億円
-29.1%
通期予想
410億円
営業利益率
15.6%
東宝が発表した2027年2月期第1四半期決算は、営業収入が前年同期比4.6%増の887億4,200万円と増収を確保したが、営業利益は同28.3%減の138億6,900万円と大幅減益となった。映画興行が好調で収入を押し上げた一方、IP・アニメ事業が海外ライセンス契約の反動減などで営業利益が前年同期の63億円から5億2,000万円へと9割超減少したことが響いた。
業績のポイント
東宝の2027年2月期第1四半期(2026年3月~5月)連結決算は、増収大幅減益で着地した。営業収入は887億4,200万円(前年同期比4.6%増)と伸ばしたものの、営業利益は138億6,900万円(同28.3%減)、経常利益は137億4,300万円(同27.4%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益は81億9,600万円(同29.1%減)といずれも2割を超える減益となった。
増収の主因は映画興行・配給事業の好調で、入場者数が前年同期比9.4%増の1,200万5,000人と伸び、劇場版『名探偵コナン』や『映画ドラえもん』などのヒット作が貢献した。しかし、注力するIP・アニメ事業では、海外ライセンス収入が前年の大型契約の反動減から19.2%減の73億2,000万円となるなど苦戦し、同事業の営業利益は実質的に消滅した。営業利益段階で5億2,000万円にとどまり、前年同期の63億3,500万円から91.8%減と劇的な悪化を見せている。
この結果、会社全体の営業利益率は15.6%と前年同期の22.8%から大きく低下した。2025年4月に策定した「中期経営計画2028」の初年度となるが、第1四半期は収益構造の変調を露呈する形となった。
業績推移(通期)
セグメント別動向
報告セグメント別の第1四半期実績は以下のとおり(括弧内は前年同期比)。
| セグメント | 営業収入(百万円) | 営業利益(百万円) | 利益率 |
|---|---|---|---|
| 映画事業 | 43,381(+7.7%) | 9,598(+6.1%) | 22.1% |
| IP・アニメ事業 | 18,255(-3.9%) | 520(-91.8%) | 2.8% |
| 演劇事業 | 5,908(+15.5%) | 475(+574.6%) | 8.0% |
| 不動産事業 | 20,425(+1.4%) | 5,556(-6.8%) | 27.2% |
映画事業
映画興行事業(TOHOシネマズ)では、入場者数が9.4%増の1,200万人を超え、営業収入は254億600万円(+14.7%)、営業利益は44億3,900万円(+11.7%)と高い伸びを示した。2026年3月に「TOHOシネマズ 大井町」を開業し、スクリーン数は725に拡大したことが奏功した。
映画営業事業(配給)も好調で、『劇場版名探偵コナン』『映画ドラえもん』『SAKAMOTO DAYS』に加え、東宝東和配給の『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』『ウィキッド 永遠の約束』がヒット。営業収入は143億1,500万円(+10.2%)、営業利益は48億1,600万円(+15.1%)となった。一方、映像関連事業(TOHOスタジオ等)は前期の大型美術製作案件の反動で営業収入36億5,900万円(-28.8%)、営業利益3億4,200万円(-61.4%)と大幅減となった。
IP・アニメ事業
最大の懸念材料がIP・アニメ事業だ。『呪術廻戦』『僕のヒーローアカデミア』『葬送のフリーレン』などの人気タイトルを持つが、海外配信・ライセンス収入が19.2%減の73億2,000万円、商品化権収入が41.8%減の24億9,400万円と急減。前年に大型契約が集中した反動で、営業利益は5億2,000万円(-91.8%)にまで落ち込んだ。商品販売(キャラクターグッズ)は35.6%増と好調だが、利益貢献は限定的だった。2026年3月に海外ライセンス事業をTOHO Globalに集約したばかりで、今期の巻き返しが急務となる。
演劇事業
『チャーリーとチョコレート工場』や『レイディ・ベス』など外部公演を含む舞台作品が大入りとなり、営業収入は59億800万円(+15.5%)、営業利益は4億7,500万円と前年同期の7,000万円から6倍超の急回復を遂げた。コロナ禍からの完全復活を示している。
不動産事業
不動産賃貸は空室率0.3%と高稼働を維持し、営業収入93億8,500万円(-0.9%)とほぼ横ばい。道路事業(スバル興業)は価格スライド条項の剥落等で営業利益15億6,000万円(-13.4%)と減益。不動産事業全体では営業利益55億5,600万円(-6.8%)と堅調だが小幅減益となった。
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 映画事業 | 434億円 | 49% | 96億円 | 22.1% |
| IP・アニメ事業 | 183億円 | 21% | 5億円 | 2.8% |
| 演劇事業 | 59億円 | 7% | 5億円 | 8.0% |
| 不動産事業 | 204億円 | 23% | 56億円 | 27.2% |
財務状況と資本政策
当四半期末の総資産は6,907億9,200万円(前期末比121億4,100万円減)。有価証券が266億6,000万円減少した一方、現預金は82億900万円増加した。純資産は5,187億9,500万円(同141億9,500万円減)で、自己資本比率は72.6%と引き続き高い。
営業キャッシュフローは118億4,500万円(前年同期比47.0%減)と減益を反映して縮小。投資キャッシュフローは37億4,200万円の収入(前年同期は95億1,400万円の支出)で、有価証券の売却が主因。財務キャッシュフローは235億7,100万円の支出となり、自己株式取得(118億6,600万円)と配当支払(110億7,400万円)が大きな要因だ。
注目すべきは2026年4月14日発表の自社株買いと消却である。取締役会決議に基づき、750万株を取得するとともに、3,000万株の自己株式消却を実施。これにより発行済株式総数が8億5,000万株に減少し、1株当たり指標の改善が図られた。
配当予想は、株式分割(1→5)調整後で年間22.00円(中間11.00円、期末11.00円)と、前期の分割後換算値と同水準を維持する。
リスクと課題
同社が認識する主なリスクと課題は以下の通り。
- 景気の緩やかな回復が続く一方、物価上昇や中東情勢、金融市場変動による下振れリスク
- IP・アニメ事業の収益変動:海外ライセンス契約のタイミングや規模により業績が大きく振れる可能性
- 道路事業における慢性的な技能者不足と労務費・資材費の上昇
- 映画興行のヒット依存:配給作品の成績が入場者数と売上を左右する構造
- 演劇事業の固定費負担:制作費増大に対するチケット販売の不確実性
なお、中東情勢や円相場の変動が海外事業や輸入資材コストに影響を与える点にも言及している。
通期見通し
2027年2月期通期の連結業績予想は、2026年4月14日公表の数値から変更はなく、据え置かれた。
| 項目 | 2027年2月期予想 | 2026年2月期実績 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 営業収入 | 3,450億円 | 3,606億円 | -4.3% |
| 営業利益 | 620億円 | 679億円 | -8.7% |
| 経常利益 | 670億円 | 701億円 | -4.5% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 410億円 | 517億円 | -20.8% |
第1四半期時点で純利益の進捗率は20.0%と、通期予算に対して順調なスタートとは言えない。特にIP・アニメ事業の収益回復と、秋口以降の映画ラインナップがカギとなる。
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東宝の第1四半期は、映画興行と演劇が堅調で収入面では底堅さを見せたが、高収益を期待されていたIP・アニメ事業の急ブレーキが鮮明になった。
前年に大型ライセンス契約が集中した反動とはいえ、営業利益が前年同期の63億円からわずか5億円にまで落ち込んだのは衝撃的だ。海外展開を加速させるTOHO Globalの事業統合効果がまだ現れておらず、上期は苦戦が続く可能性が高い。
一方で、自己株式消却に踏み切った資本政策は評価できる。PER改善とROE向上に直結し、株主還元姿勢の強さを示した。演劇事業の急回復はコロナ禍からの完全復活を印象づけ、安定収益源として計算できるようになった。
通期予想達成には下期に大型アニメ契約の獲得が必須。キー局とのテレビアニメ枠拡大や、北米市場での配信契約の進捗が焦点となるだろう。映画事業は秋の話題作次第で上振れ余力もあり、通期410億円の純利益予想は保守的かもしれない。
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