港湾・海洋土木4社、2027年3月期Q1比較、増益の明暗と受注の先行き
4社の営業利益は、大成建設が建築・開発の採算改善で伸ばす一方、東亜建設は減収、営業減益となり明暗が分かれました。鹿島は土木採算の改善と受注増、五洋建設は国内土木と海外工事の進捗が支えです。利益を左右したのは工事の量より採算と受注の質。投資家は利益の持続性、就活生は各社の事業の違いに注目です。
今期の総括
採算改善と受注の差が明暗を分ける
業界全体の動き
4社合計では増収基調ですが、売上高の伸びと利益の出方は各社で異なります。売上高の単純平均は3,549.3億円、営業利益は255億円、営業利益率は7.0%です。
| 会社 | 売上高 前年比 | 営業利益 前年比 | 主な要因 |
|---|---|---|---|
| 東亜建設 | 762億円、-8.7% | 51億円、-0.9% | 国内建築の前年反動 |
| 五洋建設 | 1,822億円、+4.6% | 111億円、+8.1% | 大型工事の進捗 |
| 大成建設 | 5,212.15億円、+18.4% | 453.17億円、+15.3% | 建築・開発の採算改善 |
| 鹿島 | 6,401億円、-1.5% | 405億円、+7.8% | 土木採算の改善 |
共通テーマは、完成工事の進捗、採算管理、受注の積み上げです。大成建設は開発事業の利益率が20.2%で、全体の営業利益率を押し上げました。鹿島は売上高が減るなかでも土木事業の利益率が改善し、増益を確保しています。
- 工事の進捗: 五洋建設は国内土木と海外建設の大型工事が売上を伸ばしました。東亜建設も東南アジアの港湾工事が進み、海外事業の営業利益が増えています。
- 採算の差: 大成建設は建築・開発の利益率改善、鹿島は土木の採算改善が増益を支えました。売上規模だけでは利益の強さを測れません。
- 受注が示す先行き: 鹿島と五洋建設は国内受注が増えました。一方、大成建設は受注高が前年同期を下回り、足元の増収増益と今後の受注を分けて見る必要があります。
- コスト環境: 資材価格や労務費の上昇が続くとの各社コメントもあり、受注時の採算を工事完了まで維持できるかが共通課題です。
売上高ランキング
売上高 前年同期比
勝者と敗者
今回、業績の勢いが最も目立ったのは大成建設です。売上高、営業利益、営業利益率が業界平均を上回り、建築・開発の採算改善が利益成長につながりました。対照的に東亜建設は売上高が前年同期を下回り、営業利益も小幅減でした。
大成建設の営業利益率は8.7%で、4社平均の7.0%を上回ります。開発事業の利益率は20.2%、建築事業は7.9%でした。売上総利益率も前年同期から改善しましたが、販管費は41.2%増となり、営業利益の伸びを抑えています。
東亜建設は売上高が8.7%減、営業利益が0.9%減でした。前年に売上があった大型物流施設の反動が減収の主因です。ただし、営業利益率は6.7%と前年同期から上昇し、純利益も6.7%増でした。国内土木の受注増や海外事業の利益拡大もあり、減収だけで一律に評価できません。
鹿島は減収でも土木採算の改善で営業増益となり、建設事業の受注高も増加しました。五洋建設は国内土木と海外工事の進捗が増収増益を支えた一方、海外建設事業は利益率が-1.9%です。売上規模より工事採算が明暗を分ける局面であり、今後は受注残の質とコスト管理が焦点になります。
- 好調
- 大成建設
- 苦戦
- 東亜建設

営業利益ランキング
営業利益率ランキング
注目の動き・戦略比較
各社は、受注拡大だけでなく、利益の確保や株主還元にも取り組んでいます。国内土木の受注増や海外工事の進捗が見られる一方、受注の減少や海外事業の赤字など、先行きの課題も残ります。
- 東亜建設: 国内土木の受注高は前年同期比18.1%増の606億円でした。大型港湾工事の設計変更を獲得し、通期予想は据え置きました。年間配当予想も77円を維持しています。
- 五洋建設: 国内土木の受注高は51.5%増の846億円で、通期目標に対する進捗率は28.2%です。年間配当予想を52円に増やし、約49億円の自己株式取得も発表しました。
- 大成建設: 建築事業と開発事業の利益率改善が増益に寄与しました。年380円の配当を計画する一方、受注高は前年同期比24.5%減で、先行受注の回復が課題です。
- 鹿島: 建設事業の受注高は21.1%増の6,302億円でした。繰越高も増加しており、通期予想を据え置いています。海外開発事業の売却益も利益を押し上げました。
純利益は4社すべて前年同期を上回りましたが、伸び率はばらつき、単純平均の7.8%に対して鹿島と東亜建設が上回りました。鹿島は海外開発事業の売却益、東亜建設は経常利益の増加が背景です。大成建設は営業利益が伸びても営業外損益の悪化などで純利益の伸びが限られ、五洋建設も特別損益や税金の影響を受けました。株主還元とともに、利益の中身や受注の持続性を確認したいところです。
純利益 前年同期比
業界共通のリスク
各社の業績を左右するのは、受注高だけではありません。受注した工事の採算、資材・労務費、海外工事の収益性が、売上計上後の利益を左右します。特に受注が減った企業や、海外事業で赤字を抱える企業は、進捗を慎重に見極める必要があります。
- 資材・労務費の上昇: 資材価格の高止まりや労務費上昇は、工事採算を圧迫するリスクです。土木・建築の幅広い案件を抱える各社に共通しますが、通期営業利益が前期比12.8%減の計画である東亜建設は、利益確保の進捗に注意が必要です。
- 受注の先細り: 大成建設の受注高は前年同期比24.5%減で、国内建築の民間案件も減少しました。足元の利益は改善しているものの、受注の回復が遅れれば将来の売上を支える工事が細る可能性があります。
- 海外工事の採算: 五洋建設は海外建設の売上高が伸びた一方、セグメント利益率は-1.9%でした。大型工事の進捗が売上に結びついても、採算が伴わなければ利益への貢献は限定されます。
- 通期計画との距離: 第1四半期の営業利益進捗率は東亜建設24%、大成建設24%、鹿島20%、五洋建設19%です。各社とも予想を据え置いており、四半期ごとの進捗だけで通期達成を判断せず、受注残と工事採算の変化を追う必要があります。
鹿島は受注増と土木採算の改善が材料ですが、資材・労務費の影響は引き続き注視が必要です。五洋建設では海外事業の赤字、大成建設では受注減、東亜建設では減収と通期減益計画が、それぞれ異なる形で表れています。各社のリスクは一様ではなく、次の四半期も事業別に確認することが重要です。
就活生・転職希望者へ
4社の決算からは、港湾・海洋土木を含む建設業界でも、会社ごとに事業の組み合わせや利益の出どころが異なることが分かります。就職先を比べる際は、企業規模だけでなく、どの分野の工事に強みがあり、受注から完成までどのように採算を管理しているかを確認したいところです。
- 東亜建設: 国内土木の受注増に加え、東南アジアの港湾工事が進捗しました。国内外の土木事業や建築事業をどう組み合わせているかが、企業研究の切り口になります。
- 五洋建設: 国内土木の受注が増え、シンガポール・香港の大型工事も売上を押し上げました。国内外の現場や工事採算の管理に関心がある人は、事業別の動向を確認できます。
- 大成建設: 建築、土木、開発を手掛け、開発事業の利益率が高い点が特徴です。受注高が減少しているため、今後の受注環境や各事業の構成変化にも目を向けたいところです。
- 鹿島: 国内建設の受注が増え、海外関係会社や開発事業も展開しています。土木の採算改善と海外開発の動きから、建設以外の事業が業績にどう関わるかを調べられます。
決算数値は、現場の仕事や働き方そのものを示すものではありません。ただし、受注の強い分野や海外事業の比重、開発事業の有無は、会社がどのような案件を担うかを知る手掛かりになります。説明会や採用情報では、配属可能性、現場支援体制、若手の育成、海外勤務の条件などを具体的に質問すると、企業ごとの違いを比べやすくなります。
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