ヒロセ電機・2026年3月期通期、売上収益11.5%増の2,112億円で過去最高——産業用・自動車向け堅調、積極的な株主還元も継続
売上高
2,113億円
+11.5%
通期予想
2,300億円
営業利益
430億円
+0.8%
通期予想
460億円
純利益
331億円
+0.3%
通期予想
340億円
営業利益率
20.4%
コネクタ大手のヒロセ電機が発表した2026年3月期の連結決算は、売上収益が前期比 11.5%増 の 2,112億6,400万円 となり、過去最高を更新しました。産業用機器や自動車向けビジネスが世界的に伸長したほか、新たに連結化した半導体テスト製品事業も寄与し、増収を牽引しました。利益面では原材料価格高騰の影響を受けたものの、営業利益は 429億9,500万円 (前期比 0.8%増 )と、微増ながら 最高益圏での推移 を維持しています。
ヒロセ電機 2026年3月期 通期決算
さくら × けんじ の対話形式解説
業績のポイント
当連結会計年度の日本経済は、個人消費や設備投資の底堅さにより緩やかな回復基調にありました。ヒロセ電機はこの環境下で、スマートフォン市場、自動車市場、そして産業用機器市場向けのグローバル展開を加速させました。特に産業用機器向けでは幅広い用途と地域で受注が拡大し、売上収益は 2,112億6,400万円 (前年比 +11.5% )と力強い成長を見せました。
一方で、利益面は原材料である金や銅などの価格高騰、および中東情勢の緊張に伴う地政学リスクの増大により、コスト負担が重くのしかかりました。営業利益は 429億9,500万円 (前年比 +0.8% )にとどまり、売上収益営業利益率は前期の 22.5% から 20.4% へと低下しました。これは高付加価値製品へのシフトを進める一方で、急激な外部コストの上昇を完全には吸収しきれなかったことを示唆しています。
親会社の所有者に帰属する当期利益は 331億4,200万円 (前年比 +0.3% )となり、ほぼ横ばいの着地となりました。特筆すべきは、2025年7月に半導体テスト製品を展開する旧株式会社エス・イー・アール(現ヒロセSER株式会社)を連結子会社化したことです。これにより、従来のコネクタ事業に次ぐ 新たな成長ドライバーの育成 に着手しており、事業ポートフォリオの多角化が進んでいます。
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力である多極コネクタ事業は、売上収益 1,858億1,400万円 (前年比 8.8%増 )を記録しました。産業用機器向けビジネスがFA機器や医療機器など幅広い分野で好調に推移し、自動車用も新案件の立ち上がりが寄与しました。しかし、利益面では営業利益 367億6,700万円 (前年比 6.7%減 )と苦戦しました。これは民生用機器向けの軟調さと、原材料コスト増が主因です。
同軸コネクタ事業は、売上収益 183億3,800万円 (前年比 34.2%増 )、営業利益 58億7,500万円 (前年比 73.9%増 )と、全セグメントの中で突出した成長を遂げました。スマートフォンやPC向けの無線LAN用、さらには自動車のGPSアンテナ用など、高度な情報通信ネットワーク化を背景に 高周波対応の高性能コネクタ への需要が急増したことが大幅な増益につながりました。
その他事業については、売上収益 71億1,200万円 (前年比 45.0%増 )となり、営業利益は 3億5,200万円 (前期は9,700万円の損失)と黒字転換を果たしました。新連結子会社のヒロセSERが手がける半導体テスト製品が寄与しており、今後の成長が期待されます。
| セグメント | 売上収益 | 前年比 | 営業利益 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 多極コネクタ | 1,858億円 | +8.8% | 367億円 | △6.7% |
| 同軸コネクタ | 183億円 | +34.2% | 58億円 | +73.9% |
| その他 | 71億円 | +45.0% | 3億円 | 黒字転換 |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 多極コネクタ | 1,858億円 | 88% | 368億円 | 19.8% |
| 同軸コネクタ | 183億円 | 9% | 59億円 | 32.0% |
| その他 | 71億円 | 3% | 4億円 | 5.0% |
財務状況と資本政策
財務基盤は極めて強固であり、自己資本比率(親会社所有者帰属持分比率)は 87.7% と、業界内でも屈指の健全性を誇ります。総資産は前期末比 143億1,200万円 増の 4,311億7,700万円 となりましたが、これは事業規模の拡大に伴う営業債権や棚卸資産の増加によるものです。
資本政策においては、株主還元を一段と強化する姿勢を鮮明にしています。2024年5月に改定した方針に基づき、DOE(株主資本配当率)5% を目標に掲げ、年間配当は前期から15円増配の 505円 (配当性向 50.9% )を実施しました。また、機動的な資本効率の向上を目指し、当期中に 203億5,100万円 の自己株買いを行うなど、潤沢なキャッシュを株主へ積極的に分配しています。
キャッシュフロー面では、営業活動により 458億7,700万円 の資金を獲得。これを原資に、有形固定資産の取得(設備投資)に 200億2,100万円 を投じるなど、将来の成長に向けた投資と株主還元のバランスを維持しています。
通期見通し
2027年3月期の通期業績について、ヒロセ電機はさらなる増収増益を見込んでいます。売上収益は前期比 8.9%増 の 2,300億円 、営業利益は 7.0%増 の 460億円 を計画しています。米国を中心としたAI関連投資の継続や、自動車市場での新案件のさらなる寄与を織り込んでいます。
配当についても、年間で 520円 (中間260円・期末260円)と、さらなる増配を予定しています。前提となる為替レートは1米ドル=150.00円としており、実需に基づいた堅実な予想と言えます。また、2025年度から2028年度までの期間で、累計 600億円 を上限とする自己株式取得の方針を継続し、資本効率のさらなる改善を目指します。
| 項目 | 2026年3月期 実績 | 2027年3月期 予想 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 2,112億円 | 2,300億円 | +8.9% |
| 営業利益 | 429億円 | 460億円 | +7.0% |
| 親会社株主帰属当期利益 | 331億円 | 340億円 | +2.6% |
リスクと課題
経営陣は、先行きを楽観視せず以下のリスクを注視しています。
- 原材料価格・物流費の動向: 金、銅などの素材価格やエネルギー価格の上昇が利益を圧迫する懸念があります。
- 地政学リスク: ホルムズ海峡の封鎖懸念などによる中東情勢の緊張が、原油供給や物流ルートに与える影響を警戒しています。
- 中国経済の低迷: 不動産市況の悪化や内需の停滞により、同地域での需要回復が遅れるリスクがあります。
- 為替変動: グローバル展開が広範なため、円高進行は円換算での業績下押し要因となります。
ヒロセ電機の決算は、売上高が過去最高を更新するなど、非常に力強いトップラインの成長を示しました。特に注目すべきは、単なるコネクタメーカーからの脱却を図るべく、ヒロセSER(旧エス・イー・アール)の買収を通じて半導体検査分野へ領域を広げている点です。
投資家目線では、自己資本比率87.7% という圧倒的な財務の安全性と、それに基づいた DOE 5%目標 という強固な株主還元姿勢が大きな魅力です。利益率が一時的に低下している点は懸念材料ですが、原材料費の高騰という外部要因が主であり、同軸コネクタのような高成長・高付加価値分野の比率が高まれば、再び20%台後半の営業利益率への復帰も視野に入るでしょう。
就職活動中の学生にとっても、特定の業界(スマホなど)に依存せず、自動車、産業機器、医療、通信とポートフォリオが分散されている点は、安定性と成長性の両面から高く評価できるポイントです。
