ヒューリック・2026年12月期Q1、営業収益44.8%増の2,268億円——大型物件売却で大幅増収、特殊要因除けば実質増益
売上高
2,268億円
+44.8%
営業利益
312億円
-2.0%
通期予想
2,100億円
純利益
181億円
+5.6%
通期予想
1,210億円
営業利益率
13.7%
不動産大手のヒューリックが27日に発表した2026年12月期第1四半期(1〜3月)の連結決算は、営業収益が前年同期比 44.8%増 の 2,268億4,100万円 と大幅な増収を記録した。主力である不動産事業において大型の販売用不動産の売却が順調に進んだほか、インバウンド需要の回復でホテル・旅館事業も好調に推移した。営業利益は 持分法適用会社リソー教育に係る追加的なのれん償却 という特殊要因により、前年同期比 2.0%減 の 311億7,100万円 となったものの、この影響を除いた実質的な収益力は一段と高まっている。
業績のポイント
当第1四半期の連結業績は、売上高にあたる営業収益が 2,268億4,100万円(前年同期比 +44.8%)と、前年を大きく上回るペースで着地した。利益面では、営業利益が 311億7,100万円(同 -2.0%)、経常利益が 269億8,600万円(同 -3.6%)とわずかに減少したが、親会社株主に帰属する四半期純利益は 181億4,100万円(同 +5.6%)を確保し、最終増益を達成した。
営業利益が微減となった背景には、2025年度に連結子会社化した株式会社リソー教育の株価変動に伴い、追加的なのれん償却費69億6,100万円 を計上した特殊な会計処理がある。この一過性の要因を除いたベースでは、営業利益は 381億3,200万円(前年同期比 約19.9%増)相当となり、本業の収益性は極めて堅調であると言える。
主力の不動産賃貸業では、東京23区の駅近物件を中心とした優良ポートフォリオにより、空室率を低水準に抑えつつ安定的な賃料収入を確保した。加えて、市場環境を見極めた「ヒューリックみなとみらい」などの大型物件売却が収益を押し上げており、成長戦略が計画通りに進捗 していることを裏付ける結果となった。
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力の不動産事業は、営業収益が 1,913億6,000万円(前年同期比 +43.4%)、セグメント利益が 385億3,400万円(同 +15.4%)と、全社の成長を牽引した。既存物件の賃貸収入が安定して推移したことに加え、開発・建替事業では「クオーツ心斎橋」が竣工するなど、将来の収益基盤も着実に拡充されている。特に「ヒューリックみなとみらい」や「ヒューリック府中タワー」といった販売用不動産の売却が利益貢献し、物件循環型のビジネスモデル が高効率に機能している。
ホテル・旅館事業は、営業収益が 168億4,600万円(前年同期比 +13.5%)、利益が 20億4,700万円(同 +10.7%)と二桁の増収増益を達成した。旺盛なインバウンド(訪日外国人)需要を取り込んだことで、運営する「THE GATE HOTEL」や「ふふ」シリーズなどの宿泊単価が大幅に上昇した。新規開業拠点の寄与もあり、高単価な観光・レジャー需要を的確に捉える戦略が奏功している。
一方で、保険事業やこども教育事業を含む「その他」セグメントは、リソー教育ののれん償却負担によりセグメント損失 48億800万円(前年同期は7億4,300万円の利益)を計上した。ただし、前述の通り特殊要因を除けば実質的な事業利益は 21億5,300万円(同 +189.5%)と急拡大しており、多角化戦略も着実に実を結びつつある。
| セグメント | 営業収益 (百万円) | 前年同期比 | 営業利益 (百万円) | 前年同期比 | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 不動産事業 | 191,360 | +43.4% | 38,534 | +15.4% | 20.1% |
| 保険事業 | 1,185 | +11.3% | 498 | +33.8% | 42.0% |
| ホテル・旅館事業 | 16,846 | +13.5% | 2,047 | +10.7% | 12.2% |
| その他 | 20,541 | +97.5% | △4,808 | ― | ― |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 不動産事業 | 1,914億円 | 84% | 385億円 | 20.1% |
| ホテル・旅館事業 | 168億円 | 7% | 20億円 | 12.2% |
| 保険事業 | 12億円 | 1% | 5億円 | 42.0% |
財務状況と資本政策
2026年3月末時点の総資産は、前期末比で 468億6,700万円 増の 3兆5,529億3,600万円 となった。不動産投資の活発化に伴い販売用不動産や土地の入れ替えが進む中、新規物件の取得や開発投資を積極化させた結果である。負債合計は、設備投資等に伴う資金調達により、前期末比 446億4,600万円 増の 2兆6,115億3,400万円 となったが、金融機関からは依然として低コストでの安定調達を継続している。
資本政策においては、株主還元への積極的な姿勢 を維持している。2026年12月期の年間配当は、前期実績の62円から 5円増配 となる1株当たり 67.00円 を予想している。自己資本比率は 25.5% と、大規模な投資を継続しながらも財務の健全性を一定水準で維持しており、成長投資と株主還元のバランスを重視した経営判断が示されている。
通期見通し
2026年12月期の通期連結業績予想については、営業利益 2,100億円(前期比 +12.4%)、純利益 1,210億円(同 +5.8%)とする期初予想を据え置いた。第1四半期の進捗は概ね計画通りであり、通期での目標達成に向けた確度は高い。なお、営業収益については、販売用不動産の売買が経済情勢や不動産市況に大きく左右されるため、現時点では合理的な予測が困難として非開示としている。
| 項目 | 当期予想 (2026/12) | 前期実績 (2025/12) | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 営業収益 | ― | 4,685億円 | ― |
| 営業利益 | 2,100億円 | 1,868億円 | +12.4% |
| 経常利益 | 1,850億円 | 1,731億円 | +6.9% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 1,210億円 | 1,143億円 | +5.8% |
リスクと課題
同社は今後の経営リスクとして、以下の点を挙げている。
- 不動産市況と経済情勢の変動: 販売用不動産の売却タイミングや価格が、景気動向や金利環境に強く依存する点。
- 建築費の高騰: 資材価格や労務費の上昇が、開発・建替プロジェクトの収益性を圧迫する懸念。
- 金利上昇リスク: 総資産の多くを借入金等で賄っているため、市場金利の大幅な上昇が金融費用の増加を招く可能性。
- 競争環境の変化: 東京23区を中心とした好立地物件の取得競争が激化しており、仕入れコストの上昇が課題となる。
今回の決算で最も注目すべきは、見かけ上の営業微減に惑わされない「本業の強さ」です。リソー教育に関連する約70億円もの追加のれん償却というテクニカルな赤字要因を飲み込みながら、純利益で増益を確保した点は高く評価できます。
特に不動産セグメントの利益率20%超という水準は、単なる賃貸管理に留まらない、開発から売却までを最適化する「バリューアッド型ビジネス」の成熟を示しています。ホテル事業の好調も一過性のブームではなく、高単価な富裕層・インバウンド向けへシフトした同社のブランド戦略が結実した形と言えるでしょう。
就活生にとっても、安定した賃貸収入という「守り」と、物件開発・M&Aという「攻め」の両輪が機能している点は、同社のダイナミックな事業展開を理解する上で重要なポイントとなります。今後は金利上昇局面での資金調達コストのコントロールが焦点となりますが、現在の高い収益力であれば十分な耐性を持っていると推察されます。
