伊藤ハム、2027年3月期第1四半期決算、食肉増益で営業利益を維持

伊藤ハムの2027年3月期第1四半期決算は、前期の決算期変更の反動で売上高が前年同期比5.4%減となる一方、食肉事業の採算改善で営業利益は0.3%増とほぼ横ばいでした。原材料高や物流費上昇が続く中、加工食品事業の利益減少を食肉事業が補いました。減価償却方法の変更による利益押し上げもあり、通期予想は据え置いています。

決算の数字第1四半期累計
期初から3ヶ月間の累計値(前年同期比)
| 項目 | 実績 | 前年比 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,811億円 | -5.4% | 1.0兆円 | 27% |
| 営業利益 | 91億円 | +0.3% | 270億円 | 34% |
| 純利益 | 61億円 | -3.9% | 185億円 | 33% |
| 営業利益率 | 3.3% | |||
この決算のポイント
- 1加工食品事業は販売数量の減少とコスト上昇で、セグメント利益が前年同期比39.4%減
- 2食肉事業は輸入肉の採算改善や国産鶏肉の堅調さで、セグメント利益が17.0%増
- 3定額法への減価償却方法変更で、第1四半期の営業利益などが従来方式比313百万円増加
- 4通期予想は売上高1兆400億円、営業利益270億円で変更なし。純利益予想は前期比8.5%減
- 5ニュージーランドのGreenlea全株式取得を決定し、海外食肉事業の拡大を目指す
業績のポイント
伊藤ハム(伊藤ハム米久ホールディングス)は、2027年3月期第1四半期に売上高2,810億64百万円(前年同期比5.4%減)、営業利益91億44百万円(同0.3%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益61億29百万円(同3.9%減)となりました。減収でも営業利益をほぼ維持した一方、純利益は前年を下回りました。
- 売上高: 前期の決算期変更による反動が減収の主因です。
- 営業利益: 食肉事業の収益性向上が、加工食品事業の利益減少や原材料費・物流費の上昇を補いました。
- 会計方法の変更: 有形固定資産の減価償却を定率法から定額法へ変更し、営業利益などを従来方式に比べ3億13百万円押し上げました。
売上高の減少だけでなく、利益の中身にも注目が必要です。減価償却方法変更の押し上げ分を除けば、営業利益は前年を下回る計算となり、食肉事業の改善が事業収益を支えた構図です。原材料価格の高止まりと物流単価の上昇が続く中、加工食品の販売数量やコスト吸収力が今後の焦点になります。
セグメント別動向
食肉事業は減収ながら増益、加工食品事業は減収減益となり、事業ごとの明暗が分かれました。売上高の前年同期比は加工食品事業が2.6%減、食肉事業が6.8%減です。
加工食品事業は、ハム・ソーセージでテレビCMなどを通じた主力商品のブランド強化とシェア拡大を進めましたが、販売数量が減少しました。調理加工食品も消費者ニーズに合わせた商品展開に努めたものの、原材料費や物流単価の上昇をコスト削減だけでは吸収できず、セグメント利益は前年同期比39.4%減となりました。
食肉事業は、国内で輸入牛肉・輸入鶏肉の採算が改善し、国産鶏肉の販売も堅調でした。海外ではアンズコフーズの売上高に前期の決算期変更の反動が出た一方、北米向け牛肉の販売価格上昇や欧州・北米向け羊肉の販売好調が続き、セグメント利益は前年同期比17.0%増でした。利益の増減率の差が大きく、食肉の採算改善がグループ全体を下支えしています。
- 加工食品-39.4%
- 食肉+17.0%
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 加工食品事業 | 976億円 | 35% | 13億円 | 1.4% |
| 食肉事業 | 1,834億円 | 65% | 85億円 | 4.6% |
財務状況と資本政策
6月末の総資産は5,491億89百万円で、2026年3月末から244億62百万円増加しました。自己資本比率は53.5%と、前期末の56.2%から低下しています。
| 項目 | 2027年3月期1Q | 前年同期・前期末との比較 |
|---|---|---|
| 営業活動CF | マイナス60億33百万円 | 前年同期はプラス48億17百万円 |
| 投資活動CF | マイナス95億29百万円 | 前年同期はマイナス66億4百万円 |
| 財務活動CF | プラス145億88百万円 | 前年同期はプラス8億24百万円 |
| 現金同等物 | 168億86百万円 | 前期末から6億86百万円減少 |
| 年間配当予想 | 155円 | 前期実績320円、普通配当ベースでは145円から増配 |
営業キャッシュフローは棚卸資産・売上債権の増加や法人税の支払いなどで流出し、投資活動では有形固定資産の取得が資金流出の中心でした。短期借入金とコマーシャル・ペーパーの増加を含む財務活動の資金流入が、投資と運転資金を支えています。前期の年間配当には記念配当が含まれるため、総額だけで比較すると減配に見えますが、会社は普通配当を対象にDOE3.0%以上と累進配当を掲げ、今期の普通配当予想はDOE3.2%としています。
通期見通し
会社は2027年3月期の連結業績予想を据え置きました。売上高は前期比2.9%減、営業利益は5.1%減、親会社株主に帰属する当期純利益は8.5%減を見込んでいます。
| 期間 | 売上高予想 | 営業利益予想 | 経常利益予想 | 純利益予想 |
|---|---|---|---|---|
| 第2四半期累計 | 5,100億円、6.0%減 | 138億円、4.9%増 | 140億円、2.7%増 | 95億円、0.1%減 |
| 通期 | 1兆400億円、2.9%減 | 270億円、5.1%減 | 280億円、7.9%減 | 185億円、8.5%減 |
第1四半期は売上高が前年を下回りましたが、会社は予想を変更していません。前期の決算期変更による反動が売上高に影響する一方、食肉事業の採算改善が利益を支えるかが鍵です。原材料費や物流費の上昇が続く中、通期目標の達成には加工食品事業の販売数量回復とコスト吸収が課題になります。
戦略トピック
伊藤ハムは2026年6月、連結子会社アンズコフーズを通じて、ニュージーランドの食肉処理・加工・販売会社Greenlea Group Limitedの全株式を取得することを決めました。株式譲渡の実行は2026年8月末を予定しています。
- 取得の狙い: アンズコフーズと同業で事業の補完性が高く、シナジーを通じた事業価値の向上を目指します。
- 経営戦略との関係: 長期経営戦略2035に沿って海外事業の成長と収益拡大を進める取り組みです。
- 業績への影響: 2027年3月期の連結業績への影響は精査中で、予想修正が必要となる場合は速やかに開示するとしています。
今回の取得は、国内の食肉採算改善にとどまらず、海外事業の規模拡大を狙う動きです。取得価格や具体的な収益貢献額は短信に記載されておらず、今後は買収後の統合やシナジーの実現状況が注目点になります。
リスクと課題
第1四半期は食肉事業が利益を支えましたが、加工食品の販売数量減少やコスト上昇、運転資金の増加が課題として残ります。会社が示した事業環境と財務の動きから、次の点に注意が必要です。
- 原材料価格・物流費: 高止まりや物流単価の上昇が続けば、価格転嫁やコスト削減で吸収できない分だけ利益を圧迫します。
- 加工食品の販売数量: ハム・ソーセージや調理加工食品の販売が弱いままでは、ブランド強化や商品施策が利益回復につながりにくくなります。
- 運転資金とキャッシュフロー: 棚卸資産や売上債権の増加が営業キャッシュフローの流出につながっており、資金効率の改善が求められます。
- 買収後の実行リスク: Greenlea取得による業績への影響は精査中です。海外事業の拡大には、買収後の統合と想定したシナジーの実現が欠かせません。
利益を食肉事業に頼る状態が続くと、同事業の採算変化がグループ業績に与える影響も大きくなります。通期予想の達成度と合わせ、加工食品事業の立て直し、営業キャッシュフローの回復、買収後の収益貢献を確認したい決算です。
決算発表前後の株価推移
決算発表当日の終値(2026/7/31)
4,905円
最新終値(2026/10/23)
4,975円+1.4%
※ 日次終値ベースの参考チャートです。リアルタイムの株価ではありません(株式分割調整済み、1年以上前は週次の終値)。2026/10/25更新
タグ#伊藤ハム#決算#決算分析#四半期決算#食肉事業#加工食品#海外展開#配当#Greenlea
この記事はいかがでしたか?
クリックで反応を送信(登録不要)
コメント
営業利益が前年並みという結果だけを見ると底堅く映りますが、減価償却方法の変更による利益押し上げを考慮すると、本業の改善度は慎重に評価したいところです。
一方、食肉事業では国内の採算改善に加え、海外の牛肉・羊肉販売も利益に寄与しました。Greenlea取得が既存のアンズコフーズとどう連携し、海外事業の収益力を高めるかが、中期的な成長を測るポイントです。
Googleで業界ダイジェストを優先表示
Google検索の「トップニュース」やAIによる概要で、当サイトの記事が見つけやすくなります。
この記事を引用・シェアする
転載・引用は無料・許可不要(出典明記のみでOK)
https://www.gyokaidigest.com/companies/itoham-yonekyu/report/2027-Q1
関連記事
水産・食肉・冷凍食品の最新記事
- 決算解説日本ハム2027年3月期 第1四半期日本ハム、2027年3月期第1四半期決算、売上高8.7%増も円安影響で最終減益

- 決算解説ニチレイ2026年3月期 通期ニチレイ・2026年3月期通期、純利益10.5%増の273億円——低温物流が最高益を牽引、12月決算への変更も発表

- 決算解説ニッスイ2027年3月期 第1四半期ニッスイ、2027年3月期第1四半期決算、売上高過去最高で好調な滑り出し
- 決算解説ウミオス2027年3月期 第1四半期ウミオス、2027年3月期第1四半期決算、増収も純利益47%減

- システム障害続報ニチレイ7月22日ニチレイ、サイバー攻撃によるシステム障害続報、全拠点の出荷業務が今週中に通常稼働へ

掲載企業

伊藤ハム米久ホールディングス株式会社
東証 2296
これが最新の決算解説です





