大成建設・2026年3月期Q3、営業利益53%増の1,223億円——建築・土木の採算改善が寄与、東洋建設を連結化

大成建設が発表した2026年3月期第3四半期(4〜12月)の連結決算は、営業利益が前年同期比 53.0%増 の 1,223億円 と大幅な増益を記録した。主力である国内の建築および土木事業において、採算性を重視した選別受注と工事進捗に伴う利益率の好転が利益を押し上げた。売上高は建築事業の減少により 6.5%減 の 1兆4,277億円 となったものの、東洋建設の連結子会社化や政策保有株式の縮減など、資本効率の向上に向けた動きが加速している。

決算の数字第3四半期累計
期初から9ヶ月間の累計値(前年同期比)
| 項目 | 実績 | 前年比 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1.4兆円 | -6.5% | 2.1兆円 | 68% |
| 営業利益 | 1,224億円 | +53.0% | 1,480億円 | 83% |
| 純利益 | 1,026億円 | +22.4% | 1,370億円 | 75% |
| 営業利益率 | 8.6% | |||
業績のポイント
当第3四半期の連結業績は、減収ながらも大幅な増益を確保する「収益性重視」の姿勢が鮮明となった。売上高は前年同期比 6.5%減 の 1兆4,277億円 にとどまったが、営業利益は 53.0%増 の 1,223億円、親会社株主に帰属する四半期純利益は 22.4%増 の 1,025億円 を達成した。
利益増の最大要因は、土木・建築の両事業における完成工事総利益率の大幅な改善だ。資材価格の高騰や人件費の上昇という厳しい環境下にあるものの、採算性を重視した受注戦略が実を結び、建築事業の営業利益は前年同期の約4.1倍に急拡大した。通期予想に対する営業利益の進捗率は 82.7% に達しており、好調なペースで推移している。
| 項目 | 2025年3月期 Q3 | 2026年3月期 Q3 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆5,275億円 | 1兆4,277億円 | △6.5% |
| 営業利益 | 799億円 | 1,223億円 | +53.0% |
| 経常利益 | 925億円 | 1,304億円 | +41.0% |
| 四半期純利益 | 837億円 | 1,025億円 | +22.4% |
セグメント別動向
主力事業のセグメント別では、特に建築事業の利益回復が顕著である。建築事業は、売上高が前年同期比 13.1%減 の 8,707億円 となった一方で、セグメント利益は 314.1%増 の 456億円 と跳ね上がった。これは過去に受注した低採算物件の構成比が低下し、利益率の高い新案件の工事進捗が本格化したことによるものだ。
土木事業は、官公庁案件を中心とした底堅い建設投資を背景に、売上高が 7.5%増 の 4,892億円、セグメント利益は 20.3%増 の 642億円 と増収増益を確保した。増収効果に加え、連結子会社の寄与や、施工効率の向上に伴う利益率の好転が収益を支えている。
開発事業は、売上高が 2.1%増 の 1,108億円、セグメント利益は 10.9%増 の 177億円 と堅調に推移した。連結子会社の増加による押し上げ効果が、不動産市場の動向をカバーする形となった。
| セグメント | 売上高 | 前年同期比 | セグメント利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 土木事業 | 4,892億円 | +7.5% | 642億円 | +20.3% |
| 建築事業 | 8,707億円 | △13.1% | 456億円 | +314.1% |
| 開発事業 | 1,108億円 | +2.1% | 177億円 | +10.9% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 土木事業 | 4,634億円 | 33% | 643億円 | 13.9% |
| 建築事業 | 8,528億円 | 60% | 456億円 | 5.3% |
| 開発事業 | 1,030億円 | 7% | 177億円 | 17.2% |
財務状況と資本政策
当第3四半期末の総資産は、前年度末比 1,838億円増 の 2兆6,127億円 となった。この主な要因は、東洋建設を連結子会社化したことに伴い、のれんや資産が計上されたことにある。一方で、買収資金の調達により有利子負債残高は 6,078億円 へと大幅に増加し、自己資本比率は前年度末の 35.7% から 33.0% へと低下した。
株主還元については、積極的な姿勢を継続している。2025年11月までに約 779億円 の自己株買いを実施したほか、年間配当は前期比 40円増配 の 250円(中間125円、期末予想125円)を維持する方針だ。
また、資本効率の改善を目的とした政策保有株式の縮減も計画通り進んでいる。2026年度末までに連結純資産の 20%未満 とすることを目指しており、当四半期も有価証券売却益を計上するなど、資産の入れ替えを加速させている。
リスクと課題
今後の経営環境について、同社は建設市場全体は堅調に推移すると見込む一方、以下のリスク要因を挙げている。
- 米国の通商政策による影響: グローバルな経済環境の変化が国内の製造業の設備投資意欲に冷や水を浴びせる可能性を注視している。
- 労務需給とコスト増: 担い手不足による人件費の上昇や、建設資材の価格動向が引き続き利益を圧迫するリスクとなっている。
- 東洋建設とのシナジー: 完全子会社化した東洋建設との間で、海上・陸上土木の技術融合や海外展開での早期シナジー創出が、中長期的な成長の鍵となる。
通期見通し
2026年3月期の通期連結業績予想については、2025年11月に公表した数値を据え置いた。通期の売上高は前期比 3.0%減 の 2兆900億円 を見込むが、営業利益は 23.2%増 の 1,480億円 と、V字回復を見込んでいる。建築事業における採算改善が下期も継続し、通期での大幅増益を達成する計画だ。
| 項目 | 前回予想 | 今回予想(据置) | 前期実績 | 対前期増減 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2兆900億円 | 2兆900億円 | 2兆1,542億円 | △3.0% |
| 営業利益 | 1,480億円 | 1,480億円 | 1,201億円 | +23.2% |
| 純利益 | 1,370億円 | 1,370億円 | 1,238億円 | +10.6% |
決算発表前後の株価推移
決算発表当日の終値(2026/2/4)
16,880円
最新終値(2026/10/23)
11,235円-33.4%
※ 日次終値ベースの参考チャートです。リアルタイムの株価ではありません(株式分割調整済み、1年以上前は週次の終値)。2026/10/25更新
タグ#大成建設#ゼネコン#増益#採算改善#東洋建設#M&A#政策保有株式#自己株買い#増配#建設業界
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コメント
大成建設の今回の決算で最も注目すべきは、売上の減少を厭わず「利益」を確実に取りに行く経営姿勢へのシフトが数字に現れた点です。特に建築事業の利益率が前年の 5.5% から 11.6% へと倍増している点は、業界内でも際立った回復力と言えます。
また、東洋建設の連結子会社化は、従来の陸上工事に強みを持つ大成建設にとって、洋上風力発電などの海洋土木分野への本格参入を意味する戦略的な一手です。のれん償却費などの負担は増えますが、資本効率(ROE)重視の経営へ明確に舵を切っており、投資家からの評価も得やすい内容と言えるでしょう。
就活生にとっては、同社が「ただ建てる」だけでなく、開発事業や海洋土木、さらにIX(インダストリー・トランスフォーメーション)を通じた垂直統合を狙う成長段階にあることが重要な視点となります。単なる受注産業から脱却しようとする同社の戦略の進捗に、今後も注目が集まります。
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