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2026年3月期 第3四半期
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スーパーゼネコン4社・2026年3月期Q3——鹿島の一強体制鮮明、利益率改善で「量より質」の時代へ

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今期の総括

「売上至上主義」から「利益の質」へ完全移行

大手4社の決算は、全社が大幅な営業増益を記録する好調な結果となりました。長らく苦しんだ資材高騰を克服し、採算重視の受注戦略が完全に実を結んでいます。特に首位の鹿島建設は利益で他を圧倒。業界全体が売上規模の拡大から「利益の質」を追求する歴史的な転換点を迎えたことが鮮明になりました。

業界全体の動き

建設業界を動かした共通テーマは、主に3点に集約されます。

  • 価格転嫁の浸透: 資材高騰を契約価格へ反映させる「設計変更」の交渉が順調に進みました。
  • 採算重視の受注: 以前の低利益案件が消化され、利益率の高い新案件に順次入れ替わっています。
  • 株主還元の強化: 大林組清水建設に見られる増配や上方修正は、資本効率を重視する市場の要求に応えた形です。

人手不足という逆風を、徹底した選別受注と原価管理で跳ね返した期間と言えます。

売上高 前年同期比

1位 最下位 業界平均

清水と鹿島が増収を維持する一方、大成と大林は減収。受注の選別による「戦略的縮小」の有無で明暗が分かれました。

純利益 前年同期比

1位 最下位 業界平均

清水建設が前年比ほぼ2倍の伸びを記録。低採算からの脱却と、資産売却などの資本効率化が寄与しています。

勝者と敗者

今回の「勝者」は、圧倒的な収益力を見せつけた鹿島建設です。

  • 鹿島建設: 営業利益は前年比81.6%増1,718億円と独走。売上高も唯一2兆円を超え、規模と利益を両立しました。

一方、数値面で「苦戦」が目立ったのは大成建設です。

  • 大成建設: 売上高は前年比6.5%減1兆4,278億円。4社で最大の減収となりました。
  • ただし、営業利益率は8.6%と4社で最高を記録。売上を削ってでも「利益の質」を追求する戦略的な縮小と言えます。
鹿島

勝者

鹿島建設

大成建設

苦戦

大成建設

売上高ランキング

1位 最下位 業界平均

鹿島建設が2兆円を突破して独走。大成建設と大林組が減収となる中、清水建設との売上格差が縮まっています。

営業利益ランキング

1位 最下位 業界平均

全社が40%〜100%超の大幅増益。特に鹿島の1,700億円超えは、2位の大林組を大きく突き放す圧倒的な数字です。

営業利益率ランキング

1位 最下位 業界平均

大成建設が8.6%で首位。売上高では最下位ながら、最も効率的に稼ぐ「質重視」の姿勢が数字に表れています。

注目の動き・戦略比較

各社、強みを活かした独自の動きを見せています。

  • 大成建設: 東洋建設の連結子会社化で、海洋土木(マリコン)分野へ進出。陸上以外の収益柱を構築中です。
  • 大林組: 国内建築の利益率改善が顕著です。業績修正に合わせ、年間6円の増配と自己株消却を即断しました。
  • 清水建設: 営業利益が前年比2倍(108.6%増)と驚異の回復。保有株の売却益を還元に回す姿勢を強めています。
  • 鹿島建設: 海外開発を急がず、国内の大型プロジェクトで着実に稼ぐ「堅実経営」が光りました。

業界共通のリスク

好決算の裏には、依然として無視できないリスクが潜んでいます。

  • 2024年問題: 残業規制による工期の長期化や、労務費のさらなる上昇が懸念されます。
  • 海外市況の不透明感: 米国を中心とした金利動向が、海外開発事業の売却時期や利益を左右します。
  • 資材価格の再高騰: 安定しつつある資材価格ですが、為替変動による再燃のリスクは常にあります。

就活生・転職希望者へ

「きつい・厳しい」イメージのゼネコンですが、構造は変わりつつあります。

  • 稼げる構造への変革: 低利益での「叩き合い」から脱し、施工管理能力が高く評価される時代です。
  • DXと技術力重視: 人手不足を背景に、自動施工やAI管理への投資が加速しています。ITスキルも武器になります。
  • 安定した還元姿勢: 利益を社員や株主に分ける余裕が生まれ、待遇面での期待値も高まっています。