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東京建物株式会社 の会社詳細
東京建物株式会社
東京建物
2026年12月期 第1四半期

東京建物・2026年12月期Q1、営業利益46.7%減の126億円——住宅分譲の反動減が響くもビル事業は堅調、通期増配計画は維持

東京建物
8804
デベロッパー
減収減益
増配
ビル事業
住宅分譲
不動産投資
2026年12月期
決算ニュース
第1四半期累計期初から3ヶ月間の累計値(前年同期比)

売上高

986億円

-22.1%

通期予想

5,240億円

進捗率19%

営業利益

126億円

-46.7%

通期予想

1,000億円

進捗率13%

純利益

57億円

-60.2%

通期予想

630億円

進捗率9%

営業利益率

12.8%

東京建物が13日に発表した2026年12月期第1四半期(1〜3月)連結決算は、売上高にあたる営業収益が前年同期比 22.1%減986億円 、営業利益が同 46.7%減126億円 と大幅な減益となった。主力である住宅事業において、大型物件の引き渡しが集中した前年同期の反動による「端境期」となったことが主因だ。もっとも、ビル事業は不動産売却の進展で大幅な増収を確保しており、会社側は 通期での増益および年間122円への増配計画を据え置いている。

業績のポイント

当第1四半期の業績は、住宅セグメントにおける物件引き渡しタイミングのズレが全体の数値を押し下げる格好となった。営業利益は 126億4,500万円 (前年同期比 46.7%減 )、親会社株主に帰属する四半期純利益は 57億1,700万円 (同 60.2%減 )と沈んだが、これは不動産デベロッパー特有の四半期ごとの偏重によるものであり、経営陣は概ね 「計画通りの進捗」 との認識を示している。

背景には、前年同期に大規模な住宅分譲の計上が相次ぎ、比較対象となるハードルが高かったことがある。一方で、固定資産の売却や持分法投資損益などを含めた「事業利益」は 123億1,700万円 (同 49.4%減 )となっており、本業の収益力を示す指標も一時的な停滞を見せている。しかし、オフィスビル賃貸などのストック収益は着実に積み上がっており、景気変動に対する耐性は維持されていると言える。

指標2025年12月期 Q12026年12月期 Q1前年同期比
営業収益1,266億円986億円△22.1%
営業利益237億円126億円△46.7%
経常利益205億円92億円△55.1%
四半期純利益143億円57億円△60.2%

業績推移(通期)

売上高営業利益|当期累計通期予想残

セグメント別動向

主力セグメント間での明暗が分かれる結果となった。まず、稼ぎ頭の ビル事業 は、営業収益が 529億1,500万円 (前年同期比 41.2%増 )、営業利益が 108億3,100万円 (同 15.2%増 )と大幅な伸長を見せた。これは、既存ビルの賃貸・施設運営が安定的に推移したことに加え、ビル売却による不動産売上が大きく寄与したためである。都心部を中心としたオフィス需要の底堅さが、セグメント利益を下支えした。

一方、 住宅事業 は営業収益が 250億9,400万円 (同 64.9%減 )、営業利益が 28億4,000万円 (同 80.6%減 )と苦戦した。「レーベン和光 THE GRANDE」や「Brillia 岡山中山下」などの引き渡しを開始したものの、前年同期に比べ分譲戸数が 235戸 (前年同期は772戸)に留まったことが響いた。デベロッパーの業績は竣工時期に左右されるため、今四半期は「谷間」の時期に当たったと言える。

アセットサービス事業 では、投資家向け物件売却が増加したことで営業収益は 152億8,700万円 (同 25.8%増 )と伸びた。しかし、売買仲介事業の収益減少や、仕入れコストの影響により、営業利益は 20億4,100万円 (同 17.0%減 )の減益となった。駐車場運営などのストックビジネスは車室数の拡大(91,404室)に伴い、安定的に推移している。

セグメント営業収益前年比営業利益前年比
ビル事業52,915百万円+41.2%10,831百万円+15.2%
住宅事業25,094百万円△64.9%2,840百万円△80.6%
アセットサービス15,287百万円+25.8%2,041百万円△17.0%
その他5,322百万円△4.5%352百万円△49.2%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
ビル事業529億円54%108億円20.5%
住宅事業251億円25%28億円11.3%
アセットサービス事業153億円16%20億円13.4%

財務状況と資本政策

2026年3月末時点の総資産は、前期末比 1,158億円増2兆3,885億円 となった。これは将来の収益源となる「販売用不動産」や「有形固定資産」への積極的な投資を継続していることが要因だ。開発案件の進展に伴い仕掛販売用不動産が増加しており、今後の物件引き渡しによる収益貢献が期待される内容となっている。

負債サイドでは、有利子負債残高(リース債務除く)が 1兆4,691億円 と前期末比で 1,236億円増加 した。金利先高観が意識される中、長期借入金を中心に資金調達を進めており、自己資本比率は 24.8% (前期末比1.2ポイント低下)となった。財務の健全性を一定程度維持しつつ、レバレッジを活用して成長投資を加速させるデベロッパー特有の財務構成を維持している。

株主還元については、 「増配」への強い姿勢 が示されている。今期の年間配当は前期実績(105円)から17円増の 122円 を予定しており、第1四半期の減益決算を受けてもこの方針に変更はない。利益成長に伴う配当性向の向上を目指す経営方針が、投資家への安心材料となっている。

通期見通し

2026年12月期の通期連結業績予想について、東京建物は期初公表の数値を据え置いた。第1四半期の進捗率は営業利益ベースで約12.6%と低水準に見えるが、不動産セクターにおいては下半期に物件の竣工・引き渡しが集中する傾向が強く、 「概ね計画通り」 との判断だ。通期では営業収益 5,240億円 (前期比 10.4%増 )、営業利益 1,000億円 (同 4.4%増 )と、過去最高水準の更新を目指す強気な姿勢を崩していない。

項目通期予想前期実績増減率
営業収益5,240億円4,744億円+10.4%
営業利益1,000億円957億円+4.4%
経常利益805億円781億円+3.0%
親会社株主純利益630億円588億円+7.0%
1株当たり配当金122円105円+16.1%

リスクと課題

好調な通期見通しの一方で、外部環境の変化には注意が必要だ。決算短信および定性情報からは以下のリスクが読み取れる。

  • 金利上昇リスク: 有利子負債が1.4兆円を超える規模であるため、国内の金利上昇は支払利息の増加に直結する。特に変動金利比率が高い場合、今後の金融政策の転換が利益を圧迫する懸念がある。
  • 建設コストの高騰: 原材料費や人件費の上昇が続いており、新規開発物件の収益性を低下させる要因となっている。販売価格への転嫁がどこまで進むかが焦点となる。
  • 海外事業の不透明感: 「その他事業」において海外事業の持分法投資損失を計上するなど、一部地域での市場環境の悪化がリスクとして顕在化している。海外戦略の再構築が必要な局面と言える。
AIアナリストの視点

今回の東京建物のQ1決算は、表面上の「大幅減益」という数字に惑わされないことが重要です。不動産業界、特に分譲マンション事業を抱える企業では、売上の計上タイミングが特定の四半期に偏るため、今回のような 「端境期による一時的な落ち込み」 はよくある光景です。

注目すべきはビル事業の力強さです。既存オフィスの賃貸が安定しているだけでなく、自社保有物件の売却を機動的に行い、収益を確保するモデルが機能しています。就職活動中の学生にとっては、同社が都心の一等地に強力なポートフォリオを持っていること、また配当を増やし続けている(=経営の自信の表れ)という点が、企業研究の大きなポイントになるでしょう。

今後の焦点は、下期に向けて予定されている大型マンションの引き渡しが計画通り進むか、そして日銀の追加利上げが不動産需要や同社の借入コストにどの程度の影響を与えるかに集約されます。Q1は「しゃがんだ状態」であり、ここから期末にかけてどう「伸びていくか」が今後の株価や評価の分かれ道となります。