表面処理鋼板大手4社・2027年3月期Q1比較、黒字転換と素材高で明暗
日本製鉄が前年同期の赤字から黒字に転じ、JFEも大幅増益となる一方、神戸製鋼は鉄鋼アルミ事業の赤字で減益でした。ヨドコウは4社で最も高い営業利益率を保ちながら、亜鉛などの原材料高が利益を押し下げました。数量確保だけでは利益を守れない状況が、各社の収益力の差を浮かび上がらせています。
今期の総括
黒字回復と素材高で利益格差
業界全体の動き
結論として、4社の売上高は日本製鉄の大幅増収が全体を押し上げる一方、利益面では回復と減益が混在しました。単純平均の営業利益率は5.1%ですが、規模や事業構成が異なるため、平均だけで各社の実力は測れません。
| 会社 | 売上高 前年比 | 営業利益 前年比 | 主な要因 |
|---|---|---|---|
| 日本製鉄 | +40.4% | 不明 | 需要回復・価格改善 |
| JFE | +4.1% | +191.3% | 棚卸評価差の改善 |
| 神戸製鋼 | +1.6% | -34.8% | 鉄鋼アルミ赤字 |
| ヨドコウ | -2.4% | -8.2% | 原材料価格上昇 |
- 鋼材需要と価格: 日本製鉄は販売数量の増加や鋼材市況の持ち直しが増収に寄与しました。価格転嫁や生産効率の改善も利益を支えています。
- 原材料コスト: ヨドコウは国内鋼板の販売数量が増えたものの、亜鉛などの値上がりで営業減益でした。神戸製鋼も鉄鋼アルミ事業が赤字となっています。
- 前年の反動と一時要因: 日本製鉄は前年の構造改革費用がなくなり黒字化しました。JFEは棚卸資産評価差の改善に加え、土地売却益も営業利益を押し上げています。
売上高の単純平均は1兆1,530.5億円、営業利益の単純平均は543億円です。いずれも日本製鉄の規模が平均を大きく左右します。各社の利益の質を見るには、事業利益やセグメント採算、一時要因の有無も併せて確認する必要があります。
売上高ランキング
売上高 前年同期比
勝者と敗者
利益の規模と回復の勢いでは日本製鉄が目立ち、減益幅では神戸製鋼が苦戦しました。ただし、JFEの増益には棚卸評価差の改善や土地売却益が含まれ、神戸製鋼の純利益には前年の有価証券売却益の反動が表れています。黒字回復と基礎収益は別物として捉える必要があります。
- 日本製鉄: 営業利益は1,455億円で、前年同期の営業損失から黒字化しました。売上高は2兆8,212億円、営業利益率は5.2%です。鋼材需要の回復、価格改善、円安が追い風となりました。
- JFE: 営業利益は474億円、前年比+191.3%でした。一方、事業利益は323億円で、鉄鋼事業の利益率は0.5%にとどまります。棚卸資産評価差のプラス転換や土地売却益が利益を支えました。
- 神戸製鋼: 営業利益は204億円で前年比-34.8%、純利益は121億円で同-68.4%でした。鉄鋼アルミ事業の赤字に加え、前年の投資有価証券売却益がなくなったことが響いています。
- ヨドコウ: 営業利益率は7.5%と4社で最も高いものの、営業利益は前年比-8.2%でした。ロール事業の高付加価値品が支えとなる一方、原材料高が主力鋼板の採算を圧迫しました。
利益率の高さと利益額の大きさは、別の強みです。ヨドコウは小規模ながら高い利益率を確保しましたが、素材価格の上昇を吸収しきれていません。日本製鉄は規模と回復が際立つ一方、JFEや神戸製鋼の数字には一時要因も含まれ、継続的な採算改善が焦点になります。
- 好調
- 日本製鉄
- 苦戦
- 神戸製鋼


営業利益ランキング
営業利益率ランキング
注目の動き・戦略比較
各社の通期計画と株主還元には、足元の利益だけでは見えない違いがあります。ヨドコウは営業利益予想を引き上げた一方、年間配当予想を減額しました。神戸製鋼も通期の営業利益予想を修正しており、下期の回復をどこまで実現できるかが問われます。
- ヨドコウ: 通期営業利益予想を129億円、前期比+8.7%に修正しました。年間配当予想は62円で、前期実績の91円を下回ります。高付加価値のロール製品が増益に寄与しました。
- 日本製鉄: 通期営業利益予想は6,300億円で、四半期の進捗率は23%です。配当は前期と同水準の見通しとされ、足元の黒字化だけでなく、成長投資や財務体質にも目配りする姿勢が示されています。
- JFE: 通期営業利益予想は2,150億円で、進捗率は22%です。第1四半期の営業利益には土地売却益が含まれるため、計画達成の評価では事業利益の積み上がりも確認したいところです。
- 神戸製鋼: 通期営業利益予想を1,500億円に修正しました。第1四半期の進捗率は14%で、鉄鋼アルミ事業の採算回復と、素形材や機械などの非鉄鋼事業の寄与が焦点です。
通期予想の進捗率は各社の利益指標や事業構成が異なるため、単純比較には注意が必要です。それでも、原材料高への対応に加え、利益源の多様化や高付加価値品の拡販が共通の課題として見えます。投資家は計画修正の有無だけでなく、利益が本業から継続的に生まれているかを見極めたい局面です。
純利益 前年同期比
業界共通のリスク
最大の共通課題は、鋼材価格や販売数量が持ち直しても、原材料費や事業ごとの採算が利益を左右することです。利益の回復を示す会社でも、一時的な評価差や売却益が含まれる場合があり、通期計画の達成度は四半期ごとの利益の中身で確かめる必要があります。
- 原材料価格の上昇: ヨドコウでは亜鉛などの原材料高が営業減益の要因となりました。価格転嫁が遅れれば、鋼板を主力とする企業ほど採算が圧迫されるリスクがあります。
- 需要や販売数量の変動: ヨドコウは台湾子会社の販売数量減少が海外鋼板事業の減収減益につながりました。日本製鉄も需要回復を増収要因としており、需要の勢いが弱まれば業績に影響しやすい構図です。
- 一時要因による利益の振れ: JFEでは棚卸資産評価差の改善や土地売却益が利益を押し上げました。日本製鉄の黒字化にも前年の構造改革費用の反動が含まれ、基礎収益との切り分けが欠かせません。
- 事業別の採算悪化: 神戸製鋼は鉄鋼アルミ事業が赤字となり、営業利益が前年同期比34.8%減でした。非鉄鋼事業が下支えしているものの、鉄鋼分野の赤字が続けば全社利益の重荷になります。
各社のリスクは同じではありません。素材高の影響はヨドコウ、鉄鋼アルミ事業の赤字は神戸製鋼、一時要因を除いた採算の確認はJFEと日本製鉄で特に重要です。外部環境の変化だけでなく、各社がコストを販売価格へ反映できるかが、次の決算を読むうえでの共通の確認点です。
タグ#表面処理鋼板#鉄鋼業界#2027年3月期#第1四半期決算#日本製鉄#JFE#神戸製鋼#ヨドコウ#原材料高#価格転嫁
この記事はいかがでしたか?
クリックで反応を送信(登録不要)
Googleで業界ダイジェストを優先表示
Google検索の「トップニュース」やAIによる概要で、当サイトの記事が見つけやすくなります。
この記事を引用・シェアする
転載・引用は無料・許可不要(出典明記のみでOK)
https://www.gyokaidigest.com/industry/coated-steel-sheets/2027-Q1


