北日本・東日本の地方銀行9社、2027年3月期Q1比較、金利上昇の勝者と苦戦の明暗
北日本・東日本の地方銀行9社は、貸出金利息や有価証券利息の増加を受け、8社が最終増益となりました。純利益の伸びは七十七が80.6%で最も高い一方、千葉興銀は4.4%減。金利上昇の恩恵は一様ではなく、預金コストや債券損益が明暗を分けました。
今期の総括
金利上昇の恩恵は預金コストと債券損益で明暗
業界全体の動き
9社の収益を押し上げた共通要因は、金利上昇による貸出金利息や有価証券利息の増加です。ただし、預金利息や債券売却損も増え、利益の伸びには差が出ました。
- 資金利益の拡大: 群馬銀行では貸出金利息が前年比23.0%増。七十七や東邦銀行も資金利益の伸びを増益要因に挙げました。
- 有価証券損益の影響: 株式等売却益が七十七、八十二長野、めぶきなどの利益を押し上げる一方、債券売却損も複数行で増えました。
- 貸出・預金の増加: 七十七の貸出金残高は前期末から増加。八十二長野も貸出金、預金の双方が前期末を上回りました。
- 株主還元の拡大: 群馬銀行、八十二長野、東邦銀行などが増配を予定し、好調な収益を還元に結び付けています。
| 会社 | 売上高 前年比 | 営業利益 前年比 | 主な要因 |
|---|---|---|---|
| 群馬銀行 | 730億円 +8.9% | 252億円 +25.8% | 貸出金利息増 |
| 七十七 | 640億円 +40.8% | 318億円 +80.1% | 株式売却益増 |
| 八十二長野 | 906億円 +24.7% | 367億円 +58.5% | 貸出金利息増 |
| ほくほくFG | 779億円 +30.3% | 320億円 +59.1% | 資金利益増 |
| めぶき | 1,379億円 +39.2% | 499億円 +57.3% | 資金利益拡大 |
| 千葉銀行 | 1,453億円 +41.4% | 418億円 +34.5% | 有価証券利息増 |
| 武蔵野銀行 | 388億円 +63.9% | 84億円 +47.1% | コア業務純益増 |
| 千葉興銀 | 206億円 +30.4% | 39億円 +0.9% | 預金利息増も重荷 |
| 東邦銀行 | 302億円 +34.3% | 76億円 +55.7% | 資金利益増 |
9社平均は売上高753.7億円、営業利益263.7億円で、売上高の前年比平均は+34.9%です。収益の伸びが利益に結び付いた銀行が多い一方、千葉興銀のように費用増が利益を抑える例もありました。金利上昇だけでなく、預金コストや有価証券損益を含む収益構造の違いが、各行の決算を分けています。
売上高ランキング
売上高 前年同期比
勝者と敗者
利益成長の勢いでは七十七が目立ち、純利益の前年比は9社で最も高い一方、千葉興銀は最終減益でした。利益額や利益率の高低だけでなく、どの収益が増え、どの費用が膨らんだかを見る必要があります。
| 会社 | 営業利益 | 前年比 | 純利益前年比 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 七十七 | 318億円 | +80.1% | +80.6% | 49.7% |
| めぶき | 499億円 | +57.3% | +55.2% | 36.2% |
| 群馬銀行 | 252億円 | +25.8% | +25.1% | 34.5% |
| 千葉興銀 | 39億円 | +0.9% | -4.4% | 18.9% |
七十七は貸出金利息と有価証券利息配当金の増加で資金利益が前年比18.9%増え、株式等売却益も利益を押し上げました。ただし、預金利息や債券売却損も増加しており、増益率だけで本業の持続力を判断するのは早計です。対する千葉興銀は、貸出金利息などで収益が伸びたものの、預金利息が前年同期の12億円から24億円へ増え、債券関係損益の悪化も利益を圧迫しました。
営業利益の業界平均は263.7億円です。めぶきは利益額で先頭に立ち、通期予想も上方修正しましたが、千葉興銀は営業利益がほぼ横ばいで純利益も減少しました。利益率が判明している7社の平均は32.9%で、七十七の高い利益率は収益力を示す一方、株式売却益など一時的な要因との切り分けが投資判断の焦点になります。
- 好調
- 七十七
- 苦戦
- 千葉興銀


営業利益ランキング
営業利益率ランキング
注目の動き・戦略比較
決算の好調さを、増配や予想修正、事業提携など次の施策につなげる動きが見られます。還元を強める銀行がある一方、通期予想を据え置き、金利や市場環境の変化を見極める姿勢も目立ちます。
- 群馬銀行: 年間配当予想を前期の62円から70円へ引き上げました。通期の経常利益950億円、純利益650億円の予想は据え置きです。
- 七十七: 株式分割調整後の年間配当予想は1株104円で、前期比約20%増です。通期予想は変更していません。
- めぶき: 第1四半期の増益を受け、通期業績予想と配当予想を上方修正しました。資金利益の拡大に加え、株式売却益も寄与しています。
- 千葉銀行: 自己株式取得を発表しました。有価証券利息配当金が増えた一方、国債等債券損益は損失となっています。
- 武蔵野銀行: 通期の経常収益予想を1,270億円、経常利益予想を302億円に引き上げました。コア業務純益も前年比45.8%増です。
- 東邦銀行: 野村證券との提携を背景に、預かり資産が前年同期末比46.5%増の1兆3,793億円となりました。年間配当予想も17円から21円へ増額しています。
- ほくほくFG: 10月に1株を10株に分割する予定です。分割前換算の年間配当予想は150円です。
- 千葉興銀: 普通株の年間配当予想を前期の10円から20円へ引き上げ、優先株式の取得も進めます。千葉銀行との持株会社設立に伴う資本政策も注目点です。
各行の施策は、収益改善を株主還元に反映する動きと、事業基盤を広げる動きに分かれます。投資家は増配や自己株取得だけでなく、配当を支える本業利益の継続性を確かめたいところです。就活生にとっては、銀行業務に加え、資産運用や法人支援など、地域金融機関の仕事の幅が広がっていることも読み取れます。
業界共通のリスク
金利上昇は貸出金利息を増やす一方、預金コストや債券損益にも影響します。今期は増益行が多いものの、コストや一時益の動きが変われば利益の勢いが鈍る可能性があります。
- 預金金利の上昇: 預金利息が増えると、貸出金利息の増加分が利益に残りにくくなります。費用増が数字に表れた千葉興銀は、預金コストの影響が特に確認しやすい例です。
- 債券売却損: 金利変動による債券損益の悪化がリスクです。開示された損失では千葉銀行の国債等債券損益が291億円のマイナス、めぶきの国債等債券売却損が196億円でした。
- 一時的な利益への依存: 株式等売却益が七十七や八十二長野などの増益に寄与しました。売却益が減れば、利益の前年比が弱まる可能性があり、コア業務純益との比較が欠かせません。
- 信用コストと資本余力: 武蔵野銀行では与信関係費用が増加し、不良債権比率は1.62%です。千葉興銀は自己資本比率が8.04%で、前年同期比1.26ポイント低下しており、資本の推移も注視されます。
リスクの表れ方は各行で異なり、全社を一律に金利上昇の恩恵を受ける企業として見ることはできません。貸出金利回りと預金金利の差、債券損益、信用コストを四半期ごとに追うことが、通期計画の確度を測るうえで重要です。特に利益の伸びが大きい銀行ほど、コア収益と一時要因を分けて評価する必要があります。
順位変化と構造トレンド
純利益の前年比は七十七やほくほくFGが大きく伸びた一方、武蔵野銀行は増益幅が相対的に小さく、千葉興銀は減益でした。収益規模の大きさと、利益の伸びの強さは必ずしも一致していません。
- 七十七: 純利益の伸びが最も高く、資金利益の増加と株式等売却益が寄与しました。
- ほくほくFG: 純利益は65.9%増でした。資金利益に加え、負ののれん発生益や貸倒引当金戻入益も押し上げ要因です。
- 武蔵野銀行: コア業務純益は45.8%増でしたが、純利益の伸びは12.4%にとどまりました。株式関係損益や与信関係費用も影響しています。
- 千葉興銀: 収益は増えたものの、経常利益の伸びは小さく、純利益は前年同期を下回りました。
利益成長の順位には、本業の資金利益だけでなく、株式売却益や特別な会計要因も反映されます。したがって、今期の順位がそのまま通期や中長期の競争力を示すとは限りません。投資家はコア業務純益と資金利益の持続性を、就活生は地域の貸出需要や資産運用など各行の事業構成を合わせて見ることが大切です。
純利益 前年同期比
就活生・転職希望者へ
金利上昇を受けて銀行の収益が改善する一方、決算には資産運用や株主還元、リスク管理の違いも表れました。働く場として見る場合は、利益の順位だけでなく、各行がどの顧客層やサービスを伸ばそうとしているかに注目したいところです。
- 法人・個人への融資: 七十七や東邦銀行では貸出金残高の増加が示されました。地域企業の資金需要に応える営業や審査の役割は、金利環境が変わっても重要です。
- 資産運用・預かり資産: 東邦銀行は証券会社との提携を背景に預かり資産を伸ばしました。金融商品の知識や顧客の資産形成を支える力が求められます。
- リスク管理: 債券損失や与信関係費用が利益に影響した銀行もあります。融資先の状況把握や市場リスク管理など、収益を守る専門性も欠かせません。
銀行の仕事は預金や融資にとどまらず、資産運用、地域企業支援、リスク管理へと広がっています。就職先を比べる際は、地域や顧客層に加え、研修制度や職種別のキャリア形成も確認するとよいでしょう。今期の業績は、金融環境の変化に応じて専門性を発揮する機会が増えていることを示しています。
タグ#地方銀行#銀行業界#2027年3月期#第1四半期決算#金利上昇#資金利益#七十七#めぶきフィナンシャルグループ#千葉銀行#株主還元
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