KADOKAWA、2027年3月期第1四半期決算、増収も早期退職で純損失

KADOKAWAの2027年3月期第1四半期決算は、売上高が前年同期比5.3%増の682億円と増収だった一方、営業利益は45.5%減の12億円にとどまりました。早期退職の割増退職金など約54億円を特別損失に計上し、親会社株主に帰属する四半期純損益は45億円の赤字です。出版・IP創出事業の改善が進む一方、通期純利益予想は引き下げました。

決算の数字第1四半期累計
期初から3ヶ月間の累計値(前年同期比)
| 項目 | 実績 | 前年比 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 683億円 | +5.3% | 3,003億円 | 23% |
| 営業利益 | 13億円 | -45.5% | 101億円 | 13% |
| 純利益 | -4,540百万円 | — | 10億円 | -454% |
| 営業利益率 | 1.9% | |||
この決算のポイント
- 1出版・IP創出事業は海外拠点やヒット作、事業構造改革が寄与し、営業損益が黒字に転換。
- 2アニメ・実写映像事業は売上高が前年同期比26.1%増えた一方、製作費高騰で営業赤字に転落。
- 3ゲーム事業は前年の大型タイトル販売の反動で売上高が37.4%減り、営業利益も58.8%減。
- 4早期退職施策の特別損失を受け、通期純利益予想を10億円に修正。第2四半期以降に約11億円の人件費削減を見込む。
業績のポイント
KADOKAWA(株式会社KADOKAWA)の第1四半期は、売上高が前年同期比5.3%増の682億52百万円、営業利益が45.5%減の12億64百万円でした。経常利益は2.5%増の24億9百万円でしたが、親会社株主に帰属する四半期純損益は前年の28億58百万円の黒字から45億40百万円の赤字に転じました。
- 増収の背景: 出版・IP創出事業は国内の価格改定や返品率改善、ヒット作、海外拠点の成長で増収となりました。アニメの二次利用や実写スタジオ事業も売上を押し上げました。
- 営業減益の要因: 売上原価が前年同期の414億1百万円から456億40百万円に増え、売上総利益は減少しました。アニメ製作費の高騰やゲーム事業の減収も利益を圧迫しました。
- 純損失の主因: 早期退職特別募集に伴う割増退職金など53億74百万円を特別損失に計上しました。
増収でも早期退職費用で純損失となった一方、経常利益は前年を上回りました。特別損失は一時的な費用ですが、営業利益の減少には製作費や事業ごとの販売動向も影響しており、利益回復の進み具合を今後の四半期で見極める必要があります。
セグメント別動向
売上の伸びは出版・IP創出とアニメ・実写映像がけん引しましたが、利益面ではセグメントごとの明暗が分かれました。以下のグラフは各事業の売上高の前年同期比を示しています。
出版・IP創出事業は、売上高が前年同期比10.2%増、営業利益は11億87百万円となり、前年の営業損失から黒字に転換しました。米国・アジアの既存拠点や新規拠点が貢献し、国内では価格改定、返品率の改善、ヒットタイトルが増収を支えました。電子書籍もヒット作が寄与しましたが、ライセンス収入は減少しました。
アニメ・実写映像事業は、売上高が前年同期比26.1%増の一方、6億60百万円の営業損失でした。『Re:ゼロから始める異世界生活』などの人気シリーズを含む二次利用売上や、実写スタジオ事業が伸びましたが、継続するアニメ製作費の高騰が利益を押し下げました。
ゲーム事業は、売上高が前年同期比37.4%減、営業利益が13億90百万円でした。『ELDEN RING』のリピート販売は堅調でしたが、『ELDEN RING NIGHTREIGN』が好調だった前年同期の反動が出ました。
- Webサービス: 「ニコニコ超会議2026」の来場者増などで売上高は前年同期比0.3%増でしたが、プレミアム会員の減少、ITインフラ費用やクリエイター育成投資で営業利益は14.0%減りました。
- 教育・EdTech: バンタンの新スクール開校やN高等学校・S高等学校・R高等学校、ZEN大学の生徒数増加が寄与し、売上高は9.1%増、営業利益は4.3%増でした。
- その他: 売上高は2.9%増でしたが、一部子会社の費用増加などで営業損失は前年より拡大しました。
売上成長の柱は出版・IPと映像ですが、映像は増収が利益に結びついていません。ゲームの前年反動もあり、IPの二次利用を広げながら製作費やインフラ費用を管理できるかが、今後の利益率を左右します。
- 出版・IP+10.2%
- アニメ映像+26.1%
- ゲーム-37.4%
- Web+0.3%
- 教育+9.1%
- その他+2.9%
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 出版・IP創出事業 | 375億円 | 55% | 12億円 | 3.2% |
| アニメ・実写映像事業 | 124億円 | 18% | -660百万円 | -5.3% |
| ゲーム事業 | 54億円 | 8% | 14億円 | 25.8% |
| Webサービス事業 | 52億円 | 8% | 6億円 | 11.3% |
| 教育・EdTech事業 | 48億円 | 7% | 9億円 | 18.7% |
| その他事業 | 30億円 | 4% | -1,107百万円 | -36.5% |
通期見通し
KADOKAWAは2027年3月期の通期純利益予想を修正しました。売上高3,003億円、営業利益101億円、経常利益120億円の予想は据え置き、親会社株主に帰属する当期純利益は10億円としています。
| 項目 | 前回予想 | 今回予想 | 前期実績(概算) |
|---|---|---|---|
| 売上高(百万円) | 5月公表値、金額記載なし | 300,300 | 約283,200 |
| 営業利益(百万円) | 5月公表値、金額記載なし | 10,100 | 約8,100 |
| 純利益(百万円) | 5月公表値、金額記載なし | 1,000 | 約1,280 |
前期実績の概算は、短信に記載された通期予想の前年比から逆算した参考値です。今回、純利益予想を修正したのは、早期退職特別募集に伴う約54億円の特別損失を第1四半期に計上したためです。
会社は出版・IP創出事業の構造改革をはじめ、各セグメントの進捗は5月公表の予想におおむね沿っていると説明しています。また、早期退職施策による人件費削減効果として第2四半期以降に約11億円を見込みますが、営業利益・経常利益の予想は変更していません。費用削減が実際の利益改善につながるかが焦点です。
財務状況と資本政策
6月末の総資産は前期末から188億24百万円減の3,760億40百万円、自己資本比率は62.7%でした。現金及び現金同等物は869億68百万円で、長期借入金の返済などを反映しています。
| 項目 | 2027年3月期第1四半期 | 比較・前年同期 |
|---|---|---|
| 総資産(百万円) | 376,040 | 前期末394,864 |
| 自己資本比率 | 62.7% | 前期末62.0% |
| 営業CF(百万円) | -2,074 | 前年同期-1,952 |
| 投資CF(百万円) | 12,380 | 前年同期-10,107 |
| 財務CF(百万円) | -14,441 | 前年同期-4,656 |
| 年間配当予想(円) | 30 | 前期実績30 |
営業キャッシュフローは賞与支払や棚卸資産の増加などで赤字でした。投資キャッシュフローの黒字は、主に定期預金の払戻によるもので、財務キャッシュフローは長期借入金の返済と配当金の支払いでマイナスとなりました。
年間配当予想は1株30円で、前期実績から変更ありません。配当予想の修正はなく、自社株買いについて短信に記載はありません。自己資本比率は前期末から上昇したものの、純損失と配当支払いで純資産は減少しており、財務の健全性と株主還元を保ちながら、今後の成長投資や費用削減を進められるかが注目されます。
リスクと課題
売上高は伸びた一方、営業利益は減少し、映像やゲームなどで事業ごとの採算差が表れました。会社の見通しには、作品の販売動向や費用、早期退職後の運営体制など不確実性があります。
- アニメ製作費の上昇: 製作費の高騰が続けば、人気作品の二次利用が伸びてもアニメ・実写映像事業の利益を圧迫する可能性があります。
- ゲームの販売変動: 大型タイトルの発売時期やリピート販売に業績が左右されます。好調だった前年作品の反動が今期の減収要因となりました。
- ニコニコの会員減少と運営費: プレミアム会員の減少が続くと動画サービスの売上に響きます。ITインフラ費用やクリエイター育成投資も利益を押し下げています。
- 早期退職後の事業運営: 施策により第2四半期以降の人件費削減を見込む一方、人員構成の変化が制作や事業運営に及ぼす影響にも注意が必要です。
- IP・作品ごとの収益変動: ヒットタイトルやライセンス収入の変動が出版・IP事業の収益に影響します。実際に今期はヒット作が伸びる一方、ライセンス収入は減少しました。
会社は通期の営業利益予想を据え置いていますが、早期退職の費用削減効果だけでなく、製作費の抑制や作品ごとの売上動向が計画達成を左右します。IPを複数の媒体や地域で展開し、作品単位の収益変動をどこまで補えるかが課題です。
決算発表前後の株価推移
決算発表当日の終値(2026/8/13)
3,579円
最新終値(2026/10/23)
3,794円+6.0%
※ 日次終値ベースの参考チャートです。リアルタイムの株価ではありません(株式分割調整済み、1年以上前は週次の終値)。2026/10/25更新
タグ#KADOKAWA#決算#決算分析#四半期決算#出版・IP#アニメ事業#早期退職#業績予想修正
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コメント
売上の伸びだけを見ると堅調ですが、営業減益と純損失の両方が出ており、事業の成長が利益に結びついているかを分けて見る必要があります。出版・IP創出事業の黒字転換は構造改革の成果として前向きですが、映像の製作費高騰やゲームの前年反動がその改善を相殺しています。
純利益の赤字は一時費用、営業面の回復はこれからというのが今回の見どころです。早期退職で見込む人件費削減が計画どおり進むかに加え、アニメの採算改善やゲームの販売回復が確認できるかを次の決算で追いたいところです。
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株式会社KADOKAWA
東証 9468
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