
小野薬品、2027年3月期第1四半期決算、営業利益39%増で増益確保も減収
売上高
1,162億円
-8.9%
通期予想
4,550億円
営業利益
307億円
+39.4%
通期予想
940億円
純利益
242億円
+36.7%
通期予想
710億円
営業利益率
26.4%
小野薬品の2027年3月期第1四半期決算は、売上収益が前年同期比8.9%減の1,162億円と減収だったが、営業利益は同39.4%増の307億円となり、増益を確保した。アストラゼネカ社との「フォシーガ錠」共同販売終了が減収要因となったが、コスト削減やロイヤルティ収入増加が利益を押し上げた。通期業績予想は据え置かれた
業績のポイント
当第1四半期の連結業績(IFRSフルベース)は、売上収益が前年同期比8.9%減の1,162億円となった一方、営業利益は同39.4%増の307億円、税引前四半期利益は同38.0%増の313億円、親会社株主に帰属する四半期利益は同36.7%増の242億円となり、減収ながら大幅な増益を達成した。
売上減少の主因は、アストラゼネカ社との「フォシーガ錠」共同販売契約の終了により前年同期の251億円から売上が消失したこと、および薬価改定のマイナス影響である。国内製品商品売上は同35.0%減の481億円に落ち込んだ。一方、海外製品商品売上は同44.8%増の198億円、ロイヤルティ・その他収入は同21.2%増の482億円と伸長し、収益源の多様化が進んだ。
営業利益の増加は、売上原価の減少(同26.5%減)、販売費及び一般管理費の削減(同23.1%減)、研究開発費の減少(同10.6%減)などコスト抑制が奏功したことによる。販管費や原価の減少は「フォシーガ錠」に係るコ・プロモーション費用の消滅や経費効率化が寄与し、研究開発費は前期の創薬提携契約費用の反動減も影響した。コアベース(無形資産償却費等を除外)では、コア営業利益が同22.5%増の387億円、コア四半期利益が同21.9%増の302億円となり、本業の収益力改善が鮮明となった。
業績推移(通期)
製品・地域別動向
【国内製品商品売上】
国内売上は前年同期比35.0%減の481億円。主力の抗悪性腫瘍剤「オプジーボ点滴静注」は競争環境の激化などから同4.1%減の282億円にとどまったが、引き続き最大の売上を占める。「フォシーガ錠」の売上がゼロになった影響が大きく、その他製品ではパーキンソン病治療剤「オンジェンティス錠」が同16.9%増の26億円、二次性副甲状腺機能亢進症治療剤「パーサビブ静注透析用」が同10.0%増の24億円、抗悪性腫瘍剤「ビラフトビカプセル」が同51.1%増の20億円と成長を示した。
【海外製品商品売上】
海外売上は同44.8%増の198億円と大幅に拡大。消化管間質腫瘍治療剤「キンロック」が同31.5%増の117億円、腱滑膜巨細胞腫治療剤「ロンビムザ」が同289.3%増の41億円と、共に市場浸透とエリア拡大が進んだ。地域別では米国が581億円(+131億円)、欧州が41億円(+17億円)と伸び、日本491億円の減少を補っている。
【ロイヤルティ・その他】
ロイヤルティ収入等は同21.2%増の482億円。ブリストル・マイヤーズ スクイブ社からの「オプジーボ」ロイヤルティが347億円(前年同期292億円)、メルク社からの「Keytruda®」ロイヤルティが79億円(同65億円)と、いずれも増加した。
主要製品売上比較を下表に示す。
| 製品名 | 2027年3月期1Q実績(億円) | 前年同期比 |
|---|---|---|
| オプジーボ(国内) | 282 | △4.1% |
| キンロック(海外) | 117 | +31.5% |
| ロンビムザ(海外) | 41 | +289.3% |
| オプジーボ(海外) | 35 | +7.3% |
| グラクティブ(国内) | 31 | △11.8% |
| オンジェンティス(国内) | 26 | +16.9% |
財務状況と資本政策
四半期末の資産合計は、前期末比221億円減少し1兆844億円。現金及び現金同等物は2,195億円(前期末比175億円減)ながら、十分な手元流動性を維持している。投資有価証券は1,026億円へ増加。負債は未払法人所得税や仕入債務の減少により382億円減少の2,117億円となり、有利子負債(借入金・リース負債)も削減が進んだ。親会社の所有者に帰属する持分は、四半期利益の計上等により161億円増加の8,668億円。自己資本比率は前期末の76.9%から79.9%へ上昇し、財務基盤は極めて健全である。
キャッシュフローは、営業活動で11億円の収入(前年同期33億円の収入)、投資活動で34億円の収入(前年同期は430億円の支出)となった。投資活動では無形資産の売却収入84億円が主因で、研究開発関連支出を一部カバーした。財務活動では配当金の支払い175億円や長期借入金の返済75億円などにより219億円の支出。
配当は、前期実績と同じく年間80円(中間40円、期末40円)を予定し、安定配当を継続する方針である。
リスクと課題
同社の業績に関わる主なリスクと課題として、以下の点が挙げられる。
- 国内における「オプジーボ」の競争環境激化や薬価改定の影響により、収益が圧迫される可能性がある。
- 主要製品の特許切れや後発品参入による売上減少リスク。
- ロイヤルティ収入は契約構造や販売動向に依存しており、パートナー企業の業績や契約更改が収益に影響を与える。
- 為替変動リスク:海外売上比率の高まりにより、円高は減収減益要因となる。
- 研究開発パイプラインの成功不確実性:臨床試験の遅延や失敗は将来成長に悪影響を及ぼす。
- 「フォシーガ錠」に代わる国内新製品の早期育成が急務。
特に、2026年5月の決算発表以降、競争環境や薬価動向に大きな変化はないものの、国内売上の縮小をどう補うかが焦点となる。
通期見通し
2027年3月期通期の連結業績予想は、2026年5月公表値から変更なく据え置かれた。IFRSベースでは、売上収益4,550億円(前期比11.8%減)、営業利益940億円(同1.9%増)、親会社株主帰属当期利益710億円(同1.6%増)を見込む。コアベースでは、コア営業利益1,240億円(同9.6%減)、コア当期利益930億円(同10.1%減)と、無形資産償却費等の影響を除いても前期比減益予想ながら、フルベースでは増益確保の見通し。
第1四半期の進捗率は売上高で約25.5%、営業利益で約32.6%と高く、上期偏重の収益構造がうかがえる。下期には研究開発費の増加や新製品発売に伴う販促費増が見込まれるため、通期予想の修正には至らなかった。
| 項目 | 通期予想(2027/3) | 前期実績(2026/3) | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 4,550億円 | 5,158億円 | △11.8% |
| 営業利益 | 940億円 | 923億円 | +1.9% |
| 親会社株主帰属当期利益 | 710億円 | 698億円 | +1.6% |
研究開発・成長投資
当第1四半期の研究開発費は324億円(前年同期比10.6%減)と減少したが、これは前期にLigaChem Biosciences社との創薬提携契約費用やBMSへの開発一時費用を計上した反動減であり、基調として研究開発投資は高水準を維持している。パイプラインの進捗では、2026年6月に「オプジーボ」の甲状腺未分化がんへの適応追加を国内申請、BTK阻害剤「ベレキシブル」の中枢神経系原発リンパ腫・悪性リンパ腫中枢神経浸潤の国内申請を実施。さらに、てんかん治療薬「セノバメート」の国内申請も行われた。フェーズ3試験も複数進行中であり、がん領域、自己免疫疾患、神経疾患など幅広い分野で次世代候補品の開発が進む。
また、研究開発効率を高めるため、外部導出品の増加や提携戦略も積極化している。将来的な収益源の多様化に向け、がん免疫領域に加えて腎疾患、精神・神経疾患への投資を拡大しており、成長基盤の強化を図っている。
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