
大和工業、2027年3月期第1四半期決算、経常利益112%増で通期予想を上方修正
売上高
392億円
+0.0%
通期予想
1,780億円
営業利益
-446百万円
通期予想
32億円
純利益
123億円
+107.9%
通期予想
575億円
営業利益率
-1.1%
大和工業が発表した2027年3月期第1四半期決算は、売上高が前年同期比0.0%減の391億9500万円とほぼ横ばいだった一方、経常利益は前年同期比112.3%増の221億5100万円と大幅増益となった。米国持分法適用関連会社の業績拡大が利益を押し上げ、通期業績予想も上方修正している。持分法利益が経常利益を急拡大させた。
業績のポイント
大和工業(大和工業株式会社)の2027年3月期第1四半期(2026年4月~6月)連結決算は、売上高が前年同期比0.0%減の391億9500万円と横ばい。営業損益は国内鉄鋼事業の不振とヤマトスチールの設備更新に伴う操業停止などにより4億4600万円の赤字(前年同期は11億1500万円の黒字)に転落した。しかし、米国を中心とする持分法適用関連会社の好調で営業外収益が大幅に増加し、経常利益は前年同期比112.3%増の221億5100万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は107.9%増の122億9100万円に達した。特に米国持分法会社ニューコア・ヤマト・スチールカンパニー(NYS)からの持分法投資利益が20億円超を計上し、全体を牽引。一方、中東事業の株式譲渡代金債権の期限前弁済に伴い、長期未収債権割引料引当金繰入額31億9300万円を特別損失に計上している。
こうした結果、会社側は第2四半期累計および通期の業績予想を上方修正。通期売上高は1780億円(前回予想比120億円増)、経常利益は870億円(同190億円増)、純利益は575億円(同105億円増)に引き上げた。営業利益は32億円(同13億円減)と下方修正したが、これは国内事業の収益悪化を織り込んだためだ。
全体として、本決算の核心は米国事業が利益の大半を稼ぐ構図が鮮明になったことにある。
業績推移(通期)
セグメント別動向
鉄鋼事業(日本)は、建築・土木需要の停滞と円安による鉄スクラップ価格上昇が重荷となり、売上高は前年同期比4億5030万円減の92億0300万円、営業損益は18億6300万円の赤字(前年同期は8億9700万円の黒字)に沈んだ。子会社ヤマトスチールでは、圧延設備更新に伴う2カ月間の操業停止も響き、大幅な減収減益となった。販売価格への転嫁がコスト上昇に追いついていない。
鉄鋼事業(タイ)では、連結子会社サイアム・ヤマト・スチール(SYS)が、国内形鋼需要の回復と中国材へのアンチダンピング関税(30.86%~54.19%)の効果でシェアを拡大。売上高は202億5200万円(前年同期比35億7800万円増)、営業利益は22億2800万円(同15億8100万円増)と増収増益を達成した。一方、輸出市場では中国材との競争が続いている。
鉄鋼事業(インドネシア)は、連結子会社ガルーダ・ヤマト・スチール(GYS)の販売数量が民間プロジェクトの再開で若干増加したものの、中国材流入や国内メーカーとの競争で販売価格が下落。売上高は66億0600万円(同8億9000万円増)と伸びたが、営業利益は8400万円(同1億3200万円減)と減益だった。のれん償却費等を含む。
軌道用品事業は、売上高21億1900万円、営業利益1億7900万円と堅調。その他事業(カウンターウエイト製造・運送等)は売上高10億1200万円、営業利益2600万円だった。
また、営業外で大きな存在感を示したのが持分法適用会社だ。米国NYSはデータセンター建設需要を背景に販売数量と鋼材マージンが拡大、業績は前年同期比で大幅増益。ベトナムPY VINAと韓国YKSは前年並みで、黒字確保にとどまった。持分法投資利益全体で前年同期比132億2200万円増の205億9400万円に達し、経常利益の押し上げに決定的な役割を果たした。
セグメント別の業績をまとめると以下の通り。
| セグメント | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 利益率 | 売上比率 |
|---|---|---|---|---|
| 鉄鋼(日本) | 9,203 | △1,863 | -20.2% | 23.5% |
| 鉄鋼(タイ) | 20,252 | 2,228 | 11.0% | 51.7% |
| 鉄鋼(インドネシア) | 6,606 | 84 | 1.3% | 16.9% |
| 軌道用品 | 2,119 | 179 | 8.4% | 5.4% |
| その他 | 1,012 | 26 | 2.6% | 2.6% |
| 調整 | - | △1,103 | - | - |
| 合計 | 39,195 | △446 | -1.1% | 100% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 鉄鋼事業(日本) | 92億円 | 24% | -1,863百万円 | -20.2% |
| 鉄鋼事業(タイ) | 203億円 | 52% | 22億円 | 11.0% |
| 鉄鋼事業(インドネシア) | 66億円 | 17% | 84百万円 | 1.3% |
| 軌道用品事業 | 21億円 | 5% | 2億円 | 8.4% |
| その他 | 10億円 | 3% | 26百万円 | 2.6% |
財務状況と資本政策
当第1四半期末の総資産は前連結会計年度末比131億5200万円増の6466億9300万円。現預金が増加し、流動資産は3368億4400万円に拡大。一方、負債は配当支払い等で増加したものの、総額601億3500万円と低水準を維持している。純資産は親会社株主に帰属する純利益の積み上げや円安による為替換算調整勘定の増加で5865億5700万円、自己資本比率は84.6%と極めて高い財務健全性を誇る。
キャッシュ・フローでは、営業活動によるキャッシュ・フローが373億5800万円の収入。持分法適用会社からの現金分配が大きく、投資活動も定期預金の払戻で509億4000万円の収入となった。これらにより、現金及び現金同等物の残高は前年度末比796億7100万円増の1551億2900万円に急増。財務活動では配当金支払い等で115億8100万円の支出となった。
配当は、年間400円(中間200円、期末200円)の予定で前期並み。自己株式取得に関する発表はない。豊富な手元資金を背景に、今後の成長投資や株主還元の拡充が期待される状況だ。
リスクと課題
会社側が認識する主なリスクと課題は以下の通り。
- 中国材の流入:ASEAN地域を中心に安価な中国鋼材の輸出が高水準で続いており、タイやインドネシアで価格競争を激化させている。タイではAD関税の効果で一部歯止めがかかったが、関税対象外の中国材流入が継続。
- 国内事業の収益低迷:日本では建設需要の停滞長期化、鉄スクラップ価格の高止まり、エネルギーコスト上昇が重なり、ヤマトスチールの赤字が続く。操業停止による供給制約もあった。収益改善には価格転嫁とコスト削減が不可欠だが、時間を要する見通し。
- 為替変動:海外事業・持分法利益の円換算額が為替レートに大きく左右される。足元では円安が追い風だが、急激な円高は利益を圧迫する。
- 米国政治・経済情勢:NYSは好調だが、中間選挙を控え政策の不透明感がある。高関税維持が前提だが、変更リスクには注意が必要。
- 中東債権回収:スルブ株式譲渡代金の早期回収を進めているものの、減額による特別損失計上済み。残額の回収可能性に加え、中東情勢の影響も注視する必要がある。
通期見通しと戦略トピック
大和工業は第1四半期の進捗と今後の事業環境を踏まえ、通期業績予想を上方修正した。主要な修正内容は下表のとおり。
| 項目 | 前回予想(百万円) | 今回修正(百万円) | 前期実績(百万円) |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 166,000 | 178,000 | 160,428 |
| 営業利益 | 4,500 | 3,200 | 4,491 |
| 経常利益 | 68,000 | 87,000 | 65,202 |
| 純利益 | 47,000 | 57,500 | 62,400 |
上方修正の主因は、タイSYSの業績が想定を上回ったこと、そして米国NYSの好調が上期・通期ともに継続する見通しであること。一方、国内ヤマトスチールの収益悪化を織り込み、営業利益予想は下方修正された。為替前提は期中平均155.30円/ドルと前回の147.87円から円安方向に修正されている。
戦略面では、中東事業の早期資金回収が注目点。Foulath社から期限前弁済の意向が示され、残額90百万ドルを今期中に一括回収する予定。特別損失を計上したものの、資金効率の改善につながる。また、JFEスチールグループとのH形鋼事業における協業強化も国内事業のテコ入れ策として挙げられる。
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大和工業の第1四半期は、本業の営業赤字にもかかわらず、持分法利益で経常利益を大幅に伸ばす異例の決算となった。米国NYSが利益の大半を稼ぐ構造が一段と鮮明に。タイもAD効果で改善したが、日本とインドネシアは厳しい。上方修正もNYS頼みであり、米国依存度の高さはリスクともいえる。
高水準の現金と無借金に近い財務体質は評価できるものの、成長投資や株主還元の具体策が見えにくい。今後の焦点は、国内ヤマトスチールの黒字化と、ASEANでの中国材対策の進捗。通期営業利益が32億円と前期比で減益予想なのは、依然として事業構造の弱さを示す。投資家は持分法利益の持続性と、戦略的キャッシュアロケーションを注視すべきだろう。
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